Eテレ 2021.7.16
鳥取の実家で一人暮らしする親の見守り 生きがいを大事にして地域の人にお願いする。
親の介護に罪悪感は持たず自分の人生大切に! 地域包括支援センター活用する。
企業の介護離職に対する取り組みが進んでおり、介護費用は親のお金を使うのが基本。
IT機器を駆使した「40歳からの遠距離介護」 簡単な見守りツールも
鳥取の実家で一人暮らしする親の見守り 生きがいを大事に 地域の人にお願い
今回のテーマは離れて暮らす親の見守りです。
既に親の介護に直面している方にとっては切実な問題ですし、今は元気でも いつ見守りが必要になるのかといった不安はありますよね。
ゲスト 森口博子さんは お母さんが離れて一人暮らしをしてらっしゃるということですけれども。
(森口)今は福岡に姉たちがいるので 常に見れる環境ではあるんですけど 階段のつまずきもそうですし ガスをつけっぱなしに 離れていないかなとか そういう不安要素は やっぱりどんどん増えてきているので すごくすぐ駆けつけられる環境ではないので そこがいつも心配ですね。
まずは遠く離れた実家で一人暮らしをする母親を どう見守ったらいいのか悩む息子のケースからです。
さいたま市に住む 南場明裕さん(53歳)。
実家は鳥取ですが 大学入学とともに親元を離れました。
金融会社に就職し今は妻 子ども2人と暮らしています。
南場さんの心配は 鳥取に暮らす母・茂子さん(77歳)。父が 21年前に他界してから一人暮らしを続けています。
だんだん やはり70代半ばぐらいから体調を崩すことが時々 そういう連絡を受けるようになりました。母・茂子さんは去年 狭心症と脚の血流を改善する手術を受けました。
長男の南場さんを含め 子どもは3人いますが 皆 他府県で暮らし 何かあってもすぐには駆けつけられません。
「コロナ禍なもんですから私も行って何かしてやれるわけもないもんですから。」
さらに追い打ちをかける出来事が。母が リハビリを始めたやさき 愛犬ヘンリーが旅立ったのです。
同じ犬種 同じ名前で共に過ごした4代目。一人暮らしの母・茂子さんにとって心の支えでした。
ふるさとで一人暮らす母をどう見守ったらいいのでしょうか。
相談したのは、遠距離介護のアドバイスを行う専門家の川内 潤さん(NPO法人 となりのかいご 代表理事)
(川内)実はですね 離れていた方が 良い介護になるケースが多い。
変な話ですよね。実は息子さんたちが近くにいるということで お母さんが むしろ本当は自分でできることを やらなくなったりとか、いい緊張感で頑張れてるってこともあったりするので 一人暮らしだからこそ 、むしろ今は離れていることで「なんとか いろんな人の手を借りていくんだ」 という方向性で考えて頂きやすい環境だと。
親の隣近所や自治会 民生委員など地域の人に 何かあった時に 連絡してくれるようお願いしておくこと。そして大切なことは「お母さんは どんなふうに このあと10年生活したいと思っている?」と聞いてほしいんです。
「自分は これやってると幸せ」というものを持ってる人って すごい いつまでも元気なんですね。
親が何を生きがいに暮らしているのか 早速 鳥取の母へ電話してみることにしました。
母は病院などを通じ民生委員とつながっていて 地域の人たちに支えられていることが分かりました。
今度 帰省した際には母が お世話になっている人を訪ね 改めて お願いしようと思っています。
本人的には やっぱり5代目のヘンリーを飼いたいんだなってよく分かりました。
それが心の支えで生きがいにして、リハビリ頑張ると言ってるんだったら 何か考えてあげたいなと思う。
親の介護に罪悪感は持たず自分の人生大切に! 地域包括支援センター活用する
離れて暮らす親のケアを考える NPO法人パオッコ理事長 太田差惠子さんです
(賀来)親の介護って言いますと どうしても遠距離だったり 仕事や家庭があって 介護に専念できないという 何でしょう 子どもの後ろめたさというか 罪悪感みたいなものが つきまとってしまうんですけど。
