Eテレ 2023.3.17
腰痛 座りすぎが考えられます。どんな姿勢で痛みが出るか疼痛誘発テスト、痛みが出る場所で判断する圧痛テストを行い 腰痛のタイプをチェック。インナーマッスルを鍛える エクササイズ ドローイン・ハンドニーなどを教わりました。
【ゲスト】黒沢かずこ、早稲田大学スポーツ科学学術院教授 整形外科医 金岡恒治
【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄
4つの腰痛タイプ
東京都にお住まいの長井さん現在は育児休暇中です。3年前から腰痛に悩んでいます。保険会社の社員として週に5日会社に出勤していましたが コロナ禍で週3回はリモートワークになり 家で過ごす時間が増えました。リモートワークが続く中 楽な体勢をとれるソファーで仕事をするようになり 腰やお尻の上辺りに違和感を感じるようになったそうです。
大林さんは去年 結婚を機に退職し 長引くコロナ禍で 外出が減り家で過ごす時間が増えました。家事を済ませるとスマホやテレビを見ながら ソファーにいる時間が長くなりました。姿勢を正して座ろうとすると 腰を反らせる「反り腰」になるのです。腰の痛みは座っている時や キッチンで料理をしている時にも腰の右側に痛みを感じています。痛みが慢性化し 長年 楽しんできた趣味のランニングも やめてしまいました。
早稲田大学スポーツ科学学術院教授で整形外科医 金岡恒治さんです。
座りすぎというのは腰に かなり負担がかかり、今現在 痛くなくても たくさん座ってるってことが今後 日本人の腰痛を増やしていく可能性はあるかもしれない。
椅子に深く腰かけると椎間板への負担が増える。逆に椅子に浅く座ると骨盤を立てると腰の反りが強くなって腰の後ろにある椎間関節への負担が増える。骨盤の傾きによって 負担のかかる箇所が変わる。
椅子に長時間 座ってると椎間板の中の水分が減り 中にある細胞軟骨細胞に栄養がうまく行かなくなる。軟骨細胞は水分を保つたんぱく質を作る細胞 プロテオグリカンで、押しつけられ 元気なくなり、それが背骨の老化の始まりなんです。
座り方が大事で 時々骨盤を立ててやると椎間板の圧力は下がるので 椎間板の中に水分が また戻ってきて 軟骨細胞は元気にいられるということになります。
■4つの腰痛のタイプ
・長時間 深く座ることで「椎間板タイプ」
・浅く座ることで「椎間関節タイプ」
・骨盤にある関節が痛む「仙腸関節タイプ」
仙骨という真ん中に背骨からつながってる骨の横に 腰骨があり 仙骨との間の関節が痛い人もいる。
・背中の脊柱起立筋が原因の「筋肉タイプ」
筋肉に過剰な負担が加わり続けると 筋肉から痛みが出ることも起きます。
■腰痛のタイプを知るには?
まず問診でどういう状況で痛みが出るのかを聞いて、どういう動作で痛みが出るのかを確認して、そのあと どこで痛みが出てるのか押して確認する。
NHK 健康ch に 金岡先生の解説があります。(こちら)
つらい慢性の腰痛が消える!? タイプ別のエクササイズとは?
疼痛誘発テストと圧痛テストで原因を探る
お二人はどのタイプの腰痛だったのでしょうか。2つのテストで総合的に原因を特定します。
・疼痛誘発テスト 体を前後左右の4方向に倒し どの動きをした時に腰に痛みが出るかで原因となっている場所を探るテストです。
・圧痛テスト どこで痛みが出てるのか押して確認する。
長井さん 大林さんの腰痛は筋肉タイプであることが分かりました。
他の3つの腰痛タイプに合わせて同時に起きることもあります。
立つ前に おなかを意識する。息を吐くときインナーマッスルが働くだから「どっこいしょ」でも「よいしょ」でも ちょっと声出して立つというのは意外といいかもしれない。
椎間板は 骨と骨の間のクッションで、だんだんと中の水分が減ってくると痛んできます。痛んでくると そこを治すために神経や血管が入ってくる。椎間板の中には神経ないので本来は痛みを感じないはずなんです。ちゃんと治れば もう痛み出なくなり完治になるが、治りかけの時に また同じような椎間板への負担を加えるとそこに痛みが出てしまう。
椎間関節は腰の後ろにある小さい関節で椎間板がだんだんと潰れると 椎間関節への過重といい 小さい関節で負荷が加わり続けると 傷んでしまって変形してきます。
仙腸関節は 仙骨と腸骨を固めている靭帯を痛め そこからの腰痛です。妊娠出産のあとで骨盤が緩んでる方。出産の時には産道を広げるために仙腸関節が動くんです。その時に負荷が増えると仙腸関節障害になりやすい。あと運動選手でも結構ありますね。どちらかというと女性のほうが多いです。
ここで黒沢さんの腰痛を金岡さんにチェックして頂き、筋肉タイプと判断されました。筋肉の使い方の問題で、使い方を正せばきっと楽になるはずです。
「座りすぎ腰痛」に悩んでいるという小澤アナもチェック、椎間関節タイプ 筋肉タイプの2つが当てはまるそうです。
このチェックは どこが痛いか どういう動きで痛いか 自分診断出来ます。ちょっと何か調子悪くなり、腰痛が出たときは コンディショニングを整えましょうという サインだと思って腰痛を捉えたほうがいいかもしれないですね。
有効なエクササイズ ドローイン・ハンドニー
腰痛のタイプに応じた改善や 再発予防に有効なエクササイズ
