あしたも晴れ!人生レシピ★昭和レトロで認知症予防▽こんな話

Eテレ 2024.1.5
岐阜県の明智回想法センターでは 昔懐かしいものを見て思い出を語り合うことで脳を活性化☆
映像で当時の暮らしを見ることでも回想☆
名古屋市では 昭和の出来事を自作のイラストで思い出してもらいます☆
北名古屋市 歴史民俗資料館 昭和30年代の日常を再現して お孫さんも共に

【ゲスト】青木さやか、 日本福祉大学助教 来島修志
【司会】賀来千香子、小澤康喬【語り】堀内賢雄

明智回想法センター 昔懐かしいもので思い出を語り合い脳を活性化

岐阜県恵那市明智町 戦国武将 明智光秀が産湯に使われたとされる井戸があります。趣のある石畳の町並み、「日本大正村」という大正時代に建てられた役場などの建物がいくつもある。
その中の「明智回想法センター」は大正初期に開業 産婦人科の病棟として使われていた建物で 昔懐かしいものが展示されて 無料で入場できます。施設を管理している日本福祉大学助教 来島修志さんが案内してくれました。
木で造られた廊下は昔懐かしいものであふれています。まきストーブ、練炭のストーブ、上の段に氷を入れ 下に入れた品物を冷やす年代物の冷蔵庫。昔懐かしい弁当箱や 足踏み式のミシンや 昭和30年代に発売された原動機付きの自転車も置かれています。
昭和の居間が再現されて 昔ながらのちゃぶ台には家族の食卓が今でも暮らしているように展示されています。訪れた人は昔の生活を懐かしみ 楽しむことができます。
回想法とは 1960年代に アメリカの精神科医ロバート・バトラー氏の提唱をもとに 懐かしいものなどを用いて 思い出などを語り合うことで認知症の進行予防や介護予防に役立てるもの。高齢者の社会参加なども期待されています。管理者の来島さんは長年回想法に携わってきました。

国立長寿医療研究センターの研究によると 回想をする時の脳の血流は日常会話時に比べて 前頭前野の血流が増え 機能が活性化するという結果も出ています。

ゲスト 青木さやかさんです。
(青木)うちの祖母が いつも冷蔵庫に「認知症と物忘れの違い」大きな表みたいなの貼っていた。私は まだ50代ですけれども人の名前が出なくなってきましたし 予防できるとしたらしたい。

VTRで回想法に取り組まれてた日本福祉大学助教の来島修志さんです。
(来島)私自身は認知症の治療 リハビリテーションとしての回想を行ってきました。ふだん思い出さないことを思い出すということは それだけ脳を使うということで 前頭前野という部分が血流が増えると。ふだん思い出さない思い出を人と語り合う、思い出して語り合うということが脳全体を活性化し そうした予防効果があるのではないかと考えられる。人に伝える お話しするということで言語機能も活性化されると思います。検証が進んでない部分もありますが 認知症の方に向けた非薬物療法といわれてて 薬を使わない治療の一つと位置づけられてます。

回想法がどう行われているのか続きを見ていきましょう。
明智回想法センターでは 月に1回 思い出話をする 回想法が明日 行われます。今回のテーマは「友達の思い出」。学生時代を思い起こさせるように 給食の食器や習字の道具 ランドセルや野球の道具などが並べられました。参加者同士が話しやすいように椅子を配置。
当日 地元の70代から80代の9人が参加。ここではリーダーと呼ばれる司会と コ・リーダーと呼ばれるアシスタントの二人が聞き役を務めながら進行します。
リーダーが最初に話す人を指名することでスムーズに進めることができます。
一般的に回想法は聞き役となる人がいます。それは相手の話を否定せず真摯に耳を傾けて聴くことです。相づちを打ちながらただただ耳を傾け続けます。プログラムが進むにつれ自然と参加者同士 会話のキャッチボールも増えてきました。
すると学生時代の集合写真を持っていた人がいて、それを見た男性から 何回生だったか聞いて 話が弾みました。この日は用意した道具に触れず 話だけで1時間半近く盛り上がりました。
参加した人は「年代が違う方のお話とか 背景がだんだん分かってくるというか …。記憶の中でだんだんつながってきて 脳が活性化になると思う」