(太田)そうですね やっぱり多くの方が罪悪感と闘いながら ただ やっぱり時代は変わってきておりまして 今は 女性も男性も みんなお仕事をされていて、そして また すごく長寿にも 長生きの時代にも入っておりますので 家族だけで親御さんを見るということは もう難しい時代なんだということは 割り切って考えて、そして その分 第三者の目といいますか 公的なところとか 民間とか 今のように ご近所の方とかいろんな方々に 一緒に見守ってもらったりすると 親のほうも安心なんじゃないでしょうか。
(賀来)前向きな割り切りですもんね それってね。
(太田)何も罪悪感を持つことじゃなくて、そして それぞれが精いっぱい生きていく。
子どものほうだって 自分の人生を大切にしていくっていうことが 親の望みでもあるはずです。
VTRでご紹介しました 地域の方たちに見守りをお願いして 何かあったら連絡をもらうという方法がありましたけれども。
(太田)ただ地域に何でも 頼れるかっていうと なかなか今は もう地域も高齢化してきていたり 皆さん忙しかったり そんなに隣近所とおつきあいがない地域だってあるんじゃないでしょうか。
公的な相談先としては、地域包括支援センターがあり、日常生活・介護 福祉など高齢者・家族の相談に無料で応じてくれます。
住所地ごとで担当の地域包括というのが決まっていて、ご心配なこと そんなに介護っていうほどじゃなくても 介護の専門職のケアマネジャーさんとか 社会福祉士さんとか 保健師さんとかが チームになって助けて下さいます。
そこで介護保険の申請もできますので、もし介護のことが心配とか また見守りの何かサービスないかなとか 聞いて頂くといいんじゃないかと思います。
(賀来)見守りサービスって 何か随分充実してるんですってね?
(太田)役所がよくやってるのは 食事の宅配サービス(手渡しで 何か異変があると遠方にいるお子さんとかに連絡をしてくれる)
乳酸飲料とかを配って元気かどうか確認してくれたり、新聞とかが たまっていないか 確かめ もしたまっていたら ご家族に連絡をするというようなことを 自治体でやっているところもあります。
介護保険使わなくても民間さんの 緊急時に駆けつけてくれたり 家事援助などのサービスも提供するところもあります。情報は取りに行って頂きたいと思います。
地域包括支援センターに連絡をすれば さまざまな専門を持った人たちがそのご家庭のケースに合わせて何か支援を考えてもらえるということでよろしいでしょうかね?
ちょっとうちの親弱ってるかもしれないとかいって お電話して下さると 地域包括の職員さんが ご実家のほうに見に行って下さって 親御さんの様子を確認したりして、そして必要に応じて介護保険の申請とかも代わり(代行申請)に無料でやってくれるんです。
離れて暮らしてると 親のことが心配なあまりに、親は私と僕と同居したがってると 思い込んでる人とかいるんですけれども、親には親の人生があって 親には親が大切にしていることがあると思うんです。だからこそ聞いてみて一体うちの親は何を大切にしているのか ということをやっぱりコミュニケーションを増やしていくということが 大切なんではないでしょうか。
(賀来)よかれと思って本当に心から やってるつもりが 親の本心を聞き出してはいなくて、実は自分が心配したくないから 何か あれこれ世話を余計なことまで考えたり 世話を焼いてるんじゃないかって思う時が私あるんです。
(森口)何か自分の安心のためにみたいな。
親に希望を聞くって ちょっと てれくさいような気がしちゃうんですけど。
(太田)それはちょっと思い切って 聞いてみてください。
きっとね親御さんも「あ〜聞くんだ」と思いつつも たぶんうれしいじゃないでしょうかね。
(森口)後悔はしたくないですよね。
企業の 介護離職に対する取り組み 介護費用は親のお金を使うのが基本
離れた親の見守りで今 問題になっているのが 仕事を辞めざるをえなくなる介護離職です。
企業にとっても 社員にとっても仕事と介護の両立は切実な問題です。
対策に力を入れている このタイヤメーカーでは40歳以上の社員に向け 介護に役立つ情報を提供しています。介護が必要な家族の状況を把握。そのためのチェックリスト。そして参考になる事例の紹介。
介護のプロの手を借りる知識。介護休業や給付金など企業の制度を紹介しています。
