所さん!事件ですよ☆デジタル地図の落とし穴 店の情報が勝手に改変される▽知られざる地図の世界

NHK総合 2024.5.25
去年5月、青森の居酒屋で「星1つ」の低評価が突然大量に書き込まれた。それは誰でも編集できる グーグルマップの功罪です。国土地理院の地図 見易さ重視で誇張表現もあり。アメリカのアグローは地図にある架空の町で 複製防止のため。個人的な「不合格の碑」もデジタル地図に!
【司会】所ジョージ 木村佳乃 ホルコムジャック和馬
【出演】真矢ミキ、報道局デジタル担当デイスク山下和彦【語り】吉田鋼太郎

誰でも編集できる グーグルマップの功罪

青森の新鮮な魚介類や地鶏が自慢で 地元の常連客に愛されてきた 居酒屋の経営者 櫻庭康さんに話を伺う。「去年5月 それまでは 5段階中 平均4.5の評価を受けていたが 突然 1の評価が大量に書き込まれた。1時間に 60件もあって 中には意味不明なコメント「妹のミリアムに会いに来てください」も。さらに営業時間の欄が閉業に書き換えられた。」
店が使っていたデジタル地図「グーグルマップ」は、若い世代を中心に飲食店を探す際に重宝されている一方で悪質な嫌がらせが書き込まれるといったトラブルも多発。
原文を調べてみるとなんと ヘブライ語。イスラエルの公用語だが、店にイスラエル人らしき外国人が来たことはないという。最終的には 1.6くらいの評価になった。

グーグルマップは 位置情報に加え 料理の写真やクチコミによる評価が表示され 若い世代を中心に利用されている。
実際に 飲食店を探すツールを 道行く人に尋ねると、口々に「グーグルマップ」で「調べたところにいきやすい」「案内してくれる」と。
地図アプリに詳しい専門家 経営コンサルタント 近野礎さんに話を聞くと グーグルマップは仕組みとして 一般ユーザーも情報修正の提案という形で地図情報の編集に誰でも参加できる。
ユーザーや店舗からの最新情報を反映できるよう 修正を提案できる機能がつけられている。
しかも 店名もお店のカテゴリーも飲食店を公園とかに変えられ、すごく便利な半面 店の情報が書き換わったりする実態がある。
店主に「後日 お金を払うと 嫌がらせを消すことができる」と 地図アプリのサポートセンターと名乗った電話があったという。詐欺を疑った店主は勧誘を断った。
今 こうした地図アプリなどを舞台にした ネット被害が増えている。被害者から多くの相談を受けている 弁護士 中澤裕一さんは「悪意のある書き込みを簡単に消せないことが トラブルを大きくしてしまう」という。当事者でないサイト運営者からすると「消すべきかどうか」の判断がしづらい。そうなると裁判所に持ち込むということになる。とりわけ深刻なのは 医療業務医師、患者の秘密を守る義務があるため たとえ 不当なクチコミでも具体的に反論するのが難しいという。
そこで 医療機関の人達 数十人集まって 2024年4月18日、米グーグルに計約145万円の賠償を求める集団訴訟を東京地裁に起こした。
ちなみに 紹介した店のその後、常連客の皆さんが 下がった評価を元に戻そうって応援した結果 評価 元どおりに…。
こうした悪質な書き込みに関してどんな対応策を取っているのかグーグル社に問い合わせた回答
・偽の口コミを禁止する明確なポリシー
・システムとオペレーターが24時間体制で不審な行動を監視
・違反を発見した場合迅速に対応
(コンテンツの削除やアカウントの停止・訴訟まで)

(所)それじゃあ 安心だねってそういうことじゃないじゃん…。
報道局デジタル担当デイスク山下和彦
インターネットはそもそもオープンという思想がある。さまざまな人の意見とか情報とか 投稿とか書き込みで どんどんアップデートして みんなで作っていこう。なんですけれども 中には 悪質な投稿・書き込み・情報・意図的に誰かをおとしめよう というのも出てきている。
悪質な書き込みグーグルなどの運営会社でも 、去年年間に1億7,000万件以上 悪質な書き込みをAIとかオペレーターを使って 発見して削除しているが 追いつかない。みんなで作る地図になってしまっている。

