あしたも晴れ!人生レシピ「いざというとき困らない!相続問題 」▽こんな話

Eテレ 2022.3.11
森永卓郎さん 父親の財産がどこにどれだけあるのかわからず 相続税は 10ヶ月後 キャッシュで納税しなければいけない☆遺産相続の時の話し合い 寄与分は介護の未払い金☆子どもがいない夫婦は注意 そのままでは兄弟に分ける☆遺言書は家庭裁判所で検認の手続き 確実なのは公正証書☆
配偶者の生活をちゃんとしてあげよう・子どもに苦労をかけない
【ゲスト】森永卓郎【出演】弁護士 中山二基子 【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄

森永卓郎さん 父親の財産がどこにどれだけあるのかわからず 相続税は 10ヶ月後 キャッシュで納税

親や配偶者が亡くなった時の 相続問題。

経済アナリストの森永卓郎さん
相続税の申告期限まで もう10か月間 走り続けたという感じです。とにかく脱税にならないように しようとしたんですけれども 相続税の申告を整えるだけの作業でものすごい大変でした。

森永さんの両親 京一さんとトシさんです。
22年前 トシさんが亡くなったあと 一人暮らしの京一さんを呼び寄せ同居開始。
しかし その後 京一さんは脳卒中になり 森永さんの妻が5年間 自宅で介護にあたりました。
介護費用の支払いは とりあえず 自分たちで払っておこうと森永さんが負担することに。

その後 京一さんは高齢者施設に、継続的な支払いが発生するため 費用は父親の銀行口座から 引き落としていました。その預金が底をつきそうになったため 焦った森永さん。
そこで他の銀行口座について 父親に聞こうとするものの 脳出血で倒れているので その在りかが分かりませんでした。
2011年に京一さんは亡くなりました。
葬儀も済み 相続財産を確認しようと 両親が暮らしていた家などで 通帳や印鑑を探し始めた。

相続の困りごと① 父親の財産がどこにどれだけあるのかわからない
父親は銀行に貸金庫を持っていたのでそこに手がかりがあると 思い込んでいた森永さん。
早速 開けてみると、入っていたのは なんと卒業証書や記念写真など思い出の品ばかり。
金めの物は 札幌オリンピックの記念100円銀貨とかでした。

そこで 父親宛の郵便物を1つ1つ調べ 銀行口座が どこにあるのか 手がかりを探しました。
やっと銀行口座が判明して銀行から お金を引き出す手続きをしようとするも、父親が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を全部 取ってくるようにと銀行に言われたのです。父に隠し子はいない確認のためでした。
手続きにも時間がかかり 苦労して 開示してもらった口座の残高が700円だったことも。
結局 銀行口座9つ 証券口座が2つ。資産の全貌をつかんだものの 次なる試練が待ち受けていました。

相続の困りごと② 相続税の申告と納税の期間
森永さんの場合、相続財産が相続税の基礎控除額を越えていた。

2011年当時 基礎控除額は 5000万円+(1000万円×法定相続人)
(2015年改訂 3000万円+(600万円×法定相続人))
森永さんの場合は法定相続人は自分と弟の2人。財産が 7, 000万円以上あったため相続税の申告と納税が必要となったのです。

森永さんは父親の持っていたマンションなど 不動産の処分の手続きなどに追われ とにかく時間が足りなかったといいます。
たまたま東日本大震災が起きたので仕事が全部 キャンセルになったんですね。それがなければ おそらく できなかったと思います。
相続税は 10ヶ月後 キャッシュで納税しなくてならない。うちは たまたま当時 私が いっぱい稼いでたんで 大丈夫だったんですけれども、不動産ばかりの財産の時は大変だと思います。

父親の財産を受け取ることができるのは 子どもである森永さんと 弟で1/2ずつ。父親を自宅で介護していた妻は含まれていません。
自宅の介護の時に支払ったお金の領収書なども 残っておらず 費用を父親の相続財産からもらうこともできませんでした。

遺産相続の時の話し合い 寄与分

相続に詳しい弁護士 中山二基子さんです。

遺産分割事件調停・審判申し立ての数 2019年は 1万5800件以上で 20年で1.5倍に増加している。
高齢社会 長寿社会ですから残された例えば妻は 自分の これから先の長い老後を考えたら 遺産は すごい大事ですよ。扶養も今 子どもに期待できない時代ですよね。
子どもの側も 自分の子の教育費が ちょうど かかる時期だったり、家のローンも負担になったりする。
しかも自分の老後が少し先には迫ってきてますからね。

