NHＫ総合 2021.6.24放送
新型コロナで がん検診控えが起き 受診者3割減って早期がん見つけられずにいる。皆さん健診は大事です。最新のがんのリスクの発見法 線虫･涙･唾液･チップがあり 手軽に高確率で 場所は特定できないが可能に。ガンになった人 職場の気遣い重荷で料理教室に参加 がん患者達と出会い救いになっている
【司会】所ジョージ，木村佳乃，庭木櫻子
【出演】澤口俊之，牛窪恵，ヤマザキマリ，伊藤海彦【語り】吉田鋼太郎
新型コロナで がん検診控えが起き 受診者3割減 早期がん見つけられず
先月 放射線治療の専門家から 恐ろしい情報が飛び込んできた｡
がん医療に取り組む、東京大学医学部附属病院 中川恵一特任教授
「これから 恐らく、今年の末とか 来年 進行がんが増えてしまう。」
なんと 日本人の死因トップである がんの患者数が 急増するおそれがあるというのだ｡
中川教授「新型コロナによって がん検診控えが起きている。これが本当に大きな問題」
がん検診とは胃がん 肺がん 大腸がん 乳がん 子宮けいがん この５つのがんに対し、内視鏡検査など 国が科学的に有効性を認めた検査を 定期的に行うもの｡
２年前は 567万人いた がん検診の受診者数が 去年は ３割も減少｡
中川教授「その結果、万単位で 早期がんの患者が 見つからなくなる」
聞けば がん細胞は、10年から20年かけて１cm程度に成長し、その後１～２年で ２cmまで大きくなる｡
この期間は 自覚症状がないことが多く 検診を受けないと 見つかりづらいという｡
中川教授「症状が出たら進行がん 。絶好調であっても症状が全くなくても 定期的に検診していただくしかない」
さらに、新型コロナが癌に与える影響はもう一つ
中川教授「中咽頭癌と言って扁桃腺あたりの ガンの患者さん」と見せてくれたのは 70代男性の首の断面を写したＣＴ画像｡
「ここにですね ソラマメみたいに見えているのが 咽頭癌」
新型コロナが流行する前の 2019年12月に ２cm弱の早期がんが 見つかった｡
しかし、受診控えされて病院に来なくなってしまった。
当時は 不要不急の外出を自粛するよう 強く求められていた時期｡
そうした事情もあってか 男性は病院に通うのを控えてしまったのだ｡がんよりコロナの方が恐かった。
がんが見つかってから ８か月後｡
首の腫れが大きくなったと男性が再び病院を訪れると がんの大きさは およそ３cmに成長していた｡
中川教授「2センチと3センチと比べると 再発のリスクが上がったのは間違いない 」
幸い 今は快方に向かっているが これ以上遅れていたら 危険な状態に陥っていた可能性もあったという｡
「コロナが怖いのはよくわかります。 病院ではこの対策を十分にしているので 異変を感じたら病院に行っていただきたい。病院側もそれを望んでいる。」
ということで 今日は、日本人の二人に一人がかかると言われる病気、がんについて深掘り
(所) 癌があるのが分かっていても 病院に行くのが怖いという人がいるんですね。
(木村)最初の緊急事態宣言の時は スーパーマーケットに行くのも、3日に1回にしてとか、本当に外出しないでくれという感じでした。
(牛窪)日本のがんの死亡者数の推移なんですけれども、右肩上がりに増加をしてるんですね｡
2019年には およそ37万人もの方が がんで亡くなってまして｡
30年以上にわたって日本人の死因のトップの病気 っていわれてるんですよね｡
死亡者数を減らすのに有効とされるのが がん検診、厚生労働省の調査によると がん検診の受診者数を増やせば死亡者数を減らすことができる。
こちらは 発見が遅れれば遅れるほど 死亡のリスクが高まる乳がん｡
検診率｡(50～69歳)
日本 42.3％｡アメリカは 80.7％｡
日本はですね ＯＥＣＤに加盟している国の中でも 最も低いレベル｡
その理由、多かったのが ｢時間がありませんよ｣と｢健康に自信があります 私は｣と｡