真矢ミキさん 実は無類の地図好き。尊敬する人物は伊能忠敬という。
「きっかけはね 父親が転勤族で 地図を持たされて ランドセル持って学校まで行っていた。それで地図が読める人間になってきたんですよね。そしたらどんどん 山脈とか どんどん覚えていって、だんだん 高低差の地理が面白いって思うようになって。」
(所)こんなに地図に熱く語る人いるんですね。

国土地理院の地図 見易さ重視で誇張表現もあり

国土地理院が発行した地図には書かれているのに、なぜかその存在が見つからない 幻の島 スズメ北小島があるという。それは鹿児島市から西におよそ120kmの 海にあるというので ディレクターは早速 鹿児島県へ。最寄りの港で漁師さんに聞いても 南さつま市の出張所で聞いてみても判らない。
釣り船業者上村さん をチャーターし 片道2時間半をかけて スズメ北小島へ向かう。そこは地元の人でもめったに足を運ばない海域だという。雀島、宇治向島 近くの 地図で示されたスズメ北小島の場所だが 見当たらない。干潮になって水位が下がるまで 5時間待ってみた。すると 波をかぶった岩礁が浮いて見えた。地図の位置とは 300mほど ずれているが…。

真相を探るべく 40年前にこの海域を調べたという海上保安庁へ。
三枝隼さんに 早速 映像を見てもらう。実際見てないんですけど、「海図では様々な誇張や省略をする」
別の海域を例に説明してくれた。3万5000分の1の大きく見える海図があって 島 本当は たくさんありますね。でも20万分の1のほうでは一つ点が描かれてるだけで、複数ある島も省略して書かれている。縮尺の小さい海図では 島の数が減ったうえで 位置がずれているのが分かる。
スズメ北小島は実際の位置よりも海図上は北側に描かれたのではないかと思う。(2024.5.1 島の位置をより正確に表記した地図を公開)。断定できないものの あの岩礁が スズメ北小島の可能性が高いようだ。

島の定義:自然に形成された陸地で、高潮(満潮)時 海面上にあるもの
(木村)じゃあ 見えてなかった…?
見えていたかもしれない…、見つけられなかっただけ。ただ 干潮時はあれくらい 姿が出ていたので見つけることができた。

お笑い芸人をするかたわら 地図会社でも働くほど 地図好きの 小林知之さん、ああいった誇張表現とか珍しくないんですか?
(小林)縮尺があるので、地図=正確というのが頭の中にあるんですけど だいたいで見てもらった方がいい。見やすい方が重要で。

アメリカのアグロー 地図にある架空の町! 複製防止?

(小林)地図に書いてあるのに存在しない町があるのは、アメリカ ニューヨーク州 アグロー(agloe)
地図では駅があるようにも見えるが、近くの町で聞き込み開始すると 手がかりとなる証言を聞くことができ その人物のもとへ。アグローの歴史を長年研究してきたジョイズ・コンロイさんで 話を聞いた。
架空の町 アグローが誕生したのは今から100年ほど前。森の中を小川が流れる のどかな場所だったという。実は アグローは 地図製作者の2人の名前を並べ替えて作られた架空の町
この架空の町が脚光を浴びたのは2008年、ベストセラー作家 ジョン・グリーンの小説『ペーパータウン』中で 重要な舞台となり、失踪した同級生を探す主人公が たどり着いたのが アグローだった。訪ねようとするファンも現れ、地元の住民によって「アグローへようこそ」という看板が建てられた。今は小説を読んだファンたちがここを訪れ SNSに投稿して 楽しんでいる。

