NHK総合 2023.11.2
海の異変 千葉館山の海 温暖化で南方の魚が増え海藻が減ってサンゴが繁殖☆北海道北見市ではホッケに替わりフグが急増☆黒潮大蛇行もあって取れる魚大きく変化☆雑種のフグどこに毒があるか分からず 一匹一匹DNA鑑定☆海水温の上昇で性転換☆海藻のアマモを育て 陸も改良☆二酸化炭素だけ吸収する装置
【司会】所ジョージ 木村佳乃 ホルコムジャック和馬
【出演】さかなクン 田中律子 大家志津香【語り】吉田鋼太郎
千葉館山の海 温暖化で南方の魚が増え 海藻が減って サンゴが繁殖
さかなクンが地元 千葉県館山の海で異変が起きていると聞いて漁師さんの船に乗せてもらう。すると沖縄でしか見たことなかった でっかい カライワシや オアカムロ、イシガキフグなど 南方の暖かい海に生息する魚がとれた。原因は温暖化による海水温の上昇で暖流の海で生息していた魚が北上したため。
日本近海の海面水温を見ると 100年当たりの上昇率は 平均で1.24℃ 変化。東京湾付近でも1.01℃ 上昇している。魚は変温動物でちょっとでも変わると 住む所を変わってしまったり とれる時期が変わってしまう。
さらに海底には 熱帯の海のように サンゴが一面に広がっていた。きれいだといって喜んではいけない。かつて館山の海は海藻がなびく豊かな海だった。
茨城県つくば 国立環境研究所 気候変動適応センター 研究員 熊谷直喜さん
海藻を食べる 暖かい海に多く生息するブダイやアイゴが、海水温の上昇に伴い 急速に増えているという。海藻が食べ尽くされてしまうと これまで海藻を餌場や住みかにしていた魚は 離れてしまう。そこにサンゴが定着し サンゴを住みかとする熱帯系の魚が 集まってくるのだ。
「1度の水温上昇でも 陸で言う10度位の変化。一度サンゴがたくさんいる状態になってしまった生態系を 元に戻すのは難しい」
北海道北見市 ホッケに替わり フグが獲れるが知名度不足
オホーツク海に面する 北海道北見市の常世港。漁師歴60年の船橋恵一さん の漁に同行させてもらうと、水揚げされたのは マフグ、西日本に多く生息しているのだが 海水温の上昇に伴い北上していた。
(さかなクン)トラフグに次ぐ高級魚です。
フグの漁獲量は西日本が上位を占めていたが 近年は北海道が全国1位になっている。2010年19位(84t)⇒2121年 1位(1990t)。一方 かつて多く取れたホッケは 今では ほとんど見られない。
高級魚でもあるフグ、漁獲量が増えたことで喜んでいるのかと思いきや…。
(木村)帰しちゃった。
フグは死んでしまうと全身に血が回り 臭みが出てしまう。そのため水揚げしたら すぐに鮮度を保つため活締めをする必要があるが 量が多すぎて船の上で さばききれないのだった。
さらに地元では せっかく取れてもフグが売れない。
日本料理店主 松宮哲朗さん 「皮が毒なので ヒレも取り除いていく」
マフグの場合筋肉と白子以外に毒があり 適切に処理しないと食中毒を起こす危険がある。フグの処理や調理は免許を持つ人に限られているて 北見ではふぐを扱う店が2軒だけで 消費が広がらないのだ。
お客も「北海道でふぐが食べれると思わなかった」「北海道の近くの海でふぐが捕れるのをはじめて知った」という人が結構多いという。
映像に出てきた北見の漁師さん フグの消費をなんとか拡大できないかと模索をしていて、漁師みずからフグの処理をする免許を取得して、自分たちで処理したものをパックに詰めて 北海道内の料理店に売り込んでいるそうです。
(所)どんどん広まって フグの消費量が増えるといいですね。
黒潮大蛇行もあって 取れる魚が大きく変わった
さかなクン 海の異変は どのくらい深刻なんですか?
