NHK総合 2023.2.23
熊本県 小国町 わいた会を設立 全戸役員になり地熱発電の収益を分配。
韓国ポハン 地熱開発で大量の水を注入したことが引き金になり 大地震が発生。
純国産再生可能エネルギー 地熱発電でエネルギー自給率UPを狙う 沼田昭二氏。
地熱を熱エネルギーとして暖房に使うのはムダがなかった。
【司会】所ジョージ 木村佳乃 ホルコムジャック数馬
【出演】国際エネルギー機関 地熱部門議長 JOGMEC 安川香澄、漫画家 ヤマザキマリ【語り】吉田鋼太郎
熊本県 小国町 わいた会を設立 全戸役員になり地熱発電の収益を分配
熊本県 小国町 わいた地区に住む30軒は8年前から稼働している地熱発電所があります。大手電力会社への売電収入は年間6億円にもなり、管理費などを引いた1億2000万円を 毎年 集落の30世帯に分配していると言います。
(所)すばらしいね。
(木村)すごい。
地熱事業会社(わいた会) 初代代表 江藤さん「この発電所は 集落の全員が役員として作った会社です。地下資源は守らなくていけない。乱開発させないためにも守っていかなければ いけない。」
地熱発電所が稼働したのは 2015年。そこに至るまでには30年にわたる う余曲折があった。
現在の10倍の規模の 地熱発電所の建設計画が1985年ころ持ち上がったが 温泉施設を営む住民たちが強硬に反対した。温泉を営んでいて 影響が出ないか心配とか、冬場温度が2、3度下がると 入れなくなり 死活問題 などの声が上がって、結局 計画は中止に追い込まれた。
しかし過疎化に歯止めがかからない中 再び地熱発電所建設の機運が高まった。人口減少を考え 地下資源を金に換える方法を住民たちは知恵を絞り考えた。
全世帯が地熱発電会社の役員となり 万が一 源泉に影響が出た場合は発電所を停止する権利を持てるようにして ついに完成した地熱発電所。収入は集落を大いに潤し 憩いの広場を新たに建設したり、発電所の熱水を使った農業用ハウスを建設し バジルなど栽培、特産品の開発にも乗り出した。Uターンしてくる若者も相次いでいる。また発電所で使った熱水を集落の各世帯に分配して 自宅で温泉が楽しめるようになった。
江藤さん「心も、財布も、体も温まる。温泉様様です。」
電気代の値上がり話題にもなってますけれども。
(木村)なるべく消したり いろいろしてますけど。
(漫画家 ヤマザキマリ) 私の家族の住むイタリアひどいことになっていて 去年の3倍と言っている。だからものすごく節約して暮らしている。夫は基本的に 家の暖房を全部消して オイルヒーター1個だけを自分が作業する机の下に入れて その上から毛布をかけるという 工夫をしていて 日本のこたつからヒントを得た。イタリアは 地熱発電の発祥の地 1913年から活動しているが発電量はごくわずか。
エネルギー資源が高騰する中で SDGsからも改めて注目を受けている 地熱発電、日本の地熱発電の資源量は 世界で3番目。ところが 地熱発電の容量は世界10位で、日本の国内で消費される電力のうち0.3%しか地熱発電で まかなえていないんです。
国際エネルギー機関・地熱部門議長 JOGMEC 安川香澄さん
(安川)いろんな問題がありますけど、ほとんどの地下資源が国立公園などの自然公園内にある。国立公園は きれいな風光明美な場所にあり 火山の近くが多い。今までは8割が開発できなかったが 段階的に規制緩和されてきて 特別保護区を除けば開発できるようになった。日本は2030年までに 地熱発電の割合を0.3%から1%以上ににする目標を掲げてます 。
韓国ポハン 地熱開発で大量の水を注入したことが引き金になり 大地震が発生
韓国南東部 ポハンでは地熱開発を進めたことが原因で大きな地震が発生した。実は韓国は地震が少ない国で、過去10年間に発生した マグニチュード3以上の地震の分布図を見ると日本ではひんぱんに起きているが 韓国は火山が少なくプレートの境目もないため 大きな地震は ほとんど起きていない。
