Eテレ 2023.5.12
自分なりに模索し理想の暮らしを実現しようとしている人たちです。
家賃などの固定費を払い続けることに疑問を感じ、わずか7畳の小さな家「タイニーハウス」を自ら作り上げた女性や、IT企業のプログラマーから仏師に転身した女性を紹介。自分のやりたいことをはっきりさせる「こころの地図」。
【ゲスト】工藤夕貴 【講師】エッセイストの金子由紀子
【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄
厳選したもので 小さな家「タイニーハウス」に3年前から暮らす
俳優で歌手の工藤夕貴さんです。静岡県で農業とカフェの経営。仲間を集い「オーガニックガールズ」って命名して おそろいのTシャツを着たり。自分の理想とする軽キャンパー(軽自動車のキャンピングカー)を作りたいと 内装を全て自分で手がけて 楽しんでます。
神奈川県横須賀市 海岸からも程近い山のふもとにぽつんと立つかわいらしい小さな家があります。
車輪が付いていてけん引すれば移動もできます。奥行き5.6m、横幅2.5m、高さ3.8m の小さな家「タイニーハウス」に3年前から暮らしているのは会社員の由季さんと山岳ツアーのガイドをしている哲平さん夫婦です。
広さは7畳余りのワンルーム。 シャワーやトイレ キッチンも完備し 木のぬくもりを感じさせる雰囲気です。3畳ほどのロフトもありベッドルームとして使っています。設計から内装まで2年の月日をかけて手作りで仕上げた家です。
狭いため工夫を凝らし、食事や仕事をするテーブル 簡単に畳めるよう工夫を凝らしています。そして ソファーの中は収納スペースになっており、拡張すると来客用のベッドになります。
哲平さんの趣味は料理なので コンロは3つ口用意するなど 使いやすいよう こだわって作ったキッチンです。
この暮らしに たどりつくまで自分なりに感じた疑問を解消しようと模索してきた由季さん。大学生になり 地方から上京し1人暮らしを始めた時 毎月家賃を払い続けることに 仕事や生き方など少し制限されると感じた。
大学卒業後は住宅メーカーに就職し、アメリカでタイニーハウスという小さな家で暮らす人がいることを知り興味を引かれます。2016年アメリカに渡り 実際に会い どういった思いで暮らしているのかを尋ねて回りました。それまですごいハードワークをし、実際に家も買ったことがあってお金も今まで稼いでた。でも本当の自分の幸福が見つけられず 思い切ってダウンサイズをしてみていた。
由季さんはタイニーハウスでの暮らしを自分でも実践したいと 材木屋の倉庫を借りて製作を開始。しかし それまでDIYをほとんど やったことがなく 何のスキルも持ち合わせていなかったため、インターネットで やり方を調べたり 試行錯誤の繰り返しでした。
さらに製作途中に交際していた哲平さんと結婚することになったため、急遽2人で暮らせるようにしました。哲平さんは仕事柄 ずっと山とか登ってて 何十日もテント生活に 結構慣れていたので なんとかなるだろうという感じでした。
製作作業と並行して行ったのは家を設置する土地探し。自分と夫の貯金を合わせて購入しました。こうして3年前に念願だったタイニーハウスを 400万円近くかけて完成させました。
狭いからこその良さを感じるようになったと 由季さんは言います。
「家の中に入れられるものが限られているので 愛着を持って使えるものを厳選している。小さい空間だからこそ 目に映るもの全部 自分の好きな物でいっぱいという心地よさがある.」
さらに「お互いがお互いの過ごし方を尊重しているのでそんなにストレスを感じない。けんかをしても早めに解決しようとする」
固定費を払い続けることがなくなり、家も移動できるのでいつでも引っ越せると思うと 気持ちも軽やか。家庭菜園も始めました。
さらに今年 もう1つの夢 タイニーハウスを体験してもらうために宿泊棟を建て 旅館業の認可も得た。
1日1組限定 素泊まりで3名まで泊まれ、こちらは自分でデザインしたものをもとに業者に依頼し 製作しました。タイニーハウスは合う合わないがあると思うので 疑似体験してもらいたかった。
(工藤 ) タイニーハウスは実際自分で建てようと思ってたんですよ。今あるものを全部手放して、もう1回すごいシンプルに 出直したいなという気持ちを強く持ってた時。ミニマムにすればするほど、たぶん本質に近づくような気がするんですよね。何となく 本当に大事にしなければいけないものがはっきりするような気がするんで。
エッセイストの金子由紀子さんは シンプルライフを実践され ご自身で服や家具を作ってお金をかけずに楽しく暮らすための方法を発信されてます。
