あしたも晴れ!人生レシピ★手軽においしく魚を食べたい!第2弾▽こんな話

Eテレ 2023.9.29
刺身用のマグロのさくを塩マグロに加工、和風、洋風、中華風レシピ☆
干物を使って焼かずにお吸い物・野菜炒め☆
鎌倉の買い物困難な住宅地に鹿児島から直送の鮮魚店、ウエカツさんの魚食普及への思いと活動があった。

手軽においしく魚を食べたい!第1弾 はこちら

【ゲスト】安めぐみ 【講師】上田勝彦
【司会】小澤康喬【語り】堀内賢雄

刺身用のマグロのさくを使った和風、洋風、中華風

手軽においしく魚を食べたい!第2弾 です。
ゲスト 安めぐみさんです。
「前回の サバ缶ウドン、サバ缶のパテ 実際に作って おいしかったです。見てたママ友とかから結構 反響がありました」
お教え頂くのは 前回と同じ ウエカツ こと 上田勝彦さんです。島根県出身。長崎大学水産学部に通いながら漁師として活動。その後 水産庁で魚の消費を拡大する政策や、漁師への技術指導などを行ってきました。早期退職し家庭でもっと魚を食べる機会を増やそうと 普及に努めています。

マグロに塩をまぶし 溶けてきたら流水で洗い流し 水分をふき取り 塩マグロに

刺身用のマグロのさくを使った意外な料理です。
マグロの赤身、値段は関係なく 上等なものでなくても スジだらけでも、もう赤かろうが ちょっと くすんでいようが関係ない。ちゃんとおいしくできる料理です。
まずは、マグロを流水でさっと洗い流し、水分を素早く拭きとります
この下処理をやっとくか やっとかないかで、全然 もちも 味も違います。

ウエカツ流の調理の第一歩。名付けて 塩マグロ、塩で水分を抜きながら汚れや臭みを取り除き うま味を閉じ込めます。
粗塩をマグロにまぶします。この塩の量を見ると塩分を気にしてる人は わ〜って顔をしかめますけども、味付けのための塩ではなく、さくに含まれている水分などを外に出してうまみを閉じ込めるものです。すり込んではダメ すり込めば塩分が入ってしまうので まぶす感じです。塩粒を見ていて、だんだん表面が じくじくじくと 塩粒が溶け始めたら洗い流して拭く。これはどれくらいの塩を当てて何分おけばいいもんじゃない。例えば水っぽい肉質のマグロもあれば、部位によっても違うし 種類によっても違う。漁場によっても違う。季節によっても違う ってことなんで、そういう面倒くさいことは考えなくていいと。

和風 「マグロの酢じめ」

酢(米酢・穀物酢など)をパットに少量入れ、塩マグロ浸す。キッチンペーパーをかぶせたら、さらに酢を振りかけます。しばらくすると表面が白くなってきます。まんべんなく白くなったところで出来上がりです。
魚種や部位によって つける時間は微妙に変わります。今回は およそ30分つけておきました。
今回は薄く切って、生ハムのようになりました。

洋風 「カルパッチョ風」

まずは たまねぎをスライスして 水にさらします。さらす時 1回目 水が濁るから捨てる、2回目も たぶん濁るので捨てる。水が透明になったら さらします。最初から濁った水の中に入れるとたまねぎのアクが元に戻っちゃう。塩マグロは 今回は縦に半分にしたあと そぎ切りにして 味がなじむようにしました。たまねぎとマグロにレモンをしぼって、粗びきこしょうを適量加え、オリーブ油をかけるだけ。とにかくね ごちゃごちゃ やんないほうが 魚はおいしい。オリーブオイルが塩マグロをさらに濃厚な味にしてくれます。

中華風 「長ネギと生姜で」

味付けは しょうゆを少々と トーバンジャンを混ぜ、そこに切った長ネギ生姜を混ぜます。中華風は主役のマグロの食感を楽しむために少し厚めに切ります。あとは切ったマグロと具材を混ぜて、仕上げにごま油を少量加えます。

最高傑作の1つと自画自賛する「マグロの冷やしすまし飯」

まずは塩マグロを作ります。まんべんなく塩をまぶすため、切ってから塩をまぶします
「目安はまんべんなく塩粒が絡まるくらいの量。最初は少し入れて 一気にやらない。これの特徴は洗い流さない
この塩自体が調味になります。マグロに塩がなじむ間 お湯を沸かし昆布で出汁をとります。出汁が出たら昆布を取り出して、マグロは切り身が くっつかないようにほぐしながら入れます。臭み取りに 長ねぎの青い部分を入れます。強めの中火で切り身が崩れないようにコトコト煮ます。
「最初に出るのは ちょっと色のついたクリーム状のアク、次に白いクリーム状のアク、3回目に出るのは白いサラッとしたアクはとらなくていい。あくを取っていくと 白濁した色から 透明感が出てくる。そうすれば中まで火が通ったサイン、それ以上煮る必要がない」
作った塩マグロの出汁を氷水で冷やしながら 塩を加えて味を調えます。ウエカツ流の調味料は目分量、味見をしながら調えてください。最後に風味付けで 薄口醤油を少々加えます。
温かいご飯に出汁をかけ マグロの切り身を乗せる。「マグロ冷やしすまし飯」の出来上がり。細ねぎを散らして 氷も浮かべてみました。