(さかなクン)例えば カンパチっていうお魚 館山では秋にとれたが 年中見られるようになった。
北海道では ホッケがだんだん取れなくなって マフグが あのように いっぱい取れるようになった。
ご実家は 福岡で鮮魚を提供するお店という AKB48の元メンバー 大家志津香さん。海の異変って感じることってありますか?
(大家)両親は生け簀料理店営んで、兄は潜水士、弟は水産高校の先生です。実家がブランドイカの一本槍っていうケンサキイカを出してる。そのイカが とれなくなっている。ガソリンも高騰してるから 漁に出ても赤字だから もう漁に行かないというふうになってしまっていて。
(田中律子)私が館山に潜ったのは10年ぐらい前なんですけど、その当時にすでにサンゴ礁が結構あって。熱帯魚が越冬していた。
東京湾の東扇島で、川崎市 環境総合研究所 地域環境公害担当 福永顕規さんに話を聞いた。
毎年調査を行い 去年初めて確認された魚がいる。セグロチョウチョウウオ、カスミフグ 九州や沖縄の温かいところに生息している魚だが、黒潮大蛇行によって東京湾の近くまで流されてきた。
「黒潮大蛇行」とは 暖流の黒潮が大きく蛇行すること。それが異常に長く続いて 取れる魚が激変しているそうです。岩手県ではサケの漁獲量が この10年で 1/46に減少。一方でシイラが10倍に急増。宮城ではサンマが1/10に減少。代わりにタチウオが500倍に急増している。
(木村)通ってる お魚屋さんがあるんだけど サンマのお値段がどんどん高くなっていく。
(所)タチウオもね小骨があるから食べづらいけど、揚げちゃうと相当うまいんだよね。オリーブオイルでぎゃーってやると 本当においしいから。
雑種のフグが現れ どこに毒があるか分からず 一匹一匹DNA鑑定
人の命に関わる正体不明の魚が現れた。
フグの生態を研究する 山口下関市 国立研究開発法人 水産大学校 髙橋洋教授 を訪ねた。
「それは雑種のフグで 日本近海のショウサイフグと 日本海のゴマフグの間に生まれた。一見 見分けがつかないが しりびれに違いがある。ショウサイフグは淡く黄みがかった白。ゴマフグは鮮やかな黄色。雑種は白と黄色がまざった色になっている」
(所)本当だ 半分なんだ。
(さかなクン)ハーフになってますね。
「温暖化で どんどんゴマフグの繁殖場所が北に拡がり 津軽海峡を越えて 太平洋に出てきた。もともと太平洋側にいた ショウサイフグ と繁殖場所が重なり、雑種がたくさん生まれた」
2013年以降 茨城・福島・岩手の沖合で確認され 近年 宮城県沖では 水揚げされるフグの1割ほど 雑種が交ざっているという。
フグは 種類によって 皮や筋肉など毒を含んだ部分が異なる。雑種の場合毒を含んだ部分が親と違うことがあり どこが毒なのかはっきり分からないため 厚生労働省は種類の不明なフグは確実に排除すること と定めている。
さらにやっかいなことに 戻し交雑といって 雑種がさらに子どもを残している。さらに判別が難しい。
しりびれを見ても もとのゴマフグと ほとんど同じ色合い。正確に判別するには コロナ禍で注目されたPCR検査で DNA鑑定をしなければならない。魚市場や保健所で検査を検討する自治体が増えている。
(大家)一匹一匹やってられないですよね。
海水温の上昇でオスになる ギンイソイワシなど多種
さかなクンと同じ大学で教えている 東京海洋大学 海洋生物資源学科 山本洋嗣准教授
山本さんら研究チームは 海水温による性別の変化について10年前から調査を行ってきた。
館山沿岸にいる ギンイソイワシは体長15cmほどの海水魚で、大きな魚のエサになって生態系を支えている。繁殖期の海水温が平年並みの場合 生まれたオスとメスの比率は ほぼ同じになる。海水温が高ければ オスが8割近くを占める事態に。このギンイソイワシ ふ化した稚魚は 異常な高水温を経験するとストレスが原因で 本来メスになるはずが 性転換してオスになってしまう。このままオスが増えると 子孫が減り絶滅の危機に。それにより生態系に大きな影響を及ぼすという。