遺産相続の時の話し合いというのは それまでの親子関係の水面下にあった いろんな問題が 一気に吹き出てくるんですよ。とても感情的になって なかなか 話し合いが うまくいかないので 家庭裁判所へ持ち出して解決を図ってもらいましょうか というようなことで件数も随分 増えてますね。

統計では 1000万以下の相続財産で調停が解決するケースは 全体の3割ぐらいあったと思います。
つまり財産が少ないからトラブルにならないということではないんですね。
むしろ私どもの感覚では 遺産が少ないと かえって お互いに請求が厳しい シビアになりましてね
落としどころが少なくて 解決が難しい感じはあります。

森永さん どうすればよかったというふうに?
(中山)お父さんを引き取られた時に 相続(お金のこと)について 話しする一つのチャンスではありましたね。

(森永)早い時期に聞いてればよかったんですけど。 ただ逆に親が若くて ピンピンしてる時に 財産を教えろって聞くのは これはこれで難しいですよね。

(中山) 親に対して「お金を どう使っていきたいか」という話の中で 財産整理をどうするとアプローチするとうまくいったケースもあります。

(森永)うちの父の時代は 銀行が口座を増やしたかったんで 貯金箱くれたりして どんどん 口座を作ってった時代なんですね。だから「すごいね いくつ コレクションあるの?」みたいな聞き方のほうがよかったのかなって思います。

相続人の範囲や法定相続分は民法で定められています。
被相続人に子どもがいた場合は 配偶者と子どもが1/2ずつ。
子どもがおらず 親が存命の場合は 配偶者が2/3 親が1/3。
子どもも両親もいない場合は配偶者が3/4 兄弟姉妹が1/4となります。

遺言が残されていた場合、その遺言が有効であれば 遺言に基づいた相続が行われます。
しかし法定相続人には「遺留分」という 最低限 保証された取り分が認められています。
そのため相続人は遺留分の額を請求することができます。
ただし この遺留分は兄弟姉妹には認められていません

(森永)うちの父を11年間 うちのかみさんが もう徹底的に介護したんですね。別に お金が欲しいわけでもないんですが 「自分が これだけ やった介護の 貢献が ゼロっていうのは何なんだ」と面白くなかったと思いますね。

(中山)お父さんに専属のヘルパーを つけてたら5年間で 1000万円は かかっただろうと。相続人の1人が 介護したことによって そのお父さんの預金を 減らさないで済んだ分を寄与分として相続の時に評価してそれは その相続人に受け取ってもらいましょうというのが 寄与分という制度なんですね。

ただ 問題は 介護するのは 長男のお嫁さんで相続人じゃないから当時 もらえなかったんです。
平成30年の相続法改正で お嫁さん つまり親族 特別寄与料を請求できるようになった。

介護を始める時に お父さんの介護費用は どこから出すのかということを お父さんと他のことも併せて
決めといて それをきちっと払えるように 先送りしないで 毎月毎月 きちっと払うようにしておく。
そもそも お父さんが払わなきゃいけない 立て替え金なんです。一種の債務なんです。

債務なんだから当然 清算すべきであり、それを清算したものについては 遺産が それだけ減ってくるわけですからね。

(森永)そのとおりだと思ったのは 介護の経費だけじゃなくて 父の生活費って 全部うちが払ってたんです。そこを こう領収書をいちいち分けて 帳簿を作るっていうような発想は 全くなかったですからね。

子どもがいない夫婦は注意 そのままでは兄弟に分ける

子どもがいない夫婦の場合」の相続問題です。
ある子どものいない夫婦で 夫が先に亡くなった場合 法定相続の割合は配偶者である妻が3/4
夫の兄弟姉妹が1/4となります。
相続人が誰かを証明する 戸籍謄本が必要となり 兄弟姉妹の連絡先を知らない場合には手続きに時間がかかります。さらに兄弟姉妹のうち 既に死亡している場合 相続人は その子どもになるのです。
どんどん どんどん相続人が増えて20名 超えたようなケースもありました。
中にはね 行方不明で連絡がつかない人。 グローバル時代ですから外国に行って連絡 取りにくい人。認知症になった人がいたりする。「兄弟で けんかしたから あんなやつの奥さんの言うことは知らん」とか言う方もいてなかなか遺産分割協議が本当に難しい。