(所)何か 症状出ないとさなかなか こう…。歯だって 痛くならないと 歯医者 行かないじゃん｡
前もって 歯医者さん行って ちょっと診てくださいって なかなか ないからね｡
【最新】がんのリスクの発見に 線虫 涙 唾液 チップ
最近は 手間をかけずに ガンのリスクを見つけることができる方法があります。
まず このシャーレの上に何かありますね｡
実はですね こうした 糸くずのようなもので がんのリスクが分かると｡
訪ねたのは 神奈川県 藤沢市にある研究施設｡
フランス人の エリック デルクシオ博士に見せてもらう｡
シャーレの上には 確かに糸くずのようなものが｡
これは ｢線虫｣で、細長い糸状の生き物の総称で その数 100万種類を超えます｡
魚に寄生するアニサキスもその一種だ｡
検査に用いるのは、シャーレと線虫と 尿1滴。
すると がん患者の尿の場合 たくさんの線虫が 尿に引き寄せられていくのが 分かるだろうか？
一方 がんに かかっていない人の尿には 線虫が ほとんど近づかない｡
線虫を使ったがんリスクの検査法を 確立した 広津崇亮さん(HIROTSUバイオサイエンス)に話を聞く｡
「私はもともと医者ではなく｢線虫｣の嗅覚の研究者だった。ガン探知犬がいると聞いた時 ｢線虫｣もいけるんじゃないかと思いついた」
男性は もともと Ｃ.エレガンスという 線虫の一種を使って、生物が 匂いを嗅ぎ分けるメカニズムを研究していた
「ここがですね 鼻先なんですよ｡ニオイを受け取る 受容体。受容体の数が 犬が800個ほどで 線虫が1200個持っている。」
この線虫が 犬より優れた嗅覚を 持っていることに注目｡
試しに がん患者の尿に近づけてみたところ、胃がんや肺がんのほか 早期発見が難しい すい臓がんなど
15種類のがんに反応したという｡
臨床実験を繰り返し 去年１月に実用化に成功｡１回１万円(11,550円)ほどで検査ができる｡
ただし 感度は86.3％｡がんの種類までは特定できないという｡
ほかにも、唾液から肺がんなど ５種類の がんリスクを調べる検査｡
感度は70％ですでに実用化されている｡
さらに 涙から乳がんのリスクを判定する検査も研究が進んでいる｡
手軽な方法にもかかわらず99％の確率で判定できる研究まであるという｡
ディレクターが訪ねたのは 神奈川 川崎市 大手電機メーカー TOSHIBA｡
研究開発本部 橋本幸二博士
【こちらにありますチップを使って測定します。私どもの 得意とする半導体を作る時の技術を流用して 製造したものです」
聞けば 検査に必要なのは 血液1滴｡血液から抽出した 血清と試薬をチップに注入。
専用の分析器にかけると 40分でがんリスク判明する。
「ガンが発症すると血液中にマイクロRNAが分泌されて 増える。それの多いか少ないかを電気的に識別する」
マイクロRNAとは遺伝子発見を調整する分子。
最近の研究で がんが出来ると 血液中に増えることが分かっている｡
この特性を利用しこちらの会社では がんの種類は 特定できないものの 13種類の がんリスクを 極めて高い確率で 判定できる装置を開発している｡
「まだ研究段階であるんですけど、なるべく早く、がんにかかっていることを発見して その後の治療につなげていくことが重要と思っている。」
国立がん研究センターの若尾文彦医師によると 手軽ながん検査、国が有効性を認めているがん検診を受けた上で利用を考えてほしいと｡
やはり がんのリスクは分かりますけども、どこのがんかっていうのは分からないんです｡
あくまでもこのがん検診を受けることが基本と…｡
(所)でも 手軽ながん検査をして それから調べに行ってもいいよね｡
(牛窪) 先ほど がん検診の受診率 世界的に低いっていう話があったんですが
実はですね 受診率をあげようと 変わった取り組みが始まっています
自らのがん体験を語るこちらの女性｡聞いてるのは なんと小学生です｡(埼玉 行田市立泉小学校)