(さかなクン)性別が変わってしまう研究は 比較的近年行われている。今 研究によって 確認されている魚は世界で 60種以上。その中には ヒラメやスズキも含まれている。
(所)あれは 検査しないと 食べられないわけじゃないですか。っていうことは 取って肥料にすれば。
(さかなクン)毒はテトロドトキシンで 肥料にできない。
ちなみに 厚生労働省によりますと この雑種のフグについては 取れたときだったり魚市場などで流通する過程で 何度もチェックするそうです。今のところ 雑種を食べたことによる食中毒などは確認されていない。
(大家)実家のあたりで ガンガゼという ウニのラスボスみたいな。すごく増えている。とげの長い、毒もありますし 中身もすごく少ないし 苦みもあって 食用に向かない。
(さかなクン)実は ウニは海藻をいっぱい食べる。海藻が減ってしまうことによって アカウニとか バフンウニが減っちゃう。ガンガゼはどちらかというと雑食性で 何でも食べるたくましいウニちゃんなんですね。生き物の死骸とかも食べて数を増やしてしまう。
(田中)さかなクンも知ってると思うけど。今年 フロリダで海水温が38度。サンゴが死んで 魚たちもそこにいられず みんないなくなって 海が死んじゃう。
海藻のアマモを育て 陸も改良
館山市で海の環境保全活動をする NPO法人 たてやま・海辺の鑑定団 理事長竹内聖一さんをさかなクンが訪ねた。ここでは アマモを育成している。アマモは海藻で沿岸部の浅瀬に生息し 温暖化の原因でもある二酸化炭素を吸収し 酸素を放出するため 環境に重要な役割を果たしている。アマモは魚の住みかとしても重要だが、近年は全国的に減っている。6年前から地域住民と一緒に アマモを海に移植する活動を行っている。
(さかなクン)沖ノ島という館山の島で 竹内さんは いたる所に竹の炭や もみ殻をまいて 土壌改良に取り組んでいる。島に降り注いだ雨が この土を通るので 栄養豊富なミネラルを含み海へと流れる。アマモが育ち魚が戻ってくるという。効果をより高めるため、コンクリートで覆われていた場所も 細かく砕き 隙間を作ることで 水を浸透させることも行っている。
(田中)コンクリートで覆っちゃいけないんだよね。
二酸化炭素だけを吸収する装置考える若者
誰でも簡単に温暖化対策できる装置を 開発したという発明家 村木風海さん。
二酸化炭素の掃除機みたいなマシン、その名も「ひやっしー」
装置の中には二酸化炭素だけを吸収する 液体が入っていて 液体に空気を通過させる仕組みで 二酸化炭素の吸収量も一目で確認できる。この装置 企業や個人向けにレンタルしている
村木さんは高校時代にこのアイデアを思いつき、東京大学入学後すぐに事業化に乗り出した。今 大手化学メーカーなどと協力して ロケットや自動車の燃料として期待されるエタノールを 集めた二酸化炭素から作り出す研究を行っている。
(所)海草を増やそうっていう活動とかすばらしいじゃないですか。コンクリを壊しだすっていうね。
(さかなクン)富山の漁師さん たくさんとれるブリを守るために 植林している。「木一本ブリ千本」といって、木が一本でブリ 千本育ちますよと すぎょい お言葉ですね。
(大家)陸と海繋がっている と考える人が少ないなって すごく感じていて。
(田中)私 17年前から沖縄で 海にサンゴを植えてるんですけど。50年後 100年後子ども達が海で遊べる 世界残していかなければいけない。
(さかなクン)出会った魚どれも 「一魚一会」みんな おいしく 頂きましょう。
▽まとめ&感想
今年の夏は猛烈に暑く、死んだように過ごしていました。海も異変ばかりですね。捕れる魚が変わって。
雑種のフグどこに毒があるか分からず 山の中では食べることもありませんが大変です。陸側を整備し 魚が増えるなんて驚きます☆二酸化炭素だけ吸収する装置 本当に 広く使われれば 夢のような話です。