所さん!事件ですよ★手洗いに忍び寄る危機?理由はまさかの廃油の需要急増▽こんな話・航空機燃料

NHK総合 2023.1.12A
児童館の手を洗うせっけん手に入らなくなるかも◀せっけんの原料 廃油不足◀廃油輸出
シンガポールに輸出された廃油は回収企業を経て、新しい燃料SAF CO2を8割減。
パリ協定で航空燃料にニーズが生じ、ICAO(イカオ) 国際航空分野で2050年までに脱炭素

【司会】所ジョージ 木村佳乃 ホルコムジャック数馬
【出演】運輸総合研究所研究員 松坂かん奈,東京大学准教授 松本真由美,モーリー・ロバートソン

児童館のせっけん 手に入らない ◀せっけんの原料 廃油不足◀廃油輸出

中野区 若宮児童館 藁科館長を訪ねると「せっけんが入手しづらくなるかもしれないとうわさを聞いた」と言う。新型コロナウイルスの流行がおさまらない中 手洗いは子どもたちに欠かせない習慣。そんな手洗い用のせっけんが手に入らなくなったら たいへんです。
児童館で使っていたせっけんは 生後2~3ヶ月からきている赤ちゃんが なめても安心なもの。
子どもたちのことを考えて 肌に優しく環境への負荷も小さいという 天然由来のせっけんを選んでいる。ところが このせっけんが 近い将来手に入りにくくなるかもしれない。そんな情報が一部で ささやかれているという。せっけんが手に入らなくなってしまうことなど本当にあるのだろうか?

兵庫県 尼崎市で50年以上せっけんを販売している会社の代表取締役の岡野嘉市さんの話では せっけんの原料が手に入りにくくなっている。そのせっけんの原料は 飲食店から出ている食用油の廃油。

廃油由来のせっけんの作り方
・廃油から食べ物のカスなどを取り除いてきれいな状態に精製する。
・油の主成分である脂肪酸だけを抽出
・アルカリ成分を入れて よく混ぜていくと せっけんになる。

先ほどの児童館のせっけんも リサイクルした油をもとに作られた。ところが 今 この食用油の廃油が 手に入りにくくなっているという。
「高騰しても使う人が増えていて、本当に手に入りにくくなってるっていうのが我々の悩みです。」
廃油は せっけんの原料のほか 家畜の飼料、新聞やチラシなどのインク、自動車のバイオディーゼル燃料などにリサイクル利用されてきた。

一体 なぜ それほどまでに廃油を欲しがる人が増えているのか?
都内文京区の「全国油脂事業協同組合連合会」は 廃油の回収業者やリサイクル業者からなる業界団体で、塩見事務局長に 事情を尋ねると せっけんの原料の一つ「食用油の廃油」の輸出が急増している。平成27年度は3万tの輸出で、令和3年度は12万t 4倍に膨れ上がってます。
日本全国で回収される食用油の廃油は 年間およそ40万tなので 現在では日本の全回収量の4分の1が輸出されているという。
その結果 せっけんに必要な廃油が近い将来 手に入りづらくなるかもしれない。

(モーリー)本当に偶然なんですけれども 私の事務所で働いてるスタッフが 今 週に一回 夜 廃油を回収している業者でバイトしている。いろいろ聞いた話だと、廃油を資源と思っていない飲食店がまだ多い。
回収に行くと 店の裏に廃油が 生ゴミと一緒に出されていて 生ゴミをかき分けないと回収できなかったりとか、ひどいときは油の中にネズミが浮かんでたりしたそうです。

(環境エネルギー問題など研究している 東京大学准教授 松本真由美)
廃油が人気が出ているのは 二酸化酸素(CO2)の排出量が少ないということもある。
菜種やとうもろこしなどは大気中のCO2を吸収して大きくなる植物なんですね。だからその油を燃やしても大気中のCO2はプラスマイナスゼロ(カーボンニュートラル)という考え方になるわけです。
石油は地中から掘り起こしてCOを新たに大気中に放出することになるわけなんですね。
新品の油でなく 環境の視点から廃油の方が好ましい
10年ほど前 バイオディーゼル燃料が流行して燃料用のトウモロコシが大量に栽培され 食料用が高騰 アフリカなどの飢餓に苦しむ人を直撃していた。
その教訓で「食料との競合は避けるべき」という世界的な不文律ができた。
その結果新品よりも廃油に注目が集まっている。

