NHK SP 食の起源第 3集 食の起源 第3集「脂」発見!人類を救う“命のアブラ”
NHK総合 1月12日(日)午後 9時00分~ 午後9時50分
【司会】城島茂,国分太一,松岡昌宏,長瀬智也,近江友里恵
【出演】小芝風花,宮城大学食産業学部教授 石川伸一
朝イチでも特集が組まれていました。
“アブラ”のうち「オメガ3脂肪酸」が重要で、 動脈硬化を抑え、心筋梗塞や脳梗塞の原因となるのを防ぐ。
とり方を誤ると、私たちの健康に害を及ぼす恐れのある“アブラ”。3500年前のエジプトのミイラからも、脂の摂りすぎによる動脈硬化が見つかっている。一体、どんなアブラを、どんな割合で摂取すればよいのか?鍵を握るのは、「オメガ3脂肪酸」と「オメガ6脂肪酸」の比率。最新の研究でわかってきた「アブラの真実」をご紹介する。
出典:NHK HP
北極圏のイヌイットはアザラシの肉(大量のアブラ)を食べる
第3回のテーマは「アブラ」。とり過ぎると体に悪い、イメージだが、実は、さまざまなアブラの中に「人類がそれなしには生きられない“命のアブラ”」があるというのだ。
日本からおよそ9000キロ離れたカナダ 北極圏。
狩猟生活を続けてきた、先住民族イヌイットが、よく食べているのは、分厚い皮下脂肪に覆われたアザラシの肉だ。この「大量のアブラ」が、イヌイットの人たちにとって何よりのごちそう。じつに摂取カロリーのおよそ7割がアブラだという。
普通そんなにたくさん、アブラをとったら、血液はドロドロになり、心臓病や動脈硬化を招いてしまう。
生理学者のヨーン・ダイヤベルグ博士は、健康のカギを握るのが「オメガ3(スリー)脂肪酸」というアブラの成分で、あることを、見つけ出した。
「1日およそ14グラム、日本人の10倍近くオメガ3脂肪酸をとっている。」
「オメガ3脂肪酸」の働き
私たちの全身の細胞は、すべて「アブラの膜」で覆われている。オメガ3脂肪酸は、その細胞膜の材料に使われている、特別なアブラのひとつだ。
ここで重要なのが、オメガ3脂肪酸が“曲がった形”をしていること。
細胞膜は、拡大すると、真っ直ぐな棒状の物質が、ぴったりくっつき合って、丈夫な膜を形作っている。
ここに曲がった形の、オメガ3脂肪酸が、入り込むと、接触部分が少なくなるため、摩擦が減って動きやすくなり、細胞膜が、柔軟に変形しやすくなるのだ。
私たちの健康にとって、この「細胞膜の柔軟性」は非常に重要だ。血管の細胞に、オメガ3脂肪酸が多いと、血管はしなやかに伸縮して血流を良くしてくれる。
血液中を流れる赤血球も、通常は円盤のような、形をしているが、細い血管を通る際は、柔らかく折れ曲がることができ、血液の流れが、サラサラになる。
オメガ3脂肪酸を、多くとっていると、全身の細胞がしなやかになり、血液循環が健やかに保たれる。そのため、動脈硬化や心臓病などになりにくいと考えられるのだ。
知性など高度な脳機能に関わる部分に、オメガ3脂肪酸が密集している。
オメガ3は、そこで脳の神経細胞を形作る、材料にも使われており、神経細胞同士が、柔軟に変形してつながり合い、高度な情報ネットワークを生み出すのを促していると考えられている。
「私たちの体には、数十兆個の細胞があると言われてます。細胞の柔軟性に、オメガ3脂肪酸は関係して、動脈硬化や認知症の予防に有効。」(石川教授)
6億年前、 地球の生命はまだ海の中で暮らしていた
6億年前、地球の生命はまだ海の中で暮らしていた。
海底に生える藻などは、じつは体の中に、特別な遺伝子を持っていて、「自分の体に必要なオメガ3脂肪酸は、自分で作り出す」ことができていた。
海藻などを食べ始めると、オメガ3脂肪酸が体内に取り込まれるようになり、オメガ3脂肪酸を生み出せる遺伝子が消えてしまった。
小さくて弱い動物は海藻などを食べて、オメガ3脂肪酸を手に入れた。その動物を、より大きな動物が食べて、オメガ3脂肪酸を一挙に獲得。
現代の海の中でも、マグロのような強い魚は、小さな魚をたくさん食べて、それをさらに獲って食べているのが私たち人間。私たちは、貪欲にオメガ3脂肪酸を食べることで、健康を維持している生物なのだ。
“命のアブラ”オメガ3脂肪酸が人類を絶滅の危機から救った
人類誕生の地・アフリカ大陸の最南端にある、岩だらけの岬ピナクル・ポイント。岸壁に並ぶ洞窟で、およそ16万年前から、人類の祖先が集団で暮らしていた、痕跡が発見された。
およそ7万4千年前に起きた「巨大噴火」。発見された火山灰を詳しく分析すると、9000kmも離れたインドネシアのトバ火山から噴き出したものであることが分かった。
想像を絶する巨大噴火で、莫大な量の噴出物が、長期間太陽光を、覆い隠し続けた。
その結果、地球の平均気温は12度も低下し、「火山の冬」と呼ばれる、急激な寒冷化が起きた。
多くの動植物が死に追いやられ、アフリカ中に広がっていた人類の祖先も、食糧難で絶滅の危機に追い込まれた。
アリゾナ州立大学人類進化研究所のカーティス・マレアン博士
噴火後に襲った「火山の冬」の食糧難時代の地層から、祖先たちが食べていた、ウミガメの骨、クジラの体にだけ付着するフジツボが見つかった。