５年前から 5.6年生対象にがん教育の 特別事業を行っています。
「家に帰ったら お父さんとお母さんに がんの検診大事だよと言いたいです」
こうした授業を行う自治体は ここ数年で増えているそうです｡
(所)｢検診行って｣って言われたら 何か 俺のこと考えてくれてるのかなと 思うもんね｡
ちなみに こうした取り組みを行っているのは、小学校だけではなくて 調べたところ 今年度からは
中学校の保健体育でも がんの授業が必須化されました｡
やっぱり 国もですね 教育を通して がんの予防とか がん検診の受診率を上げようっていうことなんですね｡
(庭木)私は この前 祖父が がんになったんですよね｡
それで 自分はがん家系ではないと思ってたので すごく驚いたというか びくってしたんですよ｡
(澤口)認知症の大部分を占めている アルツハイマーの場合 遺伝率は 60％ないし 80％あるといわれてるんですけども,がんの遺伝率は 多くても60％で 大体20％から30％程度なんですよ｡
逆に言えばがんは予防できる病気なんです。
澤口先生は何か がん予防になることやっていらっしゃるんですか？
(澤口)やってますよ｡緑茶飲んでます。 台湾の研究によると １日 最低１杯の緑茶を飲む人は 全く 緑茶を飲まない人に比べて 肺がんになるリスクが ５分の１になるとも いわれています｡でも 検診行ってください。
(ヤマザキ がんは英語で[cancer] イタリア語で[cancro]
どちらも ｢がん｣という意味のほかにもですね 星座の｢かに｣ 、かに座の｢かに｣ですね｡
という意味でも 使われているんですよ｡
最初にがんを｢かに｣と例えたのは、医学の父と呼ばれる 古代ギリシャの医師のヒポクラテスだと
いわれております｡
というのも 乳がんが カニの足のように 広がりを見せていたことから カニのようだと称されるようになった。2000年以上たった今でも 使われている。
ガンになった人 職場の気遣い重荷 料理教室で がん患者達と出会い救いに
１年間で 日本で がんと診断される人…約97万人。
がんとですね 診断されると、本当に治るのかとか いろいろ この先の人生のことが 非常に気になって
不安になってきますよね｡
今回 いつ亡くなってもおかしくないと 宣告されながらも、現在経過観察中のがんサバイバーの生活に密着しました。
都内で暮らす 山口秀司さんと真弓さん夫婦｡
秀司さんは ５年前 47歳の時、がんを宣言されました。
「私は 脳腫瘍で1番悪性の強い(グレード4)でした」
そう言って 秀司さんが見せてくれたのは 当時 撮影した脳のＭＲＩ画像｡
右前頭葉に テニスボールよりも大きな腫瘍が 写っている｡
半年近く 頭痛が治まらなかったため 病院で調べてもらったところ 見つかったのがグリオーマと呼ばれる脳腫瘍の一種。緊急手術が行われた｡
「もう余命は2年、とったとしても2年は持たないだろうから 死ぬ準備をさせて下さい と」
「先生がどういう告知をされて どういう説明されたのか 私は記憶がないです」
手術は 無事 成功したものの、腫瘍を完全に取りきることは難しく 抗がん剤と放射線治療を続けることになった｡
その間 夫婦が悩んだのは これからの生活についてだった｡
「主人の両親も含めて 実家に連れ帰って 後はひっそりと命尽きるまで 四人で静かに暮らそう っていうふうなほうに頭は いってたんですけれども｡」
「それなりに仕事を一生懸命してきたつもりなんです。だから仕事に対して もっと頑張りたい。その会社が好きでしたからも 戻れるなら戻りたいし」
大学卒業後 20年以上 大手建材メーカーで 総務の仕事をしていた秀司さん｡
仕事一筋で人間関係は職場中心だった｡
手術から1年3ヶ月後 、幸い がんが再発することはなく 職場復帰を果たすことができた｡
「会社に 私はこういう病気で と言わざるを得ませんので、そうすると周りが気遣うわけですよね。その気遣いが逆に重かったり しんどかったり お互いにですね」