人事労政部長 竹内さん「やはり働き盛りの方々になりますので会社としても核になる人材ですので 介護もやりながら引き続き仕事も続けてほしいというのが 会社の考えてるところです。」
講師は 先ほどのVTRで 母を心配する息子に アドバイスをした川内さんです。
「もう既に年間10万人ずつ人が介護のために辞めているので 家族が要介護状態になっても普通に仕事ができるような仕組みを 作っていくことのほうが大事じゃないかなと思います」
ある個別面談、遠くで暮らす両親は共に90歳。母が認知症で 父が世話をするいわゆる「老老介護」の状態です。
自分が介護に行けない分 ヘルパーを頼むことにしたのですが 母が拒むというのです。
「他人の世話にはなりたくない」「自分には介護は必要ない」と訪問介護などを嫌う親も多いと川内さんは言います。
ご家族に逆に 「もう説得やめません?」というお願いです。
一緒に住んでらっしゃるお父様からすると 分からせたいというか。実は それが むしろ お母様にとって ちょっと おつらい場面になってなければ いいなと。
お母様の「これ手伝ってもらったらうれしいな」というところを見つけて 例えば1回 2回目は悪かったんだけど3回目から少しずつ受け入れて下さる こともあるので。母が できることは任せ 手伝ってほしいことをヘルパーが補う。母とヘルパーが信頼関係を築いていくことが大切だといいます。
辞職 年におよそ10万人ということで、女性が多くて やはり働き盛り世代に目立つということなんですね。
仕事と介護の両立について考える企業の取り組みは、特に大手企業では相当やられており、セミナーだけじゃなく、介護のいろんな方法とかを書いた冊子とかを作ったり。やっぱり貴重な人材の社員さんが辞めないようにいろいろ やってるところはとても増えてきていると思います。
介護で仕事を休むことができるという法律になっていますので 是非人事とか総務とかに相談して頂きたいし 自分の勤務先の介護支援策も調べておくのは大切だと思います。
自分のほうが笑顔でなければ 親を笑顔にするということはたぶんできないと思うんです。
自分の人生を大事にして 優しい子よりも マネジメント上手になって頂きたいと思うんです。
介護はマネジメントだと考えてますので 決して仕事を辞めたりすることはなく 自分の人生も大切にしていくことは可能です。
マネジメントとして介護は、わりと仕事のことと同じで、状況把握から始めます。
今 親は何ができて何ができないかとか、見守りに関して言えば どういうふうに見守ることが今必要かなとか 現状把握をして、そして必要なところにですね 家族ができないのであれば サービスを入れていくということですね。そうすると お金とかもかかってきます。
そしたら その費用をどうするかということで、本当 仕事と同じ マネジメントというふうに考えて頂くと分かりやすいかと思います。
(森口)ちょっと冷静な気持ちがあると何か うまくいきそうですよね。何か 自分のことを犠牲にしてるんだというふうに 親に映ると たぶん親は甘えてくれないのかなと 感じます。
あくまで親の人生を応援すること。親が少しでも自立して快適な暮らしを送れるように応援すること。
ですので そこにかかる費用は親のお金を使うのが基本だと私は考えています。
親御さんの年金・預貯金・生命保険・不動産など確認
そういうことをやっぱり聞くということは必要になってくると思うんです。
親側からしても親のお金を親のために使うっていうのは将来ですね 親が亡くなってから相続とかでもらうよりは ずっと生きたお金の使い方だと思います。
だからここは親御さんご家族みんなでしっかり話し合っておくってことは大切だと思います。
IT機器を駆使した「40歳からの遠距離介護」 簡単な見守りツールも
認知症の母親を見守る遠距離介護の達人です。東京に暮らす工藤広伸さん 48歳。
「40歳からの遠距離介護」というブログを立ち上げ 自ら実践する遠距離介護の体験談やお役立ち情報を発信しています。
心身疲労や交通費の悩み 新型コロナで帰省できない現状での工夫など さまざま。
工藤さんの遠距離介護は 岩手県盛岡市で実家での一人暮らしを望む認知症の母。
その方法は東京で働きながらIT機器を駆使したもので、コロナ禍の前から実践してきました。
(取材者)どういうふうに見守ってらっしゃるんですか?