(賀来)すごく回想法は優しい取り組みだと思いました。何か明るくて とてもいいなと思いました。
(小澤)1個 思い出すと次の記憶がどんどん よみがえってくるというか ずいぶん鮮明にだいぶ昔のことを皆さんお話しになってますよね。
(来島)高齢者の方々が 足腰が弱ってこられたり病気がちになってこられたりしている。その活動をきっかけにして社会とつながる ことがとっても大事なポイントです。この方々は元気なシニアの方々で、ふだんも いろんなボランティアもなさってます。回想して思い出して懐かしいな・よかったなだけではなくて、これからのいろんな地域の活動として広がっていく、また活躍される。そうやって若い世代に教え伝えるという役割を発揮してくださること自体が とても健康長寿にもいい効果があると考えています。
(賀来)こうした回想法というのは他の地域でも行われてるんですか?
(来島)愛知県北名古屋市では 回想法を介護予防 閉じこもり予防に結び付けようと20年以上続いてる。
京都の精華町には回想法のリーダー 進行役として活躍されている「つなぎ隊」という方々と 毎年 交流をさせて頂いています。青森県の八戸市では 介護予防を推進していくセンターでも回想法を取り入れています。

映像で当時の暮らしを見て回想

VTRを見ながら昔を回想してもらうために、まき割りや お手玉など当時の暮らしを再現することで思い出をよみがえりやすくしています。来島さん自ら出演しています。
その一つ 洗濯がテーマのこちらの映像。たらい これ 盥っていいます。これが洗濯板。来島さんが やり方を教わりながら体験していきます。
(来島)このテレビ回想法は 分かりやすく昔の家事・遊びを実演して 僕が教えてもらっています。それを見て あ〜違う違う 下手くそだって指摘してもらって こうやって洗うんだと 手が動きだすということをねらっています。そして病院・施設・デイサービスで 活用して回想法を勧めやすいように開発してきました。体で覚え込んだ記憶 手続き記憶というものを意識しています。
リーダーは回想を傾聴することが大事だと思います。あまり真面目に時代考証していくようなことではなく 気軽に行っていきましょうと。
参加者の方にも ここで聞いた話は ここだけのお話にしましょう。お相手の方に対して敬う気持ちで接していきましょう。間違いを指摘したりお話 考えを否定したりしないということを約束して始めます。

名古屋市では 昭和の出来事を自作のイラストで思い出してもらう

名古屋市にある福祉会館に「回想法センター」と呼ばれる部屋があって 昭和の懐かしい日用品が並べられています。糟谷則子さんはここで 名古屋市認知症予防リーダーと呼ばれるボランティア活動をしています。2016年から名古屋市が始めた試みで、認知症予防の知識や技術を習得して 地域で普及 啓発を行うもので 1070人を超える登録者がいます。
糟谷さんは4年前から田中光司さんと月1回「昭和の散歩道」と題した講座を開いています。
戦後の昭和の出来事や流行を年ごとに取り上げ 楽しくをモットーに開かれています。
この日は「昭和47年 」で糟谷さんが自分で描いた 「ノストラダムスの大予言」をモチーフにしたイラストで 当時のことを振り返ってもらいます。
事務などの仕事をしていた糟谷さんが リーダーを志したきっかけは 認知症になった末に亡くなった父や突然母を亡くしたことでした。
「母との思い出はいっぱいあるが、父との思い出はあまりないなと思っていた。回想法を自分でやって父のオートバイに乗せてもらって海に行ったなと思いだした。参加された皆さんも両親から愛されたことなど思い出されるんじゃないかと」といいます。
これまで絵を習ってきたことのない糟谷さんですが 先輩達が図書館で紙芝居を借りてやっていた。それを見て このくらいなら描けるかな、もうちょっと可愛く描けないかなって、見よう見まねでイラストを描き始めました。多い時では 30枚ものイラストを講座で紹介してきました。
参加者は「絵があるとちょっと違う。上手いからよく分かる。関連したことも 幅広く思い出すことが出来る。それが楽しい」といいます。

(青木)糟谷さんの絵がすごい上手で。もう全部どなたか 分かりました。糟谷さんも おっしゃってましたけれどもお父さんの記憶が あんまりないけど 回想法をやり始めたら思い出してきたっておっしゃってましたね。うちは両親が亡くなってるんですが、ここから回想法をやれば思い出せるのかもしれないなって思いました。
(小澤)この名古屋市の認知症予防リーダーの養成講座 来島さんも関わっていらっしゃるそうですね ?
(来島)名古屋市は16区福祉会館があり そこを拠点にして まず認知症のことを勉強しましょうと。さらにコグニサイズといわれる認知機能と運動を同時に行う研修、この回想法を日本福祉大学の名古屋キャンパスで研修を受けて頂きます。3つの講座を受講されると認知症予防リーダーとして それぞれの福祉会館・地域で活躍していただきます。
他に 昔のレコードを聴きながら回想しようという区や その地域をちょっとお散歩しながら懐かしい場所を思い出してみようとしてる区もある。

