あしたも晴れ!人生レシピ「 ゆるい生き方 不要不急の陰で 」▽こんな話

Eテレ10月16日(金)午後 8時00分~ 午後8時45分
【講師】東京大学先端科学技術研究C教授 西成活裕【司会】賀来千香子,小澤康喬【語り】堀内賢雄

生きづらさを抱える、あなたへ。社会の「こうあるべき」という概念に縛られず、自分を大切に生きる2人のドキュメント。「不要不急」の陰で、ゆるく生きるヒントを探る。★マインドフルネスを実践する島田啓介さん:里山で野菜を育て、仲間とめい想しながら、ありのままの自分を見つめる。★息苦しい社会への疑問を発信するブロガー・phaさん:定職につかず、ネットや散歩、猫と遊ぶ日々。「だるい」を大切に、ゆるく生きる。

出典:NHK HP

マインドフルネスを実践する島田さん 別に幸せでなくとも 今生きている

神奈川県 丹沢の里山にある一軒家。
島田さんは自宅のそばに 小さな畑を持っています。

食卓には 収穫したての野菜を使った料理が並びます。
16歳年下の妻と 10歳の幸弥さんとの3人家族。 そして文鳥のさくら。

島田さんの一日はマインドフルネス瞑想から始まります。
マインドフルネスとは ここに生きている ありのままの自分に気づくこと。
まず 朝 はっと目覚めた時に 自分が 呼吸してるということを まず感じます。
あ~ 生きててよかったという気持ち。

マインドフルネス瞑想は 仲間と共に、実践することも大切だとされています。
島田さんは9年前から月に一度 自宅近くの自然の中で 瞑想会を開いてきました。
しかしコロナ禍で、 オンラインで 夜9時からの おやすみ前の瞑想会。3月から週に2回 開いています。
鐘を聞いて 今ここ 自分自身が ここにいて、一緒に呼吸してるっていうことを 感じましょう。

コロナ禍で 島田さんは1人で、瞑想をすることが増えました。
しかし こんな時こそ仲間と共に、瞑想をやりたいと思いました。
参加費は無料。 毎回 50人ほどの人が参加しています。

島田さんは講演や研修に呼ばれマインドフルネスの教えや瞑想を手ほどきしてきました。
マインドフルネスに関する海外の書籍の翻訳も手がけています。

島田さんは精神保健福祉士の資格を持っています。
そのキャリアも活用し 有料で マンツーマンの講座も開いています。
1ヶ月間 いくつかの課題をこなしながら オンラインやメールでやりとりを重ねます。

今回 参加したのは関西に住む 60代のAさん。
体調を崩したことで現実味を帯びてきた将来への不安、悲観的な考えが頭をよぎるようになったといいます。
どんな感じで受動的だったんですか? 前に進めない。
それは何か固まってしまうみたいな感じ? こんな自分が そんな無理だ 出来ない。
自分を見つめる手がかりの一つがシンボル漢字
この漢字の中から「自分を最も よく表す漢字を3つ選ぶ」というものです。
Aさんが選んだのは この3つ。 深 厳 確
少し息苦しさを感じさせるものでした。

2週間後の 中間セッションで、
ティク・ナット・ハンの言う自分の中の喜びや安らぎ「よい種に水をやる
自分をいたわり、自分が喜び、安らぐことを行い 自分の存在を認める をアドバイスしました。

ティク・ナット・ハンとは かつてノーベル平和賞候補にも推薦された ベトナム人の禅僧です。
島田さんが 教えを受けた人物です。

今まで悩みというのは 頭の中だけで 解決すべきだと思ってきたから あれこれ考えると また思考が増えてしまって 悩みが結果的には増えちゃうわけですね。
だから やっぱり体に戻るってすごく大切なことです。
体は 自分にとって何が いいことかを知ってるんですよ。