(安)すごい新鮮な出汁を感じますけど 濃厚な感じがありますね。
(上田)透明感のある す〜っとうまみが伝わってくる 通り抜けていくような うまさだね。
(安)やわらかいんですよ。冷えてるのに すごい ふっくらしてる。塩マグロのよさってどういったところですか?
(上田)マグロのうまみに塩味が入ってるわけですから、もう切っただけで そのまま生ハムみたいにも食べられるし、加熱してさっきのおつゆの出汁にもできる。アジアンテイストもあるだろうし、自由自在に変化していくわけです。塩だけだから魚の個性がよく味わえます。

干物を使って焼かずに調理

アジの開きで お吸い物

アジの開きの表面に付着した汁 にじみ出た血など、流水でさっと洗って拭いておく。これだけで表面の酸化した脂とか 血の生臭さが取れます。ハサミで身をタテに半分に切ったら、ゼイゴ(尾の近くのトゲ状のウロコ)を包丁でとる(包丁を寝かせて 前に出す時に切る。包丁の扱いに注意)。
ハサミで身を食べやすい大きさに切る。尾びれや背びれなども切り取る。にんじんを千切りにします。野菜はお好みで何を入れてもOKです。これは水から煮ていきます。塩がしみこんで相当時間がたっているので 出汁が出るのに時間がかかるためです。
水に少量日本酒を加え アジとニンジンを入れ、中火で沸騰するまで待ちます。アクが出たら取りましょう。透明になったら身に火が通ったサイン。洗った小松菜は ねじりながら切って入れます。出汁をよく しみこませるためです。最後に適量のと しょうゆで味を調えれば、アジの干物のお吸い物の出来上がり。アジのうまみが しっかりしみ出ているのに あっさりした味わいがあとを引く一品です。

サバの一夜干しで 野菜炒め

サバの一夜干し。別に塩サバでも構いません。コツさえつかめば 野菜炒めをおいしく作れます。まずは お約束の流水で洗って水分をよく拭きとります。余分な所 えら蓋の部分・腹の骨も そぐように切り取ります。包丁が透けて見えるように動かして あばら骨を切っていきます。身の真ん中にある骨もとっていく。身を縦に4等分したら棒状に切る。なぜかというと魚の筋肉の繊維は縦に長いので ばらけない。
入れる野菜は お好みで何でもOKで、たまねぎ にんじん ピーマン キャベツを使います。まずはフライパンに油を引いたら 魚を 皮から焼くと仕上がりが香ばしくなる。
実は野菜炒め家庭の火元ぐらいでは 水っぽくなっちゃう。むやみに混ぜずに しばらく放っておくのがウエカツ流の野菜炒め。これを3〜4回 繰り返したら、ちょっと蒸してあげる。これでサバから 塩気のある出汁が出てきて、味付けになる。流れるくらい水滴がついたらフタをとり、風味付けで薄口しょうゆを少し加えて炒めたら、サバの干物の野菜炒めの出来上がり。ぎゅっと詰まった干物のうまみが野菜と絡まった一品です。

アジの開きの お吸い物の試食です。
(上田)干物の香りがするでしょう。
(安)すごくします。干物って焼く以外にやったことがなかったので こんなお吸い物として使えるんですね。頂きます。
(上田)干物にした時の出た出汁の香りが ひなたくさい お日さんの匂いが ちょっと感じられるような良さがありますね。キンメの開きで吸い物やっても大変おいしい。

続いては サバの干物の野菜炒め。
(安)出汁が すごく野菜にちゃんと絡まってて。
(上田)肉野菜炒めみたいにガツンと来る味じゃないけど 野菜が魚の出汁によってすごくおいしくなってる。これ以外にも例えば サバとよく合う香りとは、クミンシードとか フェンネルとかハーブ類もちょっと入れてあげると変化がつく。
今日の料理 共通してるのはキーワードって「塩」じゃないですか。塩マグロも 干物だって塩でしょ。出汁 力があって塩味がちょうどよかったら、成立するんですよ食卓というのは。
(安)我が家も冷凍でも結構 ストックしてるんですけど 冷凍干物でも大丈夫ですか?
(上田)冷凍の場合は 水道から出るお湯で ゆっくりめに洗ってあげて拭くと 汚れが ちゃんと取れます。自然解凍して完全に解凍してから使ったほうがいい。