今も岩場に、大量のムール貝が付着している。巨大噴火の難を逃れた「海の幸」を食料にして、祖先たちは命をつないでいた。
「手に入る食べ物に、人が生きていくために欠かせないオメガ3脂肪酸などが豊富に含まれていました。そんな幸運に恵まれて、海辺に暮らしていた祖先はどんどん子孫を増やして繁栄できたと考えられるのです。」(マレアン博士)
発掘調査から、火山の冬を乗り越えた祖先たちに、高いな知性が芽生え始めていたことが分かってきた。
巧妙に穴が開けられた小さな貝殻は、ひもを通して首飾りにしていたとみられる。化粧に使ったと思われる、赤い石を粉にした顔料も見つかった。
オメガ3脂肪酸は、私たちの脳の神経細胞をしなやかにする材料だ。高度なネットワークを急速に発達させることができたと考えられる。高い知性と文化を生み出す原動力になった可能性がある。
「命のアブラ」で知性の大躍進を遂げた海辺の祖先たちは、やがて、アフリカを出て、広い世界へと進出していった。現代の私たちは、その子孫だと、マレアン博士は考えている。
私たちの脳は、母親の胎内にいるころから、脳を形作る材料として、大量にオメガ3脂肪酸を必要としている。母乳にも、母親の体に蓄えられた、オメガ3脂肪酸がたくさん溶け込んでいる。
子孫を残せた祖先が食べていたものの中にオメガ3脂肪酸 が多く入っていた。
鯨、魚、貝、ウナギ、骨髄、クルミ、昆虫、グリーンナッツ、アザラシ、テンジクネズミ
自然淘汰されていった。
もうひとつの重要なアブラ オメガ6脂肪酸
オメガ6脂肪酸の重要な働きは、ウイルスや病原菌などから体を守る役割。病原体が血液中に侵入すると、オメガ6脂肪酸が白血球に、いわば「攻撃指令」を出す働きをし、病原菌への攻撃を促す仕組みがあることが分かってきたのだ。
オメガ6脂肪酸は、揚げ物などによく使うサラダ油の他に、鳥肉・豚肉・牛肉のアブラに多く含まれている。
マウスを使った実験で、体内にオメガ6脂肪酸を一気に増やすと、白血球への攻撃指令が過剰になり、ついには白血球が、自分の体の細胞まで痛めつけてしまう。
オメガ6脂肪酸による“暴走状態”を抑えるのに役立つのが、オメガ3脂肪酸。オメガ6脂肪酸の過剰な攻撃指令にブレーキをかけ、白血球の暴走を鎮める、働きもしている。
このオメガ3とオメガ6の、量のバランスが崩れてしまうと、私たちの命にも関わる。
福岡県久山町で、40歳以上の町民3千人を対象に、血液中のオメガ3とオメガ6の割合を、詳しく調査したところ、心臓病などによる死亡率との間に驚きの関係が判明した。
オメガ3とオメガ6の割合が「1:1」から「1:2」までの間は、心臓病の死亡リスクは低いまま。ところが「1:2」の割合を超えてオメガ6のほうが多くなると、急速にリスクが高まっていくことが分かった。
オメガ6 はおいしいので摂り過ぎている。食べ過ぎないように注意が必要。
ある日の食事。焼魚中心は、理想的。
とくに欧米型の食事が多い10~20代の日本人は、オメガ3とオメガ6の割合が「1:10」くらいになっている。
「理想のアブラ」は“自然の摂理”で決まっていた
穀物の多いエサで育った牛のアブラは、オメガ3とオメガ6の割合が 1:8~1:10。
牧草で育った牛のアブラは、オメガ3とオメガ6の割合が、どれもおよそ1:2。
動物本来の自然な食べ物を食べていると、体内のオメガ3とオメガ6の割合が、およそ1:2と理想的なバランスに保たれていることが明らかになっている。
メカニズムは、よく分かっていないが、どうやらそれが「自然の摂理」のようなのだ。
「文明の発展」が“理想のアブラのバランス”をおかしくしてしまった!?
人類とアブラの関係が大きく崩れ始めたことを物語るものが、3500年ほど前の古代エジプト時代の王族のミイラから発見された。およそ50体を調べたところ、半数から、現代病と思われていた「動脈硬化」が多数見つかったのだ。
記録によれば、古代エジプトの王族はグルメの極み。好物は、アブラののった羊や、わざと太らせたガチョウの肝臓。現代で言う、フォアグラなどだ。本来は草を食べる羊や鳥に、オメガ6脂肪酸が多い麦などの穀物を食べさせていた。同じ頃、 オメガ6が多い、ゴマなどの種の食用油を作り始めた。
家畜の餌、牧草で牛を育てているフランス。福島でも 、大変です。
中トロの1.2貫くらい摂れば大丈夫。
飽食の現代、新しい油の関係を築く必要がある。
まとめ&感想
“アブラ”のうち「オメガ3脂肪酸」が重要で、 動脈硬化を抑え、心筋梗塞や脳梗塞の原因となるのを防ぐ。オメガ6脂肪酸の重要な働きは、ウイルスや病原菌などから体を守る役割。「理想のアブラ」は“自然の摂理”で オメガ3とオメガ6の割合が「1:2」 が理想のバランス
思いがけない話ばかりで、とても面白かったです。
北極圏の人は、大量のアブラのアザラシの肉が、何よりのごちそうで、生活していること。
人類誕生の地・アフリカ大陸の最南で、貝などたくさん食べ、高い知性と文化を生み出す原動力になったこと。
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