Eテレ 2023.10.20
電車の座席の横にあった小さなテーブルや瓶の入っていた箱など 古いものを暮らしに取り入れ楽しむ夫妻☆昭和の時代に建てられた平屋の魅力を伝える アラタ・クールハンドさん☆古民家や古道具を生かし街の活性を願う 長野県の小道具屋さん
【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄
古いものを暮らしに取り入れ楽しむ夫妻
使い古したものを上手に取り入れ暮らしている家族を賀来千香子さんが訪ねました。
都内の一軒家に暮らす建築家の戸田晃さん(64)、テキスタイルデザイナーの妻 優子さん(63)です。
案内されたのは 和と洋の古い家具がしつらえられたリビング。アンティークで 脚のつくりが陶器の個性的なテーブルは1900年ごろの イギリスのもの。
テーブルの陰にあった小さな丸椅子。塗り重ねられたペンキの跡も味わいがある、古道具店で見つけた掘り出し物でした。
もともと この家の敷地には 優子さんの祖父母が暮らす家がありました。戦後すぐに建てられた木造の一軒家で、譲り受け 暮らしていたが 老朽化により 取り壊すことに。使えそうな建具(欄間やガラス戸) などを新しく建てる家に取り入れることにしました。
子どもが生まれ 親子3人で新しい家に暮らし始めた戸田さん夫妻ですが、子育てを終え 娘さんは独立し 今は2匹の保護猫と暮らしています。
リビングに面したキッチン、シンク下のかわいらしいものが目にとまった。優子さんの弟が学生の時に乗っていたバイクのサイドの荷物入れを米びつにしていました、ちょうど5kg入り 密閉されるので米を入れるのにちょうどいいんだとか。
他にもシンクの下の隙間に使い古した木の箱、もともとはコーラなどの瓶を入れるもので キャスターを付け 出し入れが便利な収納箱、中には用途別に分けられた食材のストックがありました。
続いては晃さんに案内されて2階へ。晃さんの事務所兼趣味の部屋みたいな形になってます。ふだんは ここで個人宅や店舗の設計を行い 一日の多くをここで過ごします。
ソファーの脇の壁に 旧国鉄の急行電車の 窓の下に付けられていた小さなテーブル。弁当を広げたり 読み終えた文庫本を置いたりします。
遊び心は部屋の至るところに。本棚に付けられていたのは さびついた鉄製の巻き尺。メモをつるすマグネットボードとして使っています。
「自分がどういう物が好きで、どういうものを探しているか 自分で探してみるっていうのがちょっと楽しみ」と言います。
お隣は優子さんの仕事部屋。半分は子ども部屋でしたが 仕切りをなくして1部屋に。ここでバッグなどのデザインを手がけています。かつての持ち主のぬくもりが残る古いバスケット。猫の砂袋で作った手提げ。壁に付いているお香と書いてある木箱、よく おそうめんとか入ってる 木箱に柿渋を塗り 中は コルクやフェルトで加工して アクセサリーボックスに作り直した。
病院で使われていた年代ものの棚は、優子さんが捨てられずに取っておいた小物が並べられています。
「人から見たらガラクタで、どうしても捨てられないものの集積で、これがあることで結構 気持ちが楽」
古いものを暮らしに取り入れ楽しむ晃さんと優子さん、
多少の不便というのはやっぱり 古いものだから しょうがないんですけれども、 日常の延長として使うというのは一緒だと思う。ものをため込むよりも、何を手放していくか重要な年齢になって、使い勝手も もちろん大事なんだけど、たたずまいが愛せるもの、気にならない・ 嫌でないものを選ぶようにしています。
(小澤)まずは賀来さんのリポートからご覧頂きました。
(賀来)本当に好きなものを とことん追求したいというようなお二人で、何かね すごい楽しそうなんですよね。うちにある古いものをもう1回 ちょっと探してみて このように楽しく使えるんじゃないかなと 思いました。
(小澤)鉄道のテーブルを取り付けてらっしゃって。