残された奥さんは もう介護で疲れたから 家を売って 老人ホームへ 入りたいけど 奥様が その家をもらって 相続登記しなければ売れない。

トラブルにならないため 夫に亡くなる前に 遺言を書いてもらう
夫が認知症になったら遺言 書けませんよ。だから夫が元気で しっかりしてる間に 遺言を書いといてもらう。
私が経験したケースで「何で奥様ご主人に遺言書いてもらわなかったんですか?」といったら
「子どもがいない夫婦の場合は亡くなれば妻の私が全部もらえると思ってたんです」と。
「兄弟姉妹が相続人になるなんて知りませんでした」と。ちょっと悲劇ですね。
遺留分が 兄弟姉妹にはないから 遺言どおりになるんです。

単純な遺言 私は4行遺言と言ってるんですけどね。
「遺言」と書いて、「全財産を妻に相続させる」と2行目、3行目 日付。 4行目 名前と判。
これで立派に遺言として通用して これで助かった奥さん たくさんいますよ。

遺言書は家庭裁判所で検認の手続き 確実なのは公正証書

遺言の文章は必ず自筆でなければなりません。パソコンなどで作成が認められるのは財産目録だけです。
その場合 各ページに署名 なつ印が必要になるので注意してください。
必ず日付も書かなければなりません。なつ印も必要となります。
他にも漏れのないようにしておくことが大切。
そのために大事なキーワードが。「その他の財産はすべて○○する」という一文を追加しておくこと。
そうすれば「指定されていない遺産」が生じなくなるのでトラブルを防ぎやすくなります。

遺言書って どこに置いとくもんなんですか?
相続法の改正で 法務局に保管できる保管制度ができた。ただ保管してることは知らせておかなきゃいけないです。

遺言書を見つけた場合 どうすれば よろしいものなんでしょうか。
密封してあったら絶対 切ったりしないでくださいね。
見つけた人 あるいは遺言書を預かった方は 実は家庭裁判所に検認の手続きを取らなきゃいけない。
自筆証書遺言を裁判所で検証して 偽造や変造が そのあと起こらないように こういうもんだということを検証するということが一つと もう一つは相続人にこういう遺言書がありますということを 知らせる手続きなんです。

ですから検認の申し立てをする時には 相続人の全員が分かる お父さんが 亡くなってから今までの戸籍謄本と相続人の住所を証明する書類つけて行うと 家庭裁判所が 相続人全員に通知をしてくるわけです。
何月何日に検認をやりますから ご連絡します。
そこで おもむろに裁判所の人が はさみを入れて みんなに見て下さいって見せる。
それで「お父さんの署名と思いますか? お父さんの印鑑ですか?」ということを 出席した相続人全員に尋ねますね。
で それぞれも お答えになって 検認が終わったら 遺言書の後ろに 検認しましたといって ぺたっと 裁判所が証明書を 貼り付けてくれるんですね。
そうして初めて自筆の遺言は有効になるんです。

私どもが一番 確実な方法として おすすめしてるのが 公正証書遺言です。
公証役場で 公証人が関与して作成しますから まず無効になることが 非常に少ない。
それと国の金庫に原本が 半永久的に保管されますので。
それと もう一つ これは あんまり 言われてないんですが 執行する時 自筆の遺言書は検認する時に 相続人を全部 証明する戸籍を取るのに2か月 3か月かかります。
公正証書の場合は 1週間あれば お父さんが亡くなったという除籍謄本 取れます。
そうすると その1通の除籍謄本と 公正証書遺言で銀行の手続きもできるし相続登記もできる

ですから公正証書遺言は 時間も お金も手間も かかりますが やっぱり最後は公正証書にしとくと
安心だ
というのが私どもの専門家は言ってます。
ただし 今日 明日は できないので まずは最低限のことだけ 自筆で書いときましょう

公正証書遺言の場合には 相続人の人たちを みんな一堂に会してっていうことは必要ありません。

相続人が認知症の場合です
ここでは認知症の妻を夫が介護していたケースを考えます。
介護していた夫が先に亡くなった場合 相続人は配偶者である妻と子ども 相続割合は1/2ずつ。
しかし認知症によって 判断能力 認知機能が衰えている妻は 遺産分割協議をすることができません。
認知症が すごく進んで 自分の夫が亡くなったことも 分からない方も いらっしゃいますね。

