Eテレ 2023.9.15
林香寺川野泰周住職の座禅会 姿勢と呼吸☆
呼吸のめい想&歩くめい想 体験☆
川野さんの日常生活 掃除・食事・趣味の時間 ☆診察の間に体を動かす☆
南房総市 癒やしの森セラピー ノラさんが体験
【ゲスト】平野ノラ 【講師】林香寺住職・精神科医 川野泰周
【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄
林香寺川野泰周住職の座禅会 姿勢と呼吸
住職で精神科医の川野泰周さんです。
情報が多すぎることによって脳を疲れさせているということは 医学的にも指摘をされている。そのことに本人が気付けないで 漠然とした体調不良を抱えているのでは。
横浜市にある臨済宗建長寺派 林香寺。川野さんは19代目の住職で、仏教と医学の側面から心の整え方を研究 実践しています。月に一度 一般の人に向けて座禅会を開いています。参加者は坐蒲と呼ばれる座禅用の座布団に向き合って座ります。川野さん自身が場を清め準備します。きちんと並べるのもめい想と思ってます。
座禅会はスライドを使った30分ほどの講義から始まります。
この日 参加したのは会社員や交流のある医療従事者な どおよそ30人。短い時間で座禅について理解を深めてもらえるよう 医師の視点を交え解説します。川野さんは精神科医としても不眠や不安などを抱える患者と向き合っています。
本堂で座禅が始まりました。座る時の姿勢、足は結跏趺坐という組み方。あぐらなど負担の少ない方法でも イスでも大丈夫。背筋をしっかり伸ばすため 両手を上げて手を落とした状態を維持します。手は右手の上に左手をのせて親指を軽くくっつけます。
始めに5分間 座禅に集中する時間。初心者におすすめは「数息観」という呼吸法。ゆっくり呼吸をしたあと回数を頭の中で数え それを繰り返します。意識を呼吸に集中します。呼吸が乱れたり雑念が浮かんだりしたら一から数え直します。目線は少し先の畳を見ます。目を閉じると雑念が浮かびやすくなるので うっすらと開けます。
短い時間の座禅を数回繰り返し、合間に感じたことを話します。呼吸に集中できなかったことに皆さん気付いたようですが、実はこれが第一歩。
次は15分間 集中が途切れたと感じたら 手を合わせ警策と呼ばれる棒で背中をたたいてもらい心をリセットします。姿勢を正し 呼吸を整え座禅をすることで心が整い 今の心の状態に気付くといいます。
さらに「歩くめい想」。息を吸いながら足を上げ 吐きながら下ろす。足の裏が地面についたり離れたりする感覚に集中します。なるべく 自分の足元を見ないで 少し前方のほうに視点を向け 足の感覚だけで床を感じてください。
(川野)大切なことは 呼吸をあるがままに感じ取ることで、自然に呼吸 空気が出入りしているということに意識を向けると 集中しやすい。あるいは 空気が出入りするというのを膨らみしぼみで感じるというのも 呼吸にフォーカスを当てやすい方法です。
呼吸のめい想&歩くめい想 体験
呼吸のめい想を スタジオで体験しながら お伝えします。
(川野)いすやソファーに少し背筋を伸ばして座って頂きます。背中が丸まらないように頭のてっぺんを 天井から1本の糸でつり上げられているようなイメージです。一度万歳をして 手が上に上がっていることを目で確認して、顔だけ前に戻してストンと手を落として頂くと 自然に背筋が伸びやすくなります。手のひらを上にして膝や ももの上に置くと 自然に胸が広がる状態になります。
目を軽く閉じたほうが集中しやすいと思います。そのまま自然な呼吸を続けながら その空気の流れを感じ取ります。具体的には鼻に出入りする空気を鼻の周りで感じる。空気が入ると体が膨らむ。出ていくと しぼむ。
(1~2分行う)。何度となく さまざまな考えが浮かんでこられているのではないでしょうか。
「あっ今 自分は別のことを考えていたな」と気付いて また呼吸に何度でも戻ってくるようにしてみてください。
歩くめい想 足がついたり離れたりする感覚を4つの言葉で 心で感じながら ゆっくり スローモーションに進んでいくというやり方を一緒に体験頂きます。
手を前か後ろで組んで頂いて、目線は数メートル先の床の辺りに落としておいたほうが 足の感覚に意識が向きやすくなります。どうぞ ゆっくりと足を上げてください。どちらからでも結構です。
かかとが上がる。つま先が上がる。移動する。着地する。今度 反対の足、かかとが上がる。つま先が上がる。移動する。着地する。
靴底を通して 床と足が接している感覚 離れていく感覚を 感じ取りましょう。途中で「これで いいのかな」とかいろんな雑念も浮かぶと思いますが そのつど 足の裏の感覚に意識を戻して頂く。 それが重要です。
今日は僅かな時間でしたけれどもお好きな身近な公園ですとか、海辺の浜辺で裸足になってとかいろんなロケーションで、このお散歩を用いるととっても豊かな体験になるんですね。
川野さんの日常生活 掃除・食事・趣味の時間 診察の間に体を動かす
(小澤)今だけに集中するというのは現代特有の難しさみたいなのを ある意味 解消することにつながるんでしょうか?
