所さん!事件ですよ☆黒字なのに廃業?大廃業時代を防げ▽こんな話

NHK総合 2023.9.28
黒字経営なのに後継ぎがいないため多くが廃業に。
2年後 高齢化が進み 後継者不足で廃業 650万人職を失うといわれる。
新商品開発支援のクラウドファンディングで 白レザースニーカーなどヒット商品を生み出す。
「アトツギ甲子園」後継者が熱く実現したい未来を語る。

【司会】所ジョージ 木村佳乃 ホルコムジャック和馬
【出演】黒沢かずこ、藤沢久美、秋元祥治【語り】吉田鋼太郎

黒字経営なのに後継ぎがいないため廃業に

景気がよくなったのに 大廃業時代がやってくる。
宮崎県日向市で地元住民に26年間愛され続けてきたパン店が、黒字経営を続けていたにも関わらず、惜しまれつつ廃業した パン店経営 鶴田さん
廃業したが 得意先にお願いされ 今も時々パンを焼いている。店の看板メニューの食パン。
「おいしい食パン 中に水分がしっかり閉じ込められていて きめが細かくて 耳が薄いの。極限に耳を薄くして焼くのを工夫して それが一番のこだわり」
地元では 廃業を考え直してもらえないかという声が 次々と上がっている。

イタリアンレストラン 鎌田さん
人気メニュー はちみつトースト に 鶴田さんの食パンが使われ、現在は冷凍保存した最後の食パンを 少しずつ使っているという。
キッチンカー店主 児玉さん
「キッチンカーで使っているパン 鶴田さんにお願いしていて 継げっていわれている」

脱サラして パン作りの道に飛び込んだ鶴田さん。店頭販売に加え ホテルや保育園飲食店などにも卸していた。新型コロナで売り上げが落ちたときも 経費を削って 黒字経営を続けてきた。しかし 体力的な限界を感じ、今年に入って廃業を決意。2人の娘は他の仕事をしており 跡継ぎがいないことが決定打となった。地元の惜しむ声を受け 鶴田さんは 後継者を募集することにしたが まだ現れていない。

2年後 高齢化が進み 後継者不足で廃業 650万人職を失う!

東京では もっと深刻な事態が進んでいた。
鉄鋼リサイクル会社 山下耕平社長
「オフィスのロッカーや机とか 持ち込みが増えている。工場の方でも使っていた機械や工具だとか片付けの依頼増えているので 廃業が増えていると感じている」

都心の一等地では マカロン 焼き菓子 パンとか 有名で人気もあった店に休業の張り紙があった。
大手信用調査会社 米村さん 「この会社もう倒産しています。今年に入って 小麦とか原材料の物価高、電気代などの高騰で もうやっていけないと諦め 決断されたとみている」

信用調査会社 情報統括部 藤井俊部長
2025年問題 70代以上の経営者が 後継者が見つからないまま 80代に突入。ゆくゆく廃業する企業が爆発的に増える可能性がある 大廃業時代 2年後には始まるかもしれない。

(木村)何か 深刻な問題っぽいですね。 近所の人気だったパン屋さんがいきなりやめちゃった。

社会的に見るとすごい事件なんですよ。それを示す国の試算があるんです。
2025年 中小企業・小規模事業者の経営者の年齢
たった2年後には 経営者の高齢化が進み 127万社が経営者不足により廃業、そこで働いていた従業員の方 650万人職を失うといわれている。

黒沢さん。 ご実家食堂を営んでらっしゃったということで 継ごうかなとかって思ったことは?
(黒沢)ないです。朝から晩まで働いてるんですよ。それが ちょっと 嫌で。両親 2人で働いていたもんですから けんかばっかりしてるんですよ。それを見てて ああ 嫌だなって。

国際社会経済研究 藤沢久美さん、この後継者をめぐる問題どうにかならないものなんでしょうか?
(藤沢)個人経営の会社とか家族で経営してる会社 ファミリービジネス は、データで見ると一般的な サラリーマンの皆さんがやってらっしゃる会社よりも 利益の割合が大きいとか、長続きする割合が大きいという特徴があるんです。もう一ついいところ、さっきのパン屋さんもですが すでにお客さんがいる。すでにいいものがあるっていうことです。
経営者として入っていって 第二創業。一からつくるんじゃなくて 第二の創業。インターネットとか使って 全国に買ってもらうとか。