北名古屋市 歴史民俗資料館 昭和30年代の日常を再現

愛知県北名古屋市歴史民俗資料館は、昭和30年代の日常を再現した博物館で ひなびた商店の店先に当時の品物が並びます。地下の展示室にはシニア世代にはどれも懐かしい車ばかり。展示されているのは実際に使われていたものばかりで、なんと1万点以上もあるそうなんです。

突然ですが ここで これなあーんだクイズ!
まずは賀来さん。こちらは何の道具でしょうか? ポップコーン作るの。ブー! 手回し洗濯機でした。昭和30年代に発売されたもので 洗剤を溶かした温かいお湯を入れ密閉して回転させます。空気の膨張による圧力を利用して汚れを落としやすくするというものだそう。
続いては青木さやかさん。何の道具でしょうか? みそを入れる。もしくは虫に関係ありますね?ブー!手を洗う吊り手水(つりちょうず)。吊り下げ式の手洗い器で トイレを済ませたあとなどに手を洗うもの。バケツのような部分に水を入れ 下の突起を押すと少しの水が出てくるというもの。

若い人は「牛乳瓶も コーラも…。 今あるものが 昔こんなだったと 見ていて楽しい」
お父さん世代は「実際に生活していた場面がいっぱいあって これ使っていたとか 持っていたとか、それが再現されて 町並みができているってすごい」

博物館の立ち上げに携わった 専門官を務める市橋芳則さん「昭和日常博物館」には 使われていた日用品が続々と寄贈されています。中には 短くなった鉛筆に顔の絵を描いたものが何本も。一見 ゴミにしか見えないようなものも…。博物館は20年ほど前から介護予防を目的に来館することで 回想法を体験できる場としても機能してます。
他にも収蔵物をテーマごとにまとめた「回想法キット」(例えば 釜炊きご飯の思い出)を地方自治体や福祉施設などに貸し出しも行っています。
市橋さんは こうした取り組みが各地に広がることに「医療費 介護保険だとかに博物館が寄与できるようになって底力を発揮できるようになってきた」期待を寄せています。

(青木)当時のことが よみがえってくるだろうなと思いました。昭和って やっぱり長いんですね。私も後半なもんですから ちょっとクイズが分かりませんでした。ちょっと世代の違う人と一緒に行っても楽しめそうですよね。
(来島)健康高齢者の方が介護予防 閉じこもり予防 認知症予防として 回想法を行っていこうと、お孫さんと一緒に行って 一番 おじいちゃん・おばあちゃんが語ってるという。

各地に 回想法の舞台となる施設があって、愛媛県 宮崎県 富山県 氷見市立博物館でも同じように収蔵物を活用できるように コーナーを設けたり 貸し出すと。
また図書館も昭和の生活道具がいろんな本になって 回想法に活用できる本をコーナーに集めて回想を楽しんでもらおうという取り組みも始まってます。
(来島)全国にも いろいろ広がって普及していくといいな。認知症の方も健康なシニアの方も 一緒に回想法を楽しめる地域の場ができるといいなと。認知症の方のご家族の方もいらして頂いたり また回想法を学ぶ若者たちも参加してくれると なお いいなと。
(青木)回想法は社会的立場とか関係なく みんなが一緒に楽しめるものなんだろうなと思い、私も是非やってみたいです。何を思い出すかが楽しみです。
(賀来)すごく回想法って大事なことだなと思って、私の年代ですと 周りの友人が 親御さんが認知症になられたとか 介護でくたびれてという方が多いので。

▽まとめ&感想

昔懐かしいものを見て思い出を語り合うことで脳を活性化できると聞いて、私たちは 同級会や地域の人と集まる度に 昔話をしていて 「しょうがない」と思っていました。これからは認知症予防、治療になると胸張って しゃべり合えます。

昨年暮れ 家の田に飛来した白鳥です。このあたり 年々白鳥が増えている気がします。本年もよろしくお願いいたします。