架空の町は 「ペーパータウン」というそうですが なぜ書く必要があるか、専門家によると地図会社同士の複製防止が理由の一つだそうです。
地理地図ライター遠藤宏之さん「地図を作るのには大変な労力 お金もかかっているので それをそのままコピーされ 同じようなことをされたら 大きな損失が出る。間違いがそのまま移されていると 偶然の一致 にしては 出来過ぎになりますね。」
複製されたかどうかを 確かめる証拠として架空の町を仕込んでいると。
(所)本当は 日本の地図なんかでも ない町が書いてある可能性もあるよね。
(小林)都市伝説レベルで、日本だと たぶん町名ではなく 例えば地図記号 針葉樹の中に 広葉樹が混じっている。その辺を探るのも 何か 楽しい。

(小林)こちらの空想地図(富井市石松町)ですけども、 実在する所に重ねた 架空の島です。地図自体は架空なんで 空想地図なんですけど、この中に 鉄道が走ってたり…。
(真矢)でも 住んでる温度がするんだ。わくわくしてます 今。何か 見えないものを見るのが好き。平安京もそうなんですけど何もない所に 想像するとか好き…。

個人的な「不合格の碑」もデジタル地図に、災害時の必須アイテム

グーグルマップに「松井元哉 第113回 医師国家試験不合格」があります。岩手県 一関市の そこには小さな石碑あって 「松井元哉」という名前と 「医師国家試験不合格発表閲覧之地」と刻まれていた。
地主で工務店経営の佐藤さんに聞くと 看板屋さんから ここに建てていいか尋ねてきたという。
看板屋 小野寺さんは 松井さんから 石碑を建てたいと 長い文章のメールがあった。熱意に 承諾したという。松井元哉さん奈良県 橿原市に住んでいる 大学病院で働く医師だった。
2019年3月 大学で自転車サークルをやっていて、卒業旅行で東北を走っている途中 あの場所で医師国家試験不合格を知った。
一念発起した松井さんは 翌年合格、再び後輩たちと岩手を訪れることにしたが、通ったときに 石碑があったら面白いと思ったら 建てずにいられなかった。予算10万円でお願いしますといったらピタリ10万円で作って頂いて、 みんなびっくりというか 面白がってくれた。それが 史跡として いつの間にか デジタル地図で公開されていたという。
診察していても はじめての患者さんに「先生のことのこと知っています」とか 「石碑の先生」といわれることがあるそうです。
(山下)この松井さんに取材しましたところ、そこからお母さんに電話をしたそうなんです。そしたら お母さんは「落ち込み過ぎて 一緒に自転車旅行している友達に迷惑かけないでね。でも つらくなったらいつでも帰ってらっしゃい」と。優しい言葉をかけてもらって その言葉に奮起して今度は合格することができた。

インド生まれのサルー・ブライアリーさんは 5歳のとき 家族と離れて孤児になり オーストラリアの里親に引き取られたんですが、大人になってから記憶を頼りに 地図サービスを使って故郷を探したんです。毎日9時間3年かけて 探しついに実家を発見。そして25年ぶりにお母さんと感動の再会を果たしたんです。
(真矢)やっぱりデジタルのすごさって今みたいな。やっぱり デジタルとアナログの両方の知恵を今こそ出すべきと思う
(山下)こういうふうに デジタルの地図は台風とか地震とか災害が起きたとき なくてはならない存在で、NHKでも この間の能登半島地震の際に 給水所はどこにあるのか 避難所はどこなのかを地図に載せて提供しました。
ちなみに 真矢さんなりのデジタル地図の楽しみ方って 何かあるんですか?
(真矢)やっぱり 指で旅できることなんですけど。例えば お酒を用意して➡さあ 南米行くかと思って南米飛んで ナスカの地上絵を ば〜って拡大しながら 飛んで、おお〜! って思ってじゃあ 次はエジプト行ってピラミッドの上とか立ってみて。そうすると 鳥の目線ですね。

▽まとめ&感想

グーグルマップ本当によく利用してますが 誰でも書き換えられるんですね。勉強も注意も必要です。