(金子)VTRの中で「固定費を抑えることで すごく生活とか いろんなものに縛られる感覚がなくなって楽になった」っておっしゃってましたけど、私たちが手に入れられる資源・お金も有限で、その中で 自分が一番やりたいこと・自分が一番欲しいものを先に取って、あとの残りはどうにかするというスタイルで、先に幸せになってるんだなと感じました。
食べ放題に行って 好きなものをあとで食べようと思っても、そのころには おなかが いっぱいになって食べられなくるけれども、先においしいものを食べたら あとはもう食べなくてもいいぐらいって思いました。
(小澤)自分の時間を大切にできるというのは すごく尊いことだと 特に感じますよね。
(工藤)外国でずいぶん長いこと生活してきたせいか 日本って意外と 生活が豊かそうで豊かじゃない気がするんですよ。それは自分時間の充実という意味での豊かさが 会社勤めをしてる友達とか見てるとそういう窮屈さがあるのかなって ちょっと思ったりする。世界が変わってきてるから 日本の社会が変わってきてるのはありますよね。
IT企業のプログラマーから仏師に:苦労を重ねシンプルな生活選ぶ
苦労した体験を経て 自分の理想の生き方を模索する方です。
IT企業のプログラマーから仏師に転身した女性 あんどうななせ(44)さんです。現在 都内にある団地で夫の正憲さんと2人の子どもの家族4人で暮らしています。
自宅の一室にあんどうさんの作業場があります。行っているのは木彫りで、8年ほど前から仏像などを作る仏師として活動を始めました。作っているのは「一笑仏」と名付けた優しいほほえみが特徴の仏像。頭部を大きくデフォルメすることでかわいらしく仕上げています。ここに至るまではさまざまな苦労があったといいます。
子どもの頃から勉強が得意だったというあんどうさん 東京大学に進学しました。
演劇が好きで 舞台役者を目指した時期もありましたが挫折。やりたいことも見つからず 知り合いから「向いているのでは?」と言われIT企業のプログラマーとして就職しました。
20代半ばで最初の結婚をして、夫の事業をサポートするため自分の名義で借金をし その返済のため 働きづめの暮らしを送ることになった。仕事が終わったあとも深夜まで レジ打ちなどのアルバイトをする日々を過ごしたといいます。
「消費者金融から300万ぐらい借りたと思う。利息を返すだけで精一杯。なんの希望も持てなかった」
31歳で離婚し借金も返し 人生を再スタートさせたいと思い 正憲さんと再婚し2人の子どもも生まれましたが、これから先の自分の人生についての模索は続いていました。
そんな時引かれたのが仏像でした。仏師が思いを込めて作り上げ 決して古びることのない美しさを放っている。いつ解雇されるか分からないという不安を感じることも多かったため 自分の手で仕事を生み出すことへの憧れもありました。
「シンプルにものを作って売るというシンプルな仕事がしたい」
そこで まずは独学で木彫りの勉強を始めました。そして本格的に学ぶためプログラマーの仕事を辞め仏像彫刻の教室に通い腕を磨いてきました。仏師として活動を始めましたが どうやって買ってもらうかが大きな課題でした。イベントなどに出展したり インターネットの販売サイトに出品したり…。
そんな中イベントで3面の違った顔を持つ阿修羅像がはじめて売れました。しかし プログラマー時代に比べると収入は激減。手仕事なので量産することもできません。
厳しい世界だと感じた あんどうさんは 木彫りの作品を食べ物と交換してもらうため 人の目に留まるようにするため 仏像のマスクをかぶってコスプレして お店の人などに声をかけてみました。この経験は自分の中にある変化をもたらしたといいます。
4年前からは木彫りを教える教室も開くように。週に2回開催しているこの教室。参加を希望する人は徐々に増えこれまで250人近くが受講しています。あんどうさんの教室は参加者に 作りたいものを作ってもらうというスタイルです。
「木彫りは一つの手段なんですけど 何でも買って済ませる今…。」
あんどうさんのところに 個人的な依頼も舞い込むようになりました。亡くなった犬の供養にしたいと依頼を受け制作したものや 同窓会の記念品として依頼を受けたトロフィー。今 かつて感じていた不安や焦燥感から 少しずつ解放されてきていると感じています。
ブログ更新しました(^。^)
— 一笑仏工房(あんどうななせ) (@isshobutsu) May 7, 2023
★5/12(金)Eテレ午後8時ほか「あしたも晴れ!人生レシピ」にVTR出演します
★2023年5/19(金)~23(火)上野の森美術館にて開催される日本木彫刻展に数点出品します
よろしければ是非!