(賀来)あれね 最高でした。私が入らせて頂いた戸、こちら側は黒板なんです。お子さんの小さい時からの落書き。家族が積み上げてきた歴史の温かみだったりとか、ものに対する思い入れがそういうことに表れてらして、何か 居させて頂いてる時間が 温かかったですね。
昭和の時代に建てられた平屋の魅力を伝える アラタ・クールハンドさん
小澤アナは古いものと古い空間で暮らす人に会ってきました。
「フラットハウスライフ」と記さた一冊の本。収められているのは昭和の時代に建てられた平屋の魅力。どの家も個性があり、今でも大切に住み続けている人たちがいます。著者のアラタ・クールハンドさん(58)です。
アラタさんはイラストレーターとしても活躍。昭和の平屋の家を住居兼アトリエとして使っています。ようやく大人1人が通れるほどの出入り口の先にリビングがありました。
自分でカスタマイズして戸をつけたため、あんなに幅が狭くなっています。天井も手がすぐ届くぐらいなのは 物入れのロフトを作ったんです。
アラタさんが暮らし始める前、長年 放置されていたため傷んだ畳に 雨漏りも ひどい廃墟状態でした。そのままでは住むことができずに 職人だけでなく友人の力を借りて改修。その際 古い家から救助してきたものをはめ、いろんな建物の集大成になっている。
天井は、今は白く塗られた細長い板が打ちつけてあり 船底みたいな天井にしたかったそうです。天井は白い板が抜けているところがあります。これは こういうふうにしていこうかなと思案中で、未完成の建物に住むのは夢が続いていつまでも楽しめるからだそうです。
次に案内されたのは浴室です。カビがひどく さびついた湯沸かし器でした。今ではご覧のとおり、すっきりときれいに。この時代換気扇がなく、換気窓が付いていた。
全て作り変えるのではなく 当時のままを大切に残しているアラタさん。その一つがこの換気窓です。秋とか冬とかは ここ開けるとふわ〜っと湯気が全部 出てって かなり気持ちいいですよ。窓も すごい汚かったんですよ。外して高圧洗浄機で掃除したら 模様が見えてきた。反対に言うと この模様のガラスは この建物がもともと持っていた。
幼少期 アラタさんが暮らしていたのは平屋でした。キッチンには カウンター。庭には砂場やブランコがありそこが遊び場。70年代のアメリカ西海岸にあるような家だったそう。今の家にも そのころの思い出が映し出されているようですね。
小澤アナに見せてくれた一冊の本。アラタさんが平屋に暮らす人たちに会いに行き まとめたものです。収められていたのは暮らす人の息遣いが伝わる写真、家の造りに溶け込むレコードとスピーカー 音楽好きの人が暮らしています。他にも 縁側が当時の面影をそのまま残す家など個性豊かです。本には暮らす人たちの歴史もつづられています。
本以外にも平屋の魅力を動画サイトで配信。動画を通じて若い世代にも その魅力を知ってもらいたいと考えています。
(賀来)独特な味わいがありますね。昭和は こういう平屋が たくさんあったんですね。レトロというか ビンテージというか、何か かわいいものがキュッと詰まってる感じがしました。
お風呂場の換気扇もそうなんですけど、ガラス戸のあの雰囲気あれは なかなか ないですよね。今はね 窓ガラスに柄がないですもんね。
(小澤)一つのガラスとしての個性なわけで、そういう個性をアラタさんは大事にして 魅力を感じてらっしゃるってことなんだなと思いましたね。
アラタさん 若い世代にも引き継いでいきたいと 九州大学の芸術工学部で非常勤講師として講義をい 当時の人々の文化などについても触れながら 平屋の魅力を伝えている。
昭和の建物には ブレーカーボックスが入った箱が壁にあるんです。おしゃれですよね。もちろん そのまま ブレーカーボックスが設置されてることもありました。
古民家や古道具を生かす 須坂市の小道具さん
古道具を扱うお仕事が発展して ふるさとに活力をもたらしている方です。
明治から昭和初期にかけて製糸業で栄えた長野県須坂市。当時の繁栄をしのばせる蔵や商家の町並みが残ります。