企業支援家 武蔵野大学教授 秋元祥治しょうじさん
インターネットを使って 後継者を募集するサービス、なかなか うまくいかない、難しいことも多い。最近も ご相談をお受けした写真館ですけども、もともとサラリーマンをおやりになってて インターネットのサイトで後継ぎになりたいと 写真館を購入して後継ぎになったけれども、従業員のカメラマンの皆さんが「オーナー 素人で写真のこと全然分かってないから、あんたの言うこと聞けない」なんて言われて…。
(所)その社長の人柄がね。言いっぷりもあるからね。

新商品開発支援のクラウドファンディングで 白レザースニーカーをヒット商品に

少子高齢化や人手不足など 中小企業を取り巻く状況っていうのは先が見えない。多くの経営者の皆さん看板 下ろそうかなと考えています。

大阪の昭和29年創業 従業員11人の靴の下請けメーカー専務で3代目 上田誠一郎さん
家業の創業以来の一番のヒット商品 白レザースニーカー(消費税込みで 33,000円)を見せてくれた。
8年前、大口の取引先が倒産 売り上げが半減。オリジナル商品を開発して 下請けから脱却しなければ生き残れないと痛感した。しかし 立ちはだかったのが資金の壁だった。
新商品立ち上げてから 初めて店頭でお客さんが 見るまで 大体1年半かかる。この間の費用最低でも1000万円から3000万円。新商品のアイデアがあっても突破口が見いだせない
苦しい状況を変えたのは、新商品開発支援サービス「Makuake」 執行役員 松岡宏治さんとの出会いだった。
上田さんの靴をヒットに結び付けた松岡さん。こちらの会社 アタラシイものや体験の応援購入サービス敏腕プロデューサー集団で、中小企業が開発した新商品を中心に これまで3万点をインターネットで販売。肌着メーカーや化粧筆メーカーなど苦境にあった企業が 起死回生のヒット商品を生み出している。資金がないなどの悩みを抱えた企業が この会社に支援を依頼。担当となったプロデューサーはどうしたら売れるのか一緒に考えてアドバイスを送る。この会社の強みは 200万人の会員がいること。プロデューサーはこれまで蓄積した販売データや 会員の要望に基づき 戦略をアドバイスする。
(会員の声)「25000円だったら 修理保証か何か交換保証など 長く使えるサービスが欲しい」・「フォーマルシーンでも履けるスニーカー欲しい」
さらに 「10年後にも愛される1足を作りたい」といった会社の哲学や歴史を書き添える。

ものづくりにかける思いに共感した会員が、ファンとなり購入を希望。募集から僅か25日で1300万円以上を集めた
(上田)これがなかったら、私たちの会社は存続していないと思う。

このサービスの支援 によって 世界中のファンの獲得に成功した企業も現れた。和歌山県の老舗酒蔵を経営する 4代目 山本典正さん。今世界30カ国に輸出を行っており この日もマレーシアから帰国したばかりだという。
海外進出の拠点の一つとなったのが、去年 東京 日本橋に構えた どぶろくパブ。出店にかかる費用 およそ500万円を このサービスを利用して集めた。コロナの渡航制限が緩和されたのに伴い、外国観光客の口コミで人気になった。

(藤沢)このサービスはこの番組でも前に取り上げた クラウドファンディングで、これから作りたいなって思うものと どうして これを作りたいかなというストーリーを発信して ファンになっていただいて 先にお金を頂く。金融機関に行っても売れるかどうか分からなかったら なかなか貸していただけないところを、先にお金を貸していただけるし、ちゃんと売れる先が決まるので 非常にありがたいサービス。

(所)これ 面白いですよね。クラウドファンディングで みんなが お金をば〜って出してくれるっていうのは。誰よりも先に 俺はここに投資してるからっていうのがね。

(秋元)クラウドファンディングをきっかけにして知ってもらうことを初めにすると、次の取引先が見つかったり新たな販路に繋がる。その呼び水という意味でも 活用できると思いますね。

悩める中小企業を支援しようという動き さまざま あるんです。
例えば20近い自治体が行っているのが「ビズモデル」、無料で地元の中小企業の相談に、公募された現役ばりばりのビジネスマンが乗るシステム。お金をかけず知恵やアイデアを使って 地元の中小企業を支えているんだそうなんです。