シンガポールに輸出された廃油▶廃油の回収企業

シンガポールで日本から渡った廃油が 驚きの使われ方をしていることが分かった。
しかも その廃油由来のものが 今 世界規模の争奪戦が起きているという。
ディレクターは 早速シンガポールの現地スタッフに調査を依頼。日本から輸出された廃油がどう使われているのか 調べてもらうことにした。
訪ねたのはアジア最大級の廃油の回収企業クリス・チェン代表は「アジア各国に廃油回収のためのネットワーク張り巡らしている。今のところ アジア圏に7つの拠点をもっている。」
こちらの男性の会社は 日本をはじめ中国やタイ インドネシアなど アジア各国で事業を展開。
2007年に会社を立ち上げ ここ5年で急激に成長し 少なくとも30~50%成長、2021年に廃油22万t 扱い300億円の売り上げがある。
各地から集めた油をきれいに精製して バイオマスプラスチックバイオディーゼル燃料を扱う商社などへ販売してきた。ところが 最近になって異変が起きているという。廃油が全く新しい燃料として使われ始めているというのだ。

新しい燃料SAF 二酸化酸素(CO2)の排出量を8割も減らせる ▶パリ協定で航空燃料にニーズ

新しい燃料を製造している企業(NESTE ネステ)を訪ねることができた。こちらの会社 この4年で株価が3倍に急増。時価総額は なんと日本円で5兆円を超える企業となり 今や世界を代表する 燃料生産メーカーでした。
調べてみると 日本からの廃油の多くがこの会社に運び込まれていた。各地から集めた油をきれいに精製していた。今建設中のものが 稼働すれば年間最大100万tの生産能力を持つ 世界最大のSAF製造所となる
SAF(サフ)
とは「Sustainable Aviation Fuel」の略で、日本語では「持続可能な航空燃料」を意味します。次世代の航空燃料とも呼ばれるSAFの最も注目すべき点は、化石燃料と比較して二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるということです。二酸化酸素(CO2)の排出量を8割も減らせる次世代型の航空燃料。これまで 世界の航空業界では厳しい安全基準を満たしながら CO2を削減する燃料をなかなか実用化できなかった。SAFは そこに満を持して登場した燃料。そのSAFの原料として最も多く使われているのが あの廃油です。
今 世界各国が脱炭素社会を実現するため 2015年パリ協定を結び 先進国と途上国が温室効果ガス削減を目指すことで合意している。その中で 航空機が排出するCO2に対する風当たりは 特に強い。
ヨーロッパでは 2030年までに航空燃料の5%以上をSAFにすべく 義務化を検討する国も出始めている。そのため 廃油をもとにしたSAFのニーズが急増
シンガポールはもとより 欧米を中心に 今 続々と製造される事態になっていたのだ。廃油争奪戦の背景にはクリーンエネルギー化を進める各国の思惑があったようだ。

ICAO(イカオ) 2022年10月 国際航空分野で2050年までにCO2の排出を実質ゼロに ▶脱炭素

(航空機などの運輸関連の研究されている 運輸総合研究所研究員 松坂かん奈松坂さん)
食用油の廃油がSAFに急速に使われるようになったのは 国際民間航空機関 ICAO(イカオ)が 2022年10月7日 国際航空分野で2050年までにCO2の排出を実質ゼロにする長期目標を採択した。
2020年以降、国際航空での温室効果ガス(GHG)の総量を増加させない との従来の目標から 排出削減へと大きく方針を転換したことになる。
今回の新たな目標達成には、革新的な航空技術の採用や、合理的な航空運営持続可能な航空燃料SAFの開発・増産などの加速化が必要としている。

(モーリー)今回のNHKの取材ちゃんと連絡取って リモートでシンガポールの支局の方がやったんですよね。だから 日本からわざわざ飛行機で行って来いしてないから。ちょっと うまいことみんなが生活習慣を変えてる。

(松本)航空業界の急速な動きには国際的な取り決め以外にもいくつか加速させた要因があると私は思っています。
・環境問題で一躍注目を浴びたグレタ・トゥーンベリさん。彼女が「Flygskam」訳すと「飛び恥」という言葉を流行させたこと。鉄道の5倍ともいわれるCO2を出す飛行機には乗らず鉄道を利用しようという運動で 世界中の若者が大きな影響を受けました。
新型コロナ。世界中で移動が制限されて 航空業界は巨額の売り上げの減少となり経営に大打撃を受けました。
・世界的な動きである脱炭素金融機関など機関投資家がけん引しているのがポイントです。企業は無視できず 脱炭素を進めないと企業価値が下がってしまう