ウエカツさんの魚食普及への思いと活動 鎌倉の住宅地の鮮魚店

上田さんは50歳で早期退職をされまして その後 多くの人に魚を食べてもらうための活動を始められました。その新しい道に踏み出された。
「水産庁にいた時代に 僕が最終的に感じたのは危機感だった。日本は 自分たちの海から取れる食から料理できないとかで 離れてきてると思った、自分たちから 自力で得られる食べ物を 捨てている
その後 多くの人に魚を食べてもらうための活動を始められました。

上田さんは調理法だけではなく、漁師や鮮魚店などにアドバイスも行っています。
神奈川県鎌倉市今泉台上田さんがアドバイザーを務める 鮮魚店「サカナヤマルカマ」は 2023年4月にオープンしたばかりで、新鮮な魚を求めて地元の買い物客でにぎわいます。
そもそも 鹿児島の阿久根あくね水産業者と、おいしい魚を日常的に食べたいという鎌倉の住民とで作った。東シナ海に面した阿久根市は水産業が盛んな場所だが、近年は後継者が不足で、若い世代に漁業に関心を持ってもらうためにも 阿久根の魚を全国に知ってもらう必要がありました。
一方 鎌倉市 今泉台は 鎌倉で高齢化率が高い地区で、商店の相次ぐ閉店によって買い物に困る人たちが多くいました。2つの地域を結び付けて改善のきっかけになればと始めたのが この鮮魚店です。

実は この店で働く人たちは、主婦・大学教授・ファッション業界で働く狩野真実さんとか。
そこで頼ったのが、上田さんでした。
開店するまでに ウエカツさんから 魚についての知識や下処理の方法を徹底的に教わりました。教わったのは実技の指導だけでなく、販売するうえで必要な知識を講義形式で学びました。
魚という水産物は、数少ない自給率の高い食料です。
店長 田島幸子さん
ウエカツさんは厳しいです。何を言われようが食らいついていくしかないんですけれども。「頑張りま〜す」なんて言うと「頑張りま〜す なんて言う人に頑張った人は見たことない 」とか言われる。
壁に掛けられた店のポリシー (魚を通じ産地と消費地をつなぐ・魚の知識やおいしく食べる技術を伝える・丁寧な仕事で魚の全てを無駄なく生かす・環境に配慮し簡易包装を心がける)、そこには ウエカツさんの教えも記されています。

店には魚と一緒に総菜が売られています。この日は キビナゴの姿揚げやブリ大根などが並んでいました。魚の全てを無駄なく生かすという思いが込められています。
人気のすり身揚げを作っている西野さんは有名ホテルの調理場に勤めていました。
(西野)ここで働こうと思った訳は、自分の中で魚をもうちょっと専門的に学びたいなって思ってたところに、この店の話があって。ウエカツさんが すごい背中を押してくれて親身に話を聞いてくれて。僕の作ったもの「おいしいから大丈夫だよ」って言ってもらえるとすごい自信になるんで。

地元や各地の魚も販売し魚の魅力を伝えることも始めました。ウエカツさんの目にはどう映っているのでしょうか。

(上田)最初は どうなるかなと思ったけども、飲食やってた人は総菜作りが上手だったり、大学の教授だったら全体を見渡して 発信のしかたとか分かってるわけですよね。単に魚を売るだけということよりも幅が出てきた。いろんなお客さんにも対応できる。
このスタイルというのが実は重要で、産地と消費地 一緒になって店を作るという。で さっき書いてあったポリシー、3つぐらい 合わさると僕が今まで見てきた こういう魚屋あるといいなというイメージに すごく近くなるんです。

今も お店には足を運ばれますか?
(上田)大体 水曜日と土曜日まあ 本業もありますから。

この先は ウエカツさんは どういったことを目指していかれるんですか?
(上田)僕 今年で もう58だから、自分だけじゃなくていろんな仲間たちが体験してきたことを 次の世代の水産業に関心を持てるような形にしたいですよね。生き生きとした若者たちを 世に出していけたらいいなと思ってますね。今 きっと出ますよ。SNSが得意だでも いいわけですよ。それで水産業に寄与してくれる若者たち 時代に合わせた水産業者を 育てるお手伝いをできたらいいなと思いますけど。

▽まとめ&感想

刺身用のマグロのさくを塩マグロにしたレシピ 是非作って食べてみたいです。
干物を使って焼かずにお吸い物・野菜炒めに、苦手な魚をさばかなくてもできます。

庭のペンタス