この場合は「成年後見制度」を利用します。家庭裁判所に申し立てをして「成年後見人」を選任してもらい
本人に代わって財産管理などを行うのです。この制度では 後見人に 子どもがなることも可能です。
しかし認知症の親と後見人である子どもが 遺産分割協議において共に相続人である場合 互いの利益に相反することがあるため 親に特別代理人を選任することが必要です。
後見人が選任されれば 遺産分割協議を進めることができ 不動産登記申請なども可能となります。
後見人は遺産分割協議が終わったあとも 本人が死亡するまで一生 その財産を管理することになります。
弁護士などが後見人になった場合 報酬の支払いも必要となります。
いずれにせよ 認知症になる前の対策が 大切になってきます。

配偶者の生活をちゃんとしてあげよう・子どもに苦労をかけない

(森永)財産のリストがないと とてつもない苦労をすると分かったので、私の預金・株式とかのリストと かみさんの預金・生命保険 全部 一覧にして ファイルにして私のパソコンのハードディスクに保存してたんですよ。
おととしの暮れ そのパソコンが突然死 したけど 幸い かみさんのパソコンにも保存していた。

森永さんの財産といいますと2年前 この番組で取材致しました。
埼玉・所沢にある 森永さんの私設博物館。
中に展示物されているのは たくさんの しょうゆ入れに お菓子のおまけで付いてくる おもちゃのコレクション。身の回りの生活用品などその数 12万点以上に上ります。

ただ 財産的価値は ほとんどない。1回 テレビ局が1日かけて全館査定というのをやって 引き取り料込みだと タダですねって言われたんで。
弁護士さんが私んとこ来て 耳元で 「森永さん よかったじゃないですか。相続税かかんないですよ」って言われて。ただ建物の分とかがあるので もう私 10年以上前から 全国の自治体向けに 保管し続けてくれるんだったら無料で差し上げます」って言ってんですけど 今んとこ どこも立候補がないんですね。
だから今は 息子の弟のほうが少し コレクションに理解はあるので 一生懸命 説得して 事業承継をしようと思ってるんですけど。 結構 大変なんです。 赤字なので。

中山さん この森永さんの私設博物館の話の流れで こんなことを伺うのも 何なんですけれども 受け継ぎたくない遺産の場合にはどうしたら いいんでしょうか?
(中山)そういう場合は相続放棄。知ってから3か月以内に裁判所に放棄の申述をすることによって 最初から相続人ではなかったということになります。
ただ これは もう相続人ではなかった ということなので借金は嫌だ。遠くの山林を引き継ぐのも嫌だとね。だけど預金だけ 300万あるからこれは引き継ぐことは できません。
相続人じゃなくなるんですから 全てを相続しないという相続放棄になる。

遺産を残す側 ・受け継ぐ側 が心がけること
残していく妻の 配偶者の生活をちゃんとしてあげようとか、この家に引き続き住めるようにしてあげようとかね。あるいは介護した子どもに十分 報いたいとか。
あるいは 自分たちは 兄弟いるけど 子どもいないから 兄弟ちゃんと やってるから もう兄弟にあげる必要ない。世の中に役立つようにねやっぱり寄付しようとかね。
そういう気持ちを実現するにはやっぱり遺言を書いておく ことに尽きると思いますよ。

結局は親御さんにとって 子どもに苦労をかけないために 介護や介護の費用 その先の相続を きちんとしておかなきゃいけないな というような方向に 考えてくれるぐらいに親子関係を難しいけど作っていくということに尽きるんじゃないでしょうか。

(森永)われわれ 高齢側の人間も要するに いいかげんな相続になると ものすごく 子どもたちが苦労するわけですよね。だ だから子どもたちが苦労しないように 親世代のほうも きちんと相続が うまくいくように準備をしておく。
子の立場からすると話しにくい ところでは ありますけれども そうは言っていられない。
何となく日常会話の中で少しずつ 触れていくっていうようなことが もしかしたら いいのかな
というようなことも感じました。

▽まとめ&感想

私も子どもに苦労をかけない 何もないけどリストくらい作らなければと思います。
夫の分もしっかり 聞いておくようにしなければと改めて思いました。
子どもがいない夫婦は うっかりすると兄弟に分けなくていけなくなるんですね。