テレビ出演のお知らせ&日本木彫刻展に出品のお知らせ
⇒ https://t.co/mKHSzHBcMS
(賀来)ご苦労もおありだったでしょうから、シンプルに生きるって 裏表なく生きられるというのが 心に響いて あんどうさんが歩いてきた道のりが決して無駄じゃないと思いましたけど。
(工藤)お金 お金 という人生じゃない人生にしたいって思ったというのは、そこにいたからこそ言える言葉だと思うんです。そこが嫌だったから今の人生を選ぶようになったという ひしひしと自分も感じ入るものがあって。子どもの時から私芸能界しか知らなかったので、すごい芸能界ってキラキラしてる世界で 自分以外の何かに見せなきゃいけない 実態がないところがすごく苦しかった。
特にアメリカの社会は非常に競争社会だったので、自分が耐えられないと思った時に土に向かい合ってみたら すごく地に足がついていて、あっこれが生きることなんだ。あんどうさんが仏師になられてある意味全然違う転身ですよね。何か ちょっと分かるなって。
自分の心の地図を作り 書き出すと やりたいことができる
(金子)今ってSNSとかでひとさまの暮らしが すごい筒抜けに見えてしまう時代。すてきなお洋服とか、豪華な旅行に行かれたり、すてきなレストランでお食事されたり。それが毎日毎日 お友達のSNS見て、私もああいうのが欲しいみたいに ちょっと引っ張られる。じゃあ本当にそれが自分の欲しかったものかっていうと あとで気が付くと違う。自分が本当にどうしたかったのか分かっておくことがすごく大事です。
金子さんは そのために自分の心の地図を作ることだといいます。
その方法は
1.紙の中心に「自分の世界の中心となる一番大切なもの」を書く
金子さんの場合 「家族」と「自然」です。
2.心に浮かぶキーワードを書く(中心から拡げるように)、家族と自分が楽しく暮らすために やりたいこと、不安に思ってること、責任とか
金子さんは血圧管理・郷里の山林の管理 とかも。若い頃は やりたいこと楽しいことばかりでした
こうやって文字にして自分の目に見せてあげると まあまあ 言っても これだけか。これだけのことだったらこれは こうすればいいと思える。
3.全て書き出したら カラーペンなどを使い似た項目をジャンル別にまとめ、改めて別の紙にまとめ 優先順位から高いものから書く
金子さんの場合は 5種類に分類しました。調べておく 準備しておくこと、気になりつつも忘れがちなことを把握するのです。自分の心の中の地図が俯瞰して見えるようになる。
そして 今年、来年、再来年というふうに1年ごとのカレンダーを作るんですよ。そうすると毎年 できることが見えてきて、今年はこれをやるんだって。そうすると意外とやりたいことがどんどん できてくるという 経験が私にはあります。
(工藤)これから先に思い描いてることは、父の歌を覚えている人たちが生きてる間に、自分で犬と一緒に旅をしながら 老人ホームを回って父の歌をあちこちで歌って 父をしのぶじゃないんですけど 自分の大好きな歌をシェアできる人たちと一緒に味わいたいという旅ができたらなって ちょっと夢に思ってます。
▽まとめ&感想
私も小さな家「タイニーハウス」でこじんまりと暮らすのもいいなと思います。広い家は今時光熱費が大変なので。
自分のやりたいことを明確にするための「こころの地図」いいアイデアですね。さしあたって しなければいけないこと ボードに書き出し 済んだら消すだけで、 頭の中であれこれ考えても 何もできないより確実でした。