(工藤)スマートフォンを使ってみるんですけども。このアプリをタップします。
東京から岩手の実家の居間が こんなふうに映るので、ごはん食べてるなとか 音も聞こえるので、何かテレビ見てるなとか 全部 様子が分かります。
カメラの設置は居間 台所 玄関が見える廊下 寝室の4か所。しかも このカメラ 動くものに反応して録画する機能もあります。夜中に転倒していないかなど確認することができます。
そして大切なのが母に予定を知らせること。この黒いものが その役割を果たすスマートスピーカーです。
「今日は デイサービスの日です。荷物の確認をしましょう」。
工藤さんが あらかじめ母の予定をスマホで入力して 実家のスピーカーにしゃべらせているのです。
「カレンダーの中に 予定を入力すると しゃべってくるんです」
しかも同じ内容を15分おきに伝え 認知症の母が 思い出せるようにしています。
家電を遠隔操作して母が快適に暮らせるよう整えています。
カギを握るのは実家に設置したスマートリモコン。
東京にいる工藤さんが 遠隔操作してテレビやエアコンなどを動かします。
テレビは 母の好きな番組をスマホで予約しておくと…。その時間になったら自動でスイッチが入り番組が流れるのです。
「うたコン」ってあって火曜日の7時57分からNHKでやってる。あの番組がうちの母 大好きなんですけど、放送がいつか忘れるので こちらで設定して 自動的に「うたコン」に替わるんですよ。
認知症の母にとって難しいのが温度調節。命に関わる大切なことなので力を入れています。うちの母って結局温度が分かんないんですよ。だから家に帰ってエアコンの設定温度見ると 冷房17度とかに なってるんですよ。
そして岩手の冬に欠かせない石油ファンヒーター。これも遠隔で スイッチオン。岩手ってめちゃくちゃ寒いと エアコンの暖房では どうにもならないぐらい寒い時があって。すぐあったまるんですよね灯油ファンヒーターのほうが。 母が その使い方分かんなくなっちゃったので、僕が強制的に東京から押してあげるっていう。点火にあたっては ファンヒーターの前に危険なものがないか見守りカメラで必ず確認しています。
IT機器を駆使して 遠距離介護を続けて9年になる工藤さん。
できるかぎり 実際に帰省することを心がけています。帰る理由っていくつかあるんですけど、息子が帰ってきたから 料理してくれる。そのことが 認知症の進行を遅らせてるんじゃないかと思って 頻繁に帰ってた。
(森口)ITで全部 温度もちゃんと管理してくれて いろいろ予定も教えてくれて もう本当に画期的で びっくりしました。
(賀来)そのIT機器なんかもね助かるんですけども、頼りすぎちゃうのも どうなんでしょうかと思うんですけど いかがですか?
(太田)めったにそんなことはないと思うんですけれども やっぱり機器のことですから何かで うまく反応しないということもあるかもしれませんし これは一つのツールとして考えて頂いて。
ITを駆使して すごく 頼もしかったりするんですけど 費用がちょっと気になりますよね。
初期費用としてですね 見守りカメラ4台、スマートスピーカー、スマートリモコン、ボタンコントローラーということで 合わせて5万2,200円。
そして インターネットの通信費 月に 7,000円 これが工藤さんの見守り費用の場合です。
カメラに監視されてるととってしまう方も いらっしゃると思うんですけど 気になる方に。
見守りロボット エモちゃん
ロボットの中に置かれている場所の温度などを 感知するセンサーがあって 熱中症のリスクがあるのかないのか といったところを知らせてくれ 結果も子どものスマートフォンに届くということです。
こちらはですね 親御さんがお薬をのみ忘れたり のみ間違えたりしないかを見守ってくれるロボットになります。
離れた親の見守りのツールとしてはこんな簡単なものもあります。
・見守りポット:お湯を出して お茶を飲んでいるというようなことを1日2回メールで通知
・見守り電球:ライトのオン・オフの状況を子どものスマホに教えてくれる
・見守り電池:リモコンなどに入れて頂くとオン・オフの状況が分かります
これらのよさは ネット環境がなくても使うことができ 工事なども不要で すぐ使える。
今出てきたようなIT機器を使ったら それで万能かといえば 万能とは言えないかもしれませんね。
地域包括支援センターとか ご近所の見守りとか 民生委員とか 親族とかいろんな見守りを プラスしてその中の一つとして捉えればIT機器ですね すごく役立ちます。
どう使っていくかというのをご家族で親御さんと一緒に考えて 話し合っていくということが必要なんじゃないかと思います。
▽まとめ&感想
鳥取の実家で一人暮らしする親の見守り 生きがいを大事にして地域の人にお願いする。
親の介護に罪悪感は持たず自分の人生大切に! 地域包括支援センター活用する。
企業の介護離職に対する取り組みが進んでおり、介護費用は親のお金を使うのが基本。
IT機器を駆使した「40歳からの遠距離介護」 簡単な見守りツールも