筋肉タイプの腰痛は 腹筋を鍛える ドローイン
・両足を腰幅に開き 膝を直角に立て仰向けに寝る
・息を吐きながら、おへそを引き込む 足を使わずに腰を床に押しつける。
ポイント 腰の下に手を入れ 手を押しつぶすようにお腹に力を入れる。腹横筋は天然のコルセットで脊柱起立筋への負担を減らすことができる。「骨盤の位置を筋肉で安定させるのが大事」です。
おなか回りに効果を出す方法 ドローインのポーズから片足を45度まで上げ ピンと伸ばすこと。この動作を行うことで 腹横筋を含むお腹周りの筋肉が鍛えられる。
次に上げた足を肩幅より少し外側に持っていき ゆっくり戻します。この時 足の重みで骨盤が傾きそうになっても 腹筋を使いぶれないよう支えます。片足ずつ1日3回ほど行えばOKです。
腹筋を鍛える ハンドニー
・四つん這いの姿勢になり おへそを引き込むように お腹に力を入れへこます。
(肩・股関節で長方形が出来る。長方形の位置をずらさないようにする)
お腹の力をキープ、口から息を吐き片足を床と平行になるまであげる
※骨盤が傾いてしまうと効果が弱くなるので注意。腹筋を使いながら体の軸をまっすぐ固定させることが ポイントです。正しい姿勢で行うことでインナーマッスルが鍛えられ 骨盤を安定させることができます。骨盤の傾きを自分で確認するのが難しい時は、誰かに見てもらうか 背中に何か乗せればチェックしやすい。左右の足1日3回ずつ行えばOKです。
長井さんと大林さんには 2週間ほど このエクササイズを試してもらいました。
長井さんからは「以前は頻繁に腰に痛みを感じたが 頻度が だいぶ減った。1日の終わり 気が抜けた時 腰に ず〜んっと痛みがあり 湿布を貼っていたが それが なくなった」
大林さんからは「ふだん1時間以上座るか キッチンで立っていると 腰が痛くなっていたが エクササイズを繰り返すうち 腹部に力を入れる癖がつき 腰痛をあまり感じなくなった」 とのことです。
(金岡)2週間で よくなったということは 筋力が付いたとか 関節が動きやすくなったとかじゃなくて 筋肉の使い方が分かり 改善したんじゃないかなと思います。
黒沢さん ドローインを試みました。まず おへそを引き込み 背中に圧力を感じることが大切で、 その場合 無理に足を上げなくてもOKです。
椎間板タイプにおすすめ ダウンドック
「下向きの犬のポーズ」で両手両足を床につけ、お尻を上げて体全体で三角形を表現します。
正座の姿勢・口から息を吐きつつ・両腕を前に伸ばして手をつき・肩甲骨を体の中心に寄せる。おへそを引き込むようにおなかに軽く力を入れ・つま先を床に向けて・口から息を吐き お尻を天井に向けて上げていきます。
このポーズは少し難易度が高いので ひざの裏が伸びきらなくても大丈夫だそうです。そのまま片足ずつゆっくり交互に・ひざを曲げ伸ばします。
椎間関節タイプにおすすめな スフィンクスのポーズ
足を肩幅に開き・うつ伏せになって両手を顔の横に置く・口から息を吐きつつ へそを軽く引き込みながら 頭だけゆっくり持ち上げる。そのまま国から胸にかけて 背骨の関節を順番にそらし 腕と肘で身体を支える。その時腰を反らせると 症状が悪化する恐れがあるのでので注意。
首から胸にかけて背骨の動きが柔軟になることで 腰にかかる負担を軽減する効果があります。
女性に多い仙腸関節タイプにおすすめ ロールダウン&ロールアップ
・体育座りのポーズをとり・へその下に軽く力を入れて腹横筋を収縮させる・骨盤を傾けて お尻から背中へと徐々に床に近づけていきます。あごは引いたままで頭を床につけましょう。
一旦 休んだら おへその下に軽く力を入れ あごを引いたまま頭を持ち上げ・背骨の関節を一つずつ動かすように首から背中へと起こしていき・最後は骨盤を前に傾けます。
難しい場合は ドローインやハンドニーでも効果が期待できます。
エクササイズのポイント
筋肉は使うと使いやすくなるので できたら朝一番 体動かす準備運動として筋肉を使ってほしい。朝 目が覚めて 起き上がる前にドローインを1回やって、ベッドから出る前に1回四つばいで足上げてみて 1日を始めてほしいですね。回数は ゼロでなければ 1でも2でも3でも何回でもいいです。
腰痛の症状がなくても エクササイズは、二足歩行を一生続けるための準備運動だと思って 毎日ちょっとずつ 思い出した時でもいいですけど やってほしいですね。
腰痛 痛みが長引いたり つらかったりした場合、レントゲンなり 何らかの検査をして何か重大な病気がないか診断を受けてください。中には がんとか 骨折とか 病気から腰痛が起きることもあります。
私 アスリートを結構見るんですけど、アスリートはパフォーマンスを高めるために いろんなコンディショニング 筋トレ・柔軟・ストレッチをしてます。
最近 ライフパフォーマンスというんですけど 日常生活をいかに快適に過ごすか。あとは究極には 年を取っても寝たきりにならない。介護が必要にならない。いわゆる健康寿命をいかにのばすか。そのためには アスリートと同じようなコンディショニングを 我々も日頃から きちんとしておくことがとても重要になると思うんです。
▽まとめ&感想
この年になり 雪で閉じ込められ 本当に座ってばかりです。
健康寿命のためにも 少し運動しようと思っています。