2017年11月 ポハンは震度4の地震に見舞われた。韓国の観測史上2番目に大きい マグニチュード5.4を記録し、135人が負傷し2000人近くが避難生活を余儀なくされた。地震が少ない韓国では建物の耐震強度が低く 被害が拡大したという。
韓国初の地熱発電所になる予定だった 中心部から車で10分ほどの現場に向かった。当時は やぐらが立ち試験的な掘削が行われていたが今は更地になっていた。そこから 車で5分ほど離れた震源地には ただの畑が広がっていた。
ポハン地震と地熱開発の関係を突き止めた 釜山大学 キム教授によると「そもそも 地震のない地域だった。ポハン地震の前から 韓国で発生する地震を研究・調査しているところ 開発現場の近くで小さな地震が頻発してたが 極めて異例なことなので 観測調査のため地震計を設置した。その5日後ポハン地震が発生した。地熱開発で 大量の水を注入したことが引き金になって地震が発生した」
ポハンで採用されたのは「高温岩体発電」という発電方法で、まず地下深くにある高温の岩体に高圧の水を注入。亀裂を入れて人工的な水のたまりを作る。岩体の中で温められた熱水をくみ上げ発電に利用する方法でした。火山がない地域でも地熱発電ができる画期的な技術とされていた。
しかし、高圧の水を注入した時間と量、さらに開発地域で発生した地震の関係を示した図を見ると 水を注入するたび 小さな地震が発生しているのが分かります。
高温岩体発電によって発生した小さな地震が開発現場の地下に広がる活断層を刺激して ハン地震が起きたと考えられるという。
その結果 市街地が甚大な被害を受けることになった。キム教授が調査結果を発表すると住民による反対運動が激化。政府は事業の中止を決定した。
(安川)日本では地下に熱水がある。韓国では熱水がなく 地下に水を注入していた。世界でも 「高温岩体発電」をとっているところがあって 実際に地震が起きたこともある。日本には豊富に熱水があり「高温岩体発電」は現在使われていない。やはり 慎重にモニタリングして 常に解析していくことが重要です。
(ヤマザキ)地熱発電が観光名所になっているアイスランドは消費電力の30%を地熱発電でまかなっている。地熱発電所で使った熱水を再利用した 巨大な露天風呂 ブルーラグーン。豊富な温泉量で 温泉成分 シリカがたっぷり入った泥パックが人気で 世界中から 年間20万人 観光客が訪れる 1大観光名所になっている。
(安川)私も行ったことがあるんですけれども 世界一儲かっている 温泉地域です。
(地熱発電所から出る温水はパイプラインで都市に運ばれ、道路の凍結を防いだり、各家庭の暖房や給湯に使われています。)
純国産再生可能エネルギー 地熱発電でエネルギー自給率UPを狙う 沼田昭二氏
日本に地熱発電所を増やそうと、なんと 150億円以上もの ポケットマネーをつぎ込んでいる 名物経営者がいるんです。向かったのは あの熊本県小国町へ、雪の中 名物経営者が手がける地熱発電所第1号の建設が進んでいた。従業員という馬がいた。笹やすすきがぼうぼうで 荒れ放題の傾斜地に 馬たちを放牧し草を食べさせ 半年で草刈りが完了して 5千万円の草刈り代が浮いた。連絡を取ってもらったところ 会長は 今 神戸のスーパーにいるというので、会長に指定されたスーパーを訪ねた。全国750店舗のスーパーチェーンを築き上げた 名物経営者 沼田昭二氏だった。(「業務スーパー」で知られる「神戸物産」の創業者・株式会社町おこしエネルギー代表取締役)
(沼田) スーパー経営のノウハウを生かして 1年に1か所ずつ地熱発電所を増やしていきたい。なぜかというと、 2回ほど 本当に死にかけまして 、1度目は甲状腺がんはステージ4で本当に危なかった。2回目の脳幹脳梗塞も30日以内に50%以上で死の確率があるといわれた。そのため私利私欲を捨て、世のため人のため 次世代の子供のために、純国産エネルギーのアップをやらせていただきたい。