(川野)現代人の皆さん私も含めてですが どうしても いろんな仕事を同時に処理しなければいけない。これ脳内でマルチタスクが起こってる。シングルタスク 一つの対象に意識を向ける。体の感覚を通して マルチタスクの脳の状態をシングルタスクに切り替える。これが恐らく脳の疲労を解消する。心の中の感性を豊かにしてくれ 細かな物事に楽しみを感じることができるようになると考えられる。
川野さんは ご自身でもマルチタスクにならないように 日頃から心がけていらっしゃるそうです。川野さんのふだんの様子を取材しました。
8月初旬 お寺で過ごす日。川野さんの一日は朝の掃除から始まります。掃除は自分の心を洗い清めると教えられてきたので大切にしている。広い本堂のごみを取り除き、窓の桟の細かいホコリも上から1往復半ずつ拭く修行時代に習った拭き方です。
無心に掃除をすることは 日々の悩みなどから解放される時間に。
「決まった型を持っていることで無意識に集中できる。掃除をすることだけに集中することで心が研ぎ澄まされ 疲れが逆に取れていくような感覚がある」
掃除に集中するためもう一つ心がけているのが スピード。ゆっくりやっていると 私の場合 いろんな考え事が浮かんで来るそうです。
川野さんは僧侶になる前、勤務医として働いていました。慌ただしく診療に追われ 頑張ってもいい結果につながらないこともあって 心を整える余裕はありませんでした。
その後 臨済宗建長寺で3年半の修行 心を整えるすべを身につけたといいます。僧侶になるため たく鉢や座禅のほかに掃除などの修行をします。
「修行道場では挫折の毎日、怒られて自己嫌悪に陥ることを繰り返すうちに、これ自己嫌悪になってもしょうがないと思い、挫折と感じずに次に行こうって精神は鍛錬されたように思う」
修行の中で 食べる前には農家や料理してくれた人などに感謝のお経を唱えます。食べる時は音を立てない所作を意識しながら、じっくりと味や食感に集中するといつも食べているものでも よりおいしくありがたく頂けるといいます。
「レストラン、ラーメン屋さんでも 最初の1口だけでも丁寧に食べると食事の時間が大きく豊かなものに変わる。ぜひ取り入れて頂きたい習慣です」
息抜きにギターの演奏を楽しんでいます。実は仲間の僧侶とバンド活動をしていて、ボーカルとギターを担当しています。熱中できる趣味の時間を大切にして、自分で見つけた心と体の健康法です。
(ノラ)掃除でさえ マインドフルネスというのが すばらしいなと思って。無駄がないというか 全て心地よさに向いてるなという気がします。
(川野)私は「スキマめい想」とか「ずぼらめい想」とか 勝手に名前を付けています。どんな隙間時間にも できます。食事の最初の一口だけ丁寧に食べるというのは ラーメンを食べる時にも いきなりラー油を こしょうをかけるのではなく 最初はスープだけ 丁寧に一口飲むと なんて このラーメンを作ってくれる料理人の方が おいしく仕上げてくれたのかなって喜びが増します。
一つ一つの動作が めい想になっていくということを 日常生活の中で意識して頂きたいですね。
川野さんでは精神科医としても お仕事をなさっています。
(川野)私自身はシャツを着てネクタイをするというのが、大学病院で研修医をしていた頃からしみついていて この格好をすると切り替わるんですね。
デスクワークをしていると 背中が丸まって来るので 一度立ち上がって座り直す。そして体重がしっかり支えられていることを感じる。これを意図的に合間合間にやっています。
次の患者様と入れ代わる ちょっとの間でできるので 毎回こうやってリセットしてます。そして深呼吸して 心を整えることが大事。昔 陸上をやってた頃の癖で ストレッチも入れたりしています。
体を動かすということが切り替えになるんですね。
(川野)どうしても止まってしまうと思考も煮詰まってくるんですね。ですから体を動かす。この診察室という限られたスペースの中でも 立ち座りで体を動かすことを心がけてる。
(小澤)現代では ストレスなどで 疲れを感じるって方も多いかと思いますけれども そういった場合の対処法は?
海外の心理学分野ではセルフコンパッション 自分への慈しみ という言葉で 研究されるようになっている。例えば一日 大変だったな今日は疲れたなと思う時に ベッドや布団で 今日は一日 こんなことがあって大変だった。自分に対して「頑張ったね」って言ってあげる。
心の中にあることを書いて外側に出すということも 自分の中に わだかまっているものを外に解放してあげることに つながります。
(ノラ)家でお手洗い行くと 嫌なことあった時に 流す時に それも一緒に流れたという気持ちで流してたりするんですけど?