以前のような前向きな気持ちでは 働けなくなってしまったという｡
そんな秀司さんにとって 転機となった場所が 料理教室です｡
「とても楽しいと言うか 嬉しいと言うか 気持ちが楽になる場所」
案内されたのは がんになってから通うようになった 料理教室｡
出迎えてくれたのはがん患者 キャンサーサバイバーです。
名付けて がんクインテット｡
聞けば ５人全員 がんサバイバーだという｡
「大体ガンばっかりだもん。ここに出てくる人 病気でないと こないから」
ここでは自分の病気をオープン にできます。
「私はガンよ」「あなたは何？」と紹介するようにね。
ここでは 脳腫瘍の山口さんでわかってもらえます。
こちらは 玄米菜食などを中心に 教えてくれる料理教室｡
ここで ほかの がんサバイバーと出会ったことが秀司さんの救いになった｡
「ガンの患者さんばかりだねと 笑いながら話すこともある。それで つながりが出来る｡ まあ そういう意味では心のよりどころです」
職場と違い 病気の負い目を感じない人間関係に 気持ちが前向きになったという｡
さらに これまで仕事一筋で 特に趣味がなかったという秀司さんだが、がんをきっかけに サイクリングや農作業など 夫婦で 積極的に 新しいチャレンジを始めた｡
今年３月には 会社を早期退職した秀司さん｡
夫婦でカフェを開きたいと夢みている｡
取材の終わり がんサバイバーになって一番伝えたいことを聞いた｡
「ちょっと 変な言い方かもしれませんけど 私は癌という病気になってありがたかったと思います。がん患者になって新しい道と言うか 病気にならないと わからなかった道と言うかですね、そういうものを見つけられた方が 絶対長く頑張れると 思います。だからあまり気負わずに 気楽に行けたらいいと思います」
(所)いいお話でしたね｡ 余命２年って言われると もう がくっと くるよね｡
そこで やっぱり ああ もういいやとか どうでもいいやってなる人もいるし｡
(木村)そうですね｡ しかも お料理して 楽しそうでした。
(所)本当にすてき これ｡ このお話｡
がんサバイバー同士の交流について、国立がん研究センター ガン対策情報センター長 若尾文彦 医師「同じ体験をした 仲間が お互いを助け合うことを ピアサポートといいます。仲間を支える活動が 本人にとって非常に有用であると いわれてます」
今 がん相談支援センターという無料の相談窓口がありますので、そちらに｢患者さんと語り合うことができるような場は ありませんか？｣と聞いていただければと思います｡
(所)だから もう 笑顔がずっと 命を続けるんじゃないかと思う。
(ヤマザキ)がん患者が集まる コミュニティーっていうのは実は イタリアにもございまして｡
私も参加してますけど 普通の健常者もたくさん参加していて みんなでワイワイ過ごす。自分が かかったときに こういう所に 行けばいいんだっていう 安心感にもなるし、やっぱり こういうコミュニティーがあるっていうことで結構 力になってるというのはありますね｡
でも イタリアの場合だとね さっき、気を遣われるって あったじゃないですか｡
イタリアだったら 気を遣われると もう存分に気を遣われたのを受け止める｡
｢ありがとう！ じゃあ 先に帰るよ｣ みたいな感じだと思う｡
▽まとめ&感想
新型コロナで がん検診控えが起き 受診者3割減って早期がん見つけられずにいる。皆さん健診は大事です。最新のがんのリスクの発見法 線虫･涙･唾液･チップがあり 手軽に高確率で 場所は特定できないが可能に。ガンになった人 職場の気遣い重荷で料理教室に参加 がん患者達と出会い救いになっている。
がん 年間 約100万人ですか？
私も 去年検診を勧められたが、 コロナの中 大きな病院にいって ああだこうだと検診を受けるのが 億劫で行かずじまいでした。
がん患者同士の集まり、そうですよね。