会長は 畑違いの地熱事業だが、スーパー同様 スピーディーに発電所を量産できると考えている。
「必要なものは自分で作る」という考えを ずっと持っていて、必需品は自前で開発するのが会長のポリシーで、スーパーの冷凍ケース 客が商品を見やすく取り出しやすい高さに設定し、さらに自社製品の段ボール1箱分が まるっと入る大きさにで 補充の回数を減らしコストカットにつなげた。
そこで地熱発電のために開発したのが 自前の掘削機。キャタピラー付きの自走式で いつでもどこでも即掘削できる。従来は やぐらを建設してから掘削するので、やぐらをつくるだけで周辺の道路の整備も含め 1か月 2億円かかっていたが、6000万円で済むようになった。さらに発電所の設計にかかるコストの削減にも取り組んだ。
(沼田)これは地熱発電所の設計図で、家2軒分ほどの大きさでコンパクトに設計します。これまで発電所の設計は その土地の蒸気の量に合わせたオーダーメイドだった。そのため 2年以上 2億5千万円かかっていた。
そこで小規模で かつ同じ仕様の設計図を標準化。低コストかつスピーディーな建設を目指す。この規模だと 環境アセスメントを受ける必要がないという。
日本は1つの発電所を作るのに 15~20年かかっていた。こうしたことで5年以内にスピードアップしたいそうです。
会長は さらに10億円を投じて 掘削の技術者を養成する 全国初の専門学校を作った。国内に30か所の地熱発電所をつくる目標のため 将来を担う技術者を育てている。
地熱発電所のために150~160億円以上も お金をつぎ込んでいますが、失敗しないで 必ず完結できるという自信があるそうです。
(木村)すごい!
(安川)あんまり日本の大学なので 掘削を専門に教えているところはない。重要なこと
日本のエネルギー自給率 2021年度で13.4%しかない。沼田さんは これをなんとかしたいと地熱開発に懸けてらっしゃる。
(ヤマザキ)イギリスでは家庭での電気代 年間100万円を超えると予想されている。エネルギー問題がヨーロッパでは生死に関わる問題になっている。暖房費を払ったら食費が払えない。Heat or Eat なんていう言葉も横行してると。
(ヤマザキ)燃料費の心配がないところ ハンガリーのホードメゼーヴァーシャールヘイの町です。
現地のコーディネーターが ある集合住宅を訪ねてみますと 玄関から温かい。天然の暖房でエアコンは不要だった。
(ヤマザキ)この秘密は 町なかに掘られた温泉井戸、この温水を建物内に循環させてるために格安の光熱費で済むというそういう仕組みなんですね。ジャグジーや屋外プールなんかもあるそうです。日本では25mの温水プールに 月100万円ものガス代がかかるといわれてるんですけども ここではガス代はかからない。
ちなみに このホードメゼーヴァーシャールヘイの温泉を利用した暖房、ハンガリーでは国中をあげ普及に取り組んでいるそうです。
(安川)実は熱エネルギーを電気エネルギーに変えるだけで半分以上ロス します。すごくむだなことをやっているので初めから地熱を熱として暖房に使うのはすごくいいと思います。カーボンニュートラルにはもってこいです。
環境省も二酸化酸素を排出しない 温泉利用の施設投資には 最大で半分の補助金を出している。
(ヤマザキ)実は60年以上前から 温泉暖房を満喫している 静岡 熱川の動植物園では 温泉の熱を使った温水プールで 16種類 約140頭のワニを飼育しています。
▽まとめ&感想
熊本県 小国町 わいた会、地熱発電の収益を分配。うらやましい話です。
地熱開発で大量の水を注入したことで 大地震が発生。そんなことがあるんですね。
地熱発電でエネルギー自給率UPを狙う 沼田昭二氏、本当にがんばってもらって あちこちで ユニットが設置されればいいですね。
地熱を暖房に使うのは、温泉で道路の消雪したりしてるようで、MY温泉うらやましい限りです。