(川野)いいですね。それに近しい心理学的なワークは知られています。例えば自分の嫌なこととかわだかまってることをメモ帳に書いて クシャクシャにして ごみ箱にポイッて投げる。おトイレでやるというのは私も初耳なので 今度 私も体験してみたいと思います。めい想というのは決まりきった型のとおりに ご自分が心の中から自然に生み出しためい想法を ルーティンにするところから始めていくのがおすすめなんです。
南房総市 癒やしの森セラピー ノラさんが体験
日常を離れて心と体を癒やす 千葉 南房総市の取り組みをノラさんに体験して頂きました。
体験するのは 南房総市の観光協会が主催する 癒やしの森セラピーウオーキング。砂浜に森林 南房総ならではの豊かな自然の中 リラックス効果のあるプログラムを体験する2時間ほどのツアー。
案内して頂くのは ガイド歴10年の花嶋桃子さん。まずは自分の体力を知るために脚力や握力を測定。握力は 40代女性の平均はおよそ29キログラム。ノラさんは 31。握力を測って頂いたのは ハーバード大学の調査結果で握力の数値が筋肉全体の指標になる。
(ノラ)筋肉貯筋はあるねといわれる。
森の中を数分歩くと海岸へ。まずは タラソテラピーと呼ばれる海洋療法を体験します。
潮の香り 踏みしめる砂浜や波の感触を感じてもらいます。
海辺では貝殻などの漂着物を集めるビーチコーミング。波の音を身近で感じ足元で砂浜の心地よさを感じながら 貝殻を探すことに意識を向ける。
集めた貝殻を使って万華鏡を作ります。アートセラピーと呼ばれ 作業療法に近いもので 五感を刺激するプログラムの1つ。
ノラさんが作った万華鏡。「ミラーボールに近づいた。これで もう お土産ですね 」
座観といわれる心を落ち着けるプログラムで 眺望の良い場所で 10分ほど海を眺めます。
小川のせせらぎに耳を澄ます。最後は森林のマイナスイオンを存分に浴びて頂きます。
森の中でのウォーキング。木漏れ日の下 ハンモックのかすかな揺れを心地よく感じながら 森や草花の自然の香りを感じ 虫の音や鳥のさえずり葉っぱの音に耳を澄ませます。
南房総市は全国60か所以上ある「森林セラピー基地」に 2014年認定されました。国や大学の医学部などが関係するNPOが血圧 心拍の揺らぎなど 科学的データをもとにそのリラックス効果を認定しました。
ノラさん 自然の中での体験いかがでしたか?
(ノラ)とにかく癒やされまして 本当に五感が喜んでいたという感じですね。本当 久しぶりに遠くを見たような感覚がして。私 携帯で撮ったりとか いつも何か携帯片手に、この空の色とか 緑の感じとか 川の音とかっていうのを 全然 感じていなかったなって。
(川野)マインドフルネスという言葉はちょっと理解が難しいと思われがちですが、今ここを感じること 丸ごと受け入れるということなんです。私も患者さんや メンタルのさまざまな不調とか悩みを抱えた方たちと一緒に 離島や山奥の高原に行って 2泊3日とか1泊2日のリトリート(大変な状況から離れること) を指導させて頂いた。
川野さんも実践している癒やし。自宅から歩いて15分ぐらいのところにある 小さい頃から遊びに行っていた公園で会の中にあり 比較的広い場所です。いろんな場所を歩きたいので コインの裏表で右に進むか 左に進むかを決める コイン任せの散歩術 時々やってまして、コースを決めるとそのコースを意識してしまうので。そうすると 行ったことのない遊歩道を発見したり 新しい発見が気付きがあったりするんです。ベンチに腰掛けて人が少ない時には 鐘を鳴らしてめい想したりすることもあります。お寺や診療が どうしても忙しいので夕暮れ時とか 日が沈みかけた時間帯に こんな散歩をさせて頂くことがありますね。
(賀来)身近な場所でも日常から解放するということができるんですね。
(ノラ)本当に日々マルチタスクで。だけども ちょっとしためい想だったり 歩くめい想だったり 簡単にできるっていう。今後は そういうふうにしてあげたいなと思うことと同時に、自分を大事にしているんだなと思ったので、いいお話を聞けて取り入れてみたいですね。
▽まとめ&感想
林香寺川野泰周住職の座禅会 姿勢と呼吸☆
呼吸のめい想&歩くめい想 体験☆
川野さんの日常生活 掃除・食事・趣味の時間 ☆診察の間に体を動かす☆
南房総市 癒やしの森セラピー ノラさんが体験