結果、航空業界は 強力に変革を迫られたと思われます。

(モーリー)ちょっと気になる映像を見つけたんですよ。2年ほど前(2020.11.6)に 羽田空港で日本を出発する定期便に 初めてSAFが給油されたときの映像ですが、この会社のロゴ (NESTE ネステ)見覚えありませんか あのシンガポールの企業です。

(航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗)
日本の廃油を海外にもっていって SAF燃料に精製し また日本にもってきて航空機に給油 1往復している状況になる。
(モーリー)なんと 日本から海外へと輸出された廃油が 現地で航空燃料へと精製され また日本に帰ってきてるっていうんですよ。

(所)日本で作れないってことですか?
(鳥海)日本はSAF後進国 日本でSAFをつくる工場がほとんどない状況。仮に作ったとしても価格がすごく高騰してしまい ジェット燃料として入れると お客様に追加の負担をしてもらわなければいけなくなる。というところもあり今は海外で作っているという状況にあります。

(モーリー)一回 シンガポールに出して 買い戻すわけよね。金を二重に出して。加えて 行ったり来たりするのも ただ瞬間移動して来るわけじゃなくて 何のためにやってるんだみたいな?

(所)何で乗り遅れたんですか?
(松本)日本では意欲的な企業のもと着々と研究は進められているんですけれども、海外に較べ技術は未熟で製造コストは高く 国全体として思うように進退しなかったことが。

(松坂)このまま手をこまねいているとたいへんなことになる。航空機は片道分しか燃料を積まないので、海外から日本に来た飛行機は 日本で給油するときに SAFの燃料がないと、日本への就航が避けられてしまうかもしれない。日本でも 2022年3月に 「ACT FOR SKY」という大手航空会社など16の有志の企業が参加するプロジェクトが立ち上がりました。今後日本でもSAF原料の 確保・生産・供給が加速していくと思います。

ある国では廃油が新品の油より高い!盗難も

需要が高まっている食用油の廃油をめぐって 世界中で驚きの事件が起きているんです。証言をしてくれたのは先ほどのVTRで アジア中の廃油を集めていたシンガポールの経営者。
フェイク廃食用油が出回った。廃油に新品の食用油を混ぜ偽装する事件が起きた。
事件が起きたのは東南アジアの とある国。なんと この国では新品の油より 廃油の値段のほうが高くなってしまう事態が起きたという。
「私たちはサンプルをとって改修元をたどれるようにしている。フェイク廃食用油だったら取り引きは打ち切るよ」

さらに 世界で起きていた事件はそれだけではなかった。なんと 各国で廃油泥棒が続出。レストランやパブなどの飲食店から廃油が持ち去られる事件がイギリスやインドなど各国で発生していた。
日本でも都内で天ぷら油が盗まれる事件が発生した。

(松本)廃油が世界中で争奪戦の状況は いずれ大きく変わると予想されている。と言うのもSAFの原料は廃油だけでは賄えない。日本でも2050年には およそ1800万tもの SAFが必要で、日本の廃油の総回収量は 40万トンなので到底足りない。 廃油に替わるSAF原料の技術開発が進められている。期待されてるものには 微細藻類の藻や 木質チップ 生ゴミなど。そのほか 古着の綿を原材料として 微生物の働きで燃料を製造する取り組みも行われています。
廃油に付いてはせっけんなどの用途とバランスをとりつつ新たなSAF原料の開発を急ぐことが重要です。
(所)せっけん 自分で廃油で作ろうみんなで。廃油を皆さんが心がけて 資源として考えるようにするには 値段をつけよう。持っていけば いくらになるっていうと大切にやるじゃん。

▽まとめ&感想

幼児のの手を洗うせっけんが航空燃料になるなんて ついて行けません。
世界的な動きである脱炭素、金融機関など機関投資家がけん引しているので 企業は無視できず 脱炭素を進めないと企業価値が下がってしまう。
植物由来のものを用いて プラスマイナスゼロにするのが カーボンニュートラルと考えていいんでしょうか。
気象変動がいくら起きても 脱炭素 ピンときませんでした。大きく世の中変わっているんですね。早く日本が追いつけるよう祈らずにいられません。