(秋元)僕 愛知県 岡崎市で企業を支援して、ここの地場産業は石材で墓石屋さんが100軒もある。墓石の売り上げが どんどん下がってきていた。今年 創業96年目の墓石屋が、墓石を作ったときに出る切れ端が お金を払って 回収してもらうごみになっているという相談だった。その切れ端でお皿を作れば、高級御影石で作ったオーダーメイドの器になる。このお皿 1枚 2~3万円で ミシュランの星付きレストランに 飛ぶように売れてます。売り上げ バ〜ンとV字回復しました。

「アトツギ甲子園」後継者が熱く実現したい未来を語る

「アトツギ甲子園」は、我こそはと思う全国各地の後継者が 新しいビジネスのアイデアを競う大会。プレゼンは4分間、審査員は経営者や専門家。審査員を務める経営者や専門家と真剣勝負が繰り広げられる。酪農家 4代目や食品加工会社 2代目 の女性が 実現したい未来を語る。
アトツギ甲子園の中心メンバー 一般社団法人ベンチャー型事業承継 山野千枝 代表理事は 後継者問題の起爆剤にしたいと考えている。
「これだけ 後継者がいない会社が増えているのは 若い世代が 家業とか中小企業を継ぐ人生にワクワクしていないから。そうじゃなくて 同じ世代でもワクワクしながら家業を継いで 自分らしく 新しことに挑戦する人がいることを知って欲しい。」
アトツギ甲子園に出場するためには 書類審査を通過し地方予選に出場。そこから勝ち上がったファイナリストが 全国大会に駒を進める。優勝者には 200万円の補助金を給付。さらに一流経営者が相談に乗り、世界的経済誌で特集を組んでもらえる。

今年3月3日 開催された第3回大会には 192人の後継者がエントリー。地方予選を勝ち抜いた15人が決勝に進んだ。
ファイナリストの一人 苗木生産会社 2代目 西野 文貴さん (株式会社グリーンエルム)
西野さんの会社があるのは大分県 日出ひじで、父が34年前に苗木の生産会社を設立した。苗木は都市再開発や商業施設の建設現場で使われるが、売り上げは 景気に左右され 経営が安定しない。そこで 西野さんは自分の会社オリジナルのビジネスを考案。大会に臨んだ。
ライバルは予選を勝ち上がってきたつわものぞろい。
・食品加工会社 2代目 の女性 ・福祉機器メーカー 2代目 男性 ・広大な森を所有する林業の後継者 田島さん ・印刷会社の3代目 三木さんのビジネスはギャンブル性を排除したオリジナルのトレーディングカードの開発。
西野さんは 環境保護に関心を寄せる企業と連携して 荒れた森を買い取り整備する 里山ビジネスを語り、最優秀賞に!

このアトツギ甲子園 これまで3回 開催され、出場者たちも さまざまな分野で実際に活躍。第1回大会で最優秀賞を受賞した 建設会社 3代目 鈴木宏明さん 廃校プールでチョウザメ養殖、今では キャビアの売り上げ 1億円に上っているそうです。審査員として参加されたこともある秋元さん、後継者の皆さんの頑張りっていうのはどう映ってますか?

(秋元)すごい熱くて、甲子園さながらですよね。大学の自分のゼミ生たちを連れて行ったら 「後継ぎ」格好いいと言い出した。「ああいうのを やってみたい」って。憧れをつくる場所っていう意味でも非常にアトツギ甲子園 効果発揮してると思いますね。

(藤沢)日本って世界の中で 100年以上続いてる企業の数が一番多い国。新しい第二創業 第三創業をやり続けてきたから、今 これだけ たくさんあるんですね。私たちが よく身近にしてるユニクロは もともと 町の紳士用品店だったですし、星野リゾートさんも 軽井沢に一軒だけある温泉旅館だった。それが後継ぎによって ああやって 大きなグローバルな会社になっていくのを考えると、全然チャンスは いっぱいあって。
(秋元)いや 僕 沖縄が好きすぎまして、泡盛の酒蔵が 蔵体験を募集してた。僕 ぽちっと押して行ったのを きっかけに仲良くなって、今では 僕 その酒蔵の後継ぎに出資をして 取締役になっちゃった。兼業や副業で後押しすることも 後継ぎ支援です。

▽まとめ&感想

黒字経営なのに後継ぎがいないため多くが廃業!
2年後 高齢化が進み 後継者不足で廃業 650万人職を失うといわれる。
新商品開発支援のクラウドファンディングで 白レザースニーカーなどヒット商品を生み出す。
「アトツギ甲子園」後継者が熱く実現したい未来を語る。