あしたも晴れ!人生レシピ★つながり生まれる!“新たな食のスタイル”▽こんな話

Eテレ 2023.8.4
孤食、黙食から“共食”へ つながりを取り戻す 新たな食のスタイルをご紹介!
見知らぬ人同士 食事することで 本音を語り合えるレストラン☆
国分寺で 場所を借り地元の野菜でボランティアが調理する食堂を開き 地域のつながりの場に☆
家庭で食事を作りながら 2人で立ち飲み「アペロ」で自然な会話に☆
相手の興味の先にあるものを共同注意することで 会話がスムーズになる

【ゲスト】青木さやか 【講師】同志社女子大学教授 日下菜穂子
【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄

見知らぬ人同士 食事することで 本音を語り合えるレストラン

東京 世田谷にあるレストラン コミュニティディナー 知らない人同士で テーブルを囲み 話と食事を楽しみながら つながりを作ろうというものです。
毎週金曜 開かれ この日は9名が集まりました。1人で来ている人も多いようです。
レストランの運営担当者 小嶋英郎さんが 知らない人との会話がスムーズに運ぶよう進行を進めます。
「2023年 残り半年 より豊かに生きていくために 意識していきたいこと 1人ずつ話して欲しいと思います」とテーマを投げかけます。
それぞれ 自分が豊かさについてどう考えているのか 思ったことを話したり聞いたりします。会話が弾むうちに これからやっていきたいことを見つける人もいます。
提供されるのは有機野菜などを使ったこだわりの料理。おいしい食事を分かち合うことで参加者の距離も縮まります。
このレストランを経営している会社は 教育のコンサルタントや街づくりなどの事業も行っています。コロナ禍で 食事を共にする機会も減り 孤立化しているため 人と人とをつなげる場作りが必要と考えました。
小嶋英郎さんは お客さんは リアルな場を求めている。社会とか 生きるとか 暮らしとかにおいて「食」はすごく大切なもので、食をきっかけに 何かしら体験してもらえるような形が いいだろうなというところからです。
この日 参加した 会社員の りな(仮名)さん。子供が独立し 1人暮らし。コロナ禍でリモートが増え 人と話す機会が減ったことが参加の理由で、自分の胸の内を聞いてもらい これから自分が やっていきたいことまで 話しました。
他の参加者もそれぞれ楽しい時間を過ごしたようで、終わりごろには連絡先を交換していました。このコミュニティディナーでの会話がきっかけで 自分のやりたいことが見つかった人も少なくないそう。

(青木)面白いですね。全く知らない世界でしたけれども。初対面の人のほうが話せるというのはちょっと分かるような気がしました。
(賀来)私も「えっ 知らない人といきなり?」って思ったんですが、見ていくうちに その方のバックグラウンドを知らないほうが 先入観がなく 話が弾んで。それは おいしい 食事がいろいろ出てくるからでしょうね。
食事を通した中高年のコミュニティー作りの研究と サポートをしておられる 同志社女子大学教授 日下菜穂子さんです。
(日下)初めての人がこれだけ距離を縮めていくのに 改めて食の力というのを感じます。食べるという意欲はどの人にも共通しているものなので 人が集まる理由に 「」を真ん中に置くと、いろいろな人がその場に集まりやすくなります。特に大切なのが 生の体を通したリアルな つながりで これだけ テクノロジーが進化してきた社会ですので より一層大切になってきてると思います。
自分がおいしいって感じて、誰かが一緒に食べていて 「これ おいしいね」って言ってくれたら 「 そうだよね」という確信に変わると思う。そういう体験の場があるということはとても重要なことだと思います。
「同じ釜の飯を食う」という言葉があって、食が人を結び合う機能は、古代のギリシャの壁画に描かれた食事をしているシーンがあって 祝宴が日がな一日続く。これは「シュンポシオン」と呼ばれていて「シンポジウム」の語源になっている。人々が集まって 食事をすると議論が進むということが 言葉の意味の源になっています。飲んだり食べながら 話すということは ちょっと自分をさらけ出していることにもなり、本音を語り合ったり お互いのことを聞き合ったりすることができる。
北欧のデンマークでは 使われなくなったアブサロン教会をリノベーションして そこに大勢の人が集まって食事会をする取り組みがあります。10人ぐらいが座れるテーブルに初めて会う人、仲間ではなかった人が集まって大皿料理を分け合って食べます。孤立を解消して人々を結びつける拠点として この教会を活用する取り組みが行われている。
日下さんも足を運び アジア人 恐らく1人だけ 実際に参加してみました。温かく迎え入れられ 最後には全員で歌を合唱するという 盛り上がりになりました。