町の外れにある 古道具屋さん。店主の高島浩さん(38) は主に昭和初期の家具や生活雑貨などを取りそろえています。汚れた古い棚を削り直したり、割れたガラスを古い型ガラスに交換します。
お客さんの7割が女性です。店のアクセサリーを飾るケースが欲しかったという 女性が 手ごろな大きさの古い棚を購入しました。
「引き立たせてくれる。アクセサリーなど細かなものを飾るのに、良い雰囲気を作ってくれるので大好きです」
ガラスでできた昔のハエ取り器。今はランプのかさなど インテリアに。羽釜を乗せるために使われていた木製の台。縦にして花を飾るのも いいですね。古い道具は 当時とは異なる使われ方でも親しまれています。
店主の高島さんは 「賑わっていた須坂 高校生になった頃 人が減って行くのを目のあたりにして、良くない方向に進んでいる。自分が何かできることがあれば 須坂でやりたい気持ちでいた」と思っていた。
見せてくれた 一枚のスケッチ、古い建物を改修して 古道具を店内にどのように配置するかが描かれています。高島さんは 古道具店でのノウハウを生かしながら さまざまな店のデザインと改修を手がけています。
こちらは しっくいの壁に茶色の柱を基調にしたお店。雰囲気に合う古い家具も選びました。こうして 店の人とアイデアを練りながら古民家の趣を残す工夫をしています。
須坂市に住む 写真家の宮崎純一さん(50)と、刺しゅう作家の妻 友里さん(47)です。
建物には友里さんが刺しゅうをする作業場と 作品を展示するギャラリーがあります。純一さんは写真の撮影スタジオとして使っています。6年前 東京から長野に移住して 活動の拠点を探していたところ 高島さんと出会いました。高島さんが 構想の話と一緒に絵を見せてくれて、魔法みたいに「おーっ」となった。およそ6か月かけて ようやく完成。高島さんは2人と相談しながら作品を引き立たせる空間にしました。
(友里)私の刺繍 透明な生地にしているので、映えるよう白い壁にしました。もともと浴室だった場所も、あまり手を加えず 刺しゅうを飾るギャラリーにしています。
板に囲まれた小屋は、漬物をおいていた場所でした。中に入ると山小屋みたいな雰囲気があって ランプシェードの展示などでは 雰囲気が伝わります。
純一さんが案内してくれた和室は 当時のたたずまいを残しながら改修したもの。写真スタジオとして肖像画の撮影に使っています。純一さんが特に気に入っているのが天井の小さな窓で、照明を使わず窓からさし込む光を生かし フェルメールの絵のようです。この家と出会い新たな作品に取り組むことができ この家 ポテンシャルがあるなーと思っています。
2人の活躍を高島さんは「どこの場所でもないあの場所でしかない 建物と、彼ら自身の営みと言うのが あの場所にしかないので あの場所における力がとても発揮されていると感じるので、須坂にそんな場所が 生まれていることが とてもうれしいことです」
(賀来)あの窓ガラスからの光が いいですね。本当 いいお写真 撮れますよ あれは。
(小澤)つぼが置いてあった山小屋のような雰囲気の建物、あそこ ランプシェードを飾るなんていったら この他にないんじゃないかって。古道具とか古民家とかあるものを生かすことで、人が輝く場所が新たに生まれてるというのは希望の持てる話ですよね。
(賀来)新しいものも すてきなんですけど何か古いものと共存してると、何か こう 何とも言えない安心感が得られる。リノベーションで新しいものの息吹が得られたり 何か非常に心豊かにしてくれる。古き良きものは不思議な魅力があるんだなと思いました。
▽まとめ&感想
ちょっと前まで、茅葺きの屋根にトタンをかぶせた古い家に住んでいましたので、見るもの全てが身にしみます。それでも今の家は、隙間風や吹雪も入らず、断熱が効いていてやはり快適と思います。
小さなテーブルや瓶の入っていた箱など 古いものを暮らしに取り入れて、ステキです。 アラタ・クールハンドさん もちろん日本人ですよね☆
薄暗い 漬物小屋 あんな場所確かにありました。