国分寺で食堂開催 地域のつながりの場に

東京 国分寺市のカフェや市内の施設で開催している「ぶんじ食堂」があります。子どもから高齢者まで事前に予約すれば 誰でも500円ほどで ごはんを食べることができます。この食堂を立ち上げたメンバーの一人永井千春さんは 地域の中で人とつながる場が作れないかと考え 5年前地域の有志とともに食堂の開催を市民に呼びかけました。キッチンを提供してくれる施設で2500人以上が食事を楽しみました。国分寺市の農地面積の割合は都内で3番目に高く 野菜や果物の生産が盛ん。料理に使う食材は 農家から提供してもらったもの。取れたての にんじんや大根やレタス。別の農家にも訪れ イチゴやトマトも 得た。地産地消で余った野菜の廃棄削減にもつながっています。
この日の食堂は市内にあるシェアハウスの共同キッチン。メニューは食材をみて どう生かせるか工夫しながら誰もが食べやすいレシピを考えます。調理をするのはボランティアで 主婦や飲食に関わりのある人たちが中心に行っています。この日 造ったのは 4〜5種類の野菜を使った混ぜごはん、煮物・サラダなど。食堂に来た子どもも手伝います。
夕方 予約していた人たちがやって来ました。68歳の中野さんは介護をしている母親と2人暮らしで、毎回楽しみにしています。 食事が始まるまでの時間 ボードゲームをしたり 楽器を弾いたり 積み木で遊んだりして 異なる世代での交流も生まれています。
今日は他にも高校生など30人近くが集まり 午後4時すぎ食事がスタート。この日のメニューは4種類のおばんざいみそ汁。デザートは参加者が提供してくれた卵で作ったプリンです。
幼い子どもから 80歳までが集まるというこの食堂。年の違いはあっても 地域に関する共通の話題が見つかることもあり 話も弾みます。近くに暮らしながらも 互いに知らなかった人たち。協力し 食を共にすることで温かなつながりが生まれています。

(賀来)癒やされる場所があるって いいなって。それで 地域がつながってるって安心。とても すてきな試みでずっと続いてほしいなと思いました。
(青木)うちは中学生の娘と2人暮らしで、私がいない時は娘が1人でうちで食事してるので 近くにあったら 行かせたい。食事は もちろん栄養があって旬の地元の物を使ってあり、地域の人たちとコミュニケーションがとれ すごく安心感にも つながるなって思いました。

(小澤)子どもの頃に 地域のお祭りとか 催しのあとに老若男女が集まる場が ありましたけれども そういうのが日常的に持たれるというのはいいなと思う。
(日下)日常的に地域がつながる場があるというのは。人々が孤立して その状態が長く続くと 体の健康だけでなく 心の健康も衰えて、究極には寿命にも影響があることが 統計などから明らかです。
自分ができることを提供して 力を寄せ合うということが起きてきます。
世代の違いがあることで できること できないこと が見えてくるので 何か自分の役割をその中に見いだしていくとか 自分の居場所を見つけることができると思います。

(青木)私自身のことを考えると 1人で食べると寂しいなと思う反面、1人のほうが落ち着くなという面も あるんですけれども。
(日下)人づきあいには時には煩わしさも伴いますので、1人でいたい時に1人でいれる。そして誰かと一緒に何かをしたい時には一緒にいれるということを 選べることが大事
だけど本当に必要な時に 人とつながれない人がいるということも問題で きっかけ作りとか その場に入ってこれるような工夫 仕組みを作るということがすごく重要になってくると思います。

食事を作りながら 2人で立ち飲み「アペロ」で自然な会話に

上田淳子さんは「きょうの料理」などにも出演し 作りやすい工夫と おいしいレシピが人気の料理研究家です。淳子さんは息子が独立してから 会社員の恭弘さんと夫婦2人だけで過ごす暮らしになり、食卓で会話が無くなったと感じてた。
恭弘さんが食事を待つ間1人で座っている時の居心地の悪さから 「ビールでも飲む?」と自分が飲むのに合わせて渡した。淳子さんも飲み始め ちょうど 作りかけのつまみを口にしたり そのことなど しゃべっていた。
フランスで生活してた時期 友達に「アペロしよう」って言われて、しゃべる時間は楽しかったのを思い出した。※「アペロ」とは フランス語で 食前酒を意味する「アペリティフ」の略。夕食前に料理をつまみながらお酒と会話を楽しむ食事スタイルを指すこともあります。
こうして夕食前の習慣になった「アペロ」。何を話そうか考えなくても 自然な会話が生まれるそう。2人とも キッチンにいることで 皿を出すのを手伝ったりすることも。夕食前から会話が始まっていることで テーブルについても自然な形でコミュニケーションができるように。この食卓の雰囲気以前とは違ってきているようです。
これまで日常的には料理をしていなかった恭弘さんが 毎朝ごはんを作るようになりました。

(賀来)こんなに変わられるんですね。おいしいお食事と おいしいお酒と豊かな会話。
(青木)私の仕事の話とか 夏休みに何をするのかという話します。でも私から話をどんどん聞いていくと「そんなこと聞かれたくないよ」っていう感じもあり、「私の話をよくテレビやラジオでするから ママには何も言わない」というようなことも。

相手の興味の先にあるものを共同注意することで 会話がスムーズに

(日下)アペロで会話がスムーズになったのは キッチンに立って 料理の手元を見て 同じ物を見ているということだからだと思います。
さっき ご主人が「照れちゃう」っておっしゃいました。相手のことを直接尋ねるよりも、相手の興味の先にある物を尋ねたり、「何を作ってるの?」とか「どんなふうに調理したいの?」と聞く、一生懸命やってることを聞いてくれたって思うし とても話しやすくなるわけですね。
会話がスムーズになったのは キッチンに立って 物を挟んで人と人とがつながるということ 三項関係というんですけれど。面と向かって話すと ちょっと緊張感があったり 話しにくかったりしますよね。興味の対象が相手の視線の先にあるので 注意を向けて 同じ物に見る 共同注意が うまく働くと 先ほどみたいに ご夫婦の距離が縮まるということが起きるんです。

(青木)会話を盛り上げるっていうか 回す事 すごい苦手なんです。例えば賀来さんと食事に行かせて頂くことになったら できるだけ賀来さんのことを調べる。で調べてきたことの披露をする。嫌ですね。話すことが尽きたら 止まってしまう。
(日下)食は やはり生きる原動力です。その場が楽しくなることで 人々のつながりが生き生きとしてエネルギーが生まれてくると思います。
私は今一緒に作って食べるというところから共食をする シェアダイニングというプロジェクトを推進しています。福岡では地域の食材とか屋台文化があるのを生かして 高齢者が地域の方々と共食をする取り組みを広げよう という動きが始まっ ています。
家族とか友人とか限られたつながりだけではなくて さまざまな人のつながりが生まれたり そして地域の中のセーフティーネットとなる そういった食の機能が これから一層求められていくと思います。

▽まとめ&感想

見知らぬ人同士 食事することで 本音を語り合えるとか、 2人で立ち飲みし自然な会話になる…なるほどと思いました。
私の地区でも 先日学童に 野菜を持ち寄って カレーを振る舞いました。これも似たようなものですね。