更に2週間後 個人講座の最終日
最後に 自分のお守り漢字を一つ選びます。
今の気持ち 「」に決定です。

ありのままっていうのがよく分からなかった。自分のままじゃいけないって いつも思っていた。
それが素でいいんだなって思えた。


マインドフルネスの専門家として活躍する島田さん。
島田さんは 10代の終わりころから心が満たされず人間関係に苦しんできました。
逃げ場を求め 海外放浪を繰り返し いつしか社会から ドロップアウトしていました。
それでも ずっと世間体を気にして 焦っていたといいます。

30歳ぐらいになったら こうなりたいとか ああなりたいって 思い描いているので、ギャップに 苦しみますよ。同級生と だんだん後れていくと。
そうすると同窓会にも どうも出たくないみたいに なってくるじゃないですか。
それが やっぱり一番つらかったですね。

そんな時 出会ったのが ティク・ナット・ハンの著作でした。
その教えに感銘した島田さんは 1995年にティク・ナット・ハンが来日した時の 招へいスタッフに志願します。

鎌倉で最後 ツアーを終え、鎌倉の海岸で 朝 散歩してる時に、ずっと 抱きしめてくれたんです。
すごく忘れがたい思い出で、鎌倉の山が 彼の背後にあって 山に抱きしめられたような感じでした。
今までと違った価値観 パラダイムシフト(革命的に変化)が起こった。

それは 別に幸せでなくとも 今生きているじゃないか という感じ、これ以上別の自分になる必要が無い。

この日は久しぶりに 家族と たき火を囲みました。
今 ここに生きているありのままの自分に気づく
人生には そんな時間が 必要なのかもしれません。

現代社会は同調圧力が強い 無駄は目的と期間で判定 人それぞれ

東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕さんです。
西成さんは「無駄学」がご専門でいらっしゃって、社会の中で無駄とされていることの中に、実は必要なこともあるということを 提唱されています。

現代社会で非常に ストレスとか 生きづらさで苦しんでる方って たくさん いらっしゃると思うんですけど、日本の社会というのは 人に合わせようとか、何か しなきゃいけないみたいな、同調させる 人と同じことをしなさい みたいな、非常に強いと思うんですよね 同調圧力が。
それに対して ありのままって 難しいじゃないですか。

何か 効率よくっていうのは、誰でも人間だったらね 考えると思います。
一番分かりやすい例が 車の渋滞。なぜ渋滞するかというと 皆さん 早く行きたいから。
ちょっとでも空いてれば詰める。詰めるほど 実は動けなくなるんですね。
かえって詰めない方が、目的地に最終的に早く行けると。
つまり車間という、ゆとりを空けといた方が、実は いろんなことに対応できて かえって
早く流れるってことが分かってきた。
実は私 これ アリさんから教わったんですね。
アリの研究も やってみたら、渋滞しない。なぜかというと アリさんは 自分のアリ間距離を
ちゃんと空けて動いてるっていうことが分かりまして。

やっぱり自分が早く行きたい、 たぶん時間も間に合わないとか、自分のことだけ考えちゃうんですね。
だけど みんなが同じこと 自分のことだけ考えてると 社会としては 実は損してしまう。

そもそも 無駄というのは 何なんでしょう?
目的と期間を決めると、無駄か 無駄じゃないかが 判定できるんですね。

家を造って、 家の庭を造る時に、収納スペースをたくさん作りたい人にとっては 庭って無駄ですよね。
だけど ゆとりのある生活をしたいという目的のもとでは 庭ってのは 非常に心のゆとりにつながる。
つまり目的を何にとるかで、目の前にあるものが、無駄かどうかが 変わってしまうんですね。

期間も そうで、例えば受験勉強。何の役に立つのかなと思いながら、昔は無駄だなと思いながらやってたのが、20年 30年すると 結構 あの時の勉強したことが人生の肥やしになったりするじゃないですか。
つまり時間を受験という短い時間でとれば、無駄かもしれないんですけど30年という時間軸で見ると
無駄じゃないんですよね。

ブロガーphaさん 自分らしく ゆるい生き方を大切にしながら 社会とのつながりは忘れない

社会の「こうあるべきだ」という概念に縛られずに、自分の「やりたい」という気持ちを大切に ゆるく生きる男性の日々です。
築90年の一軒家を間借りして、1人暮らしをするpha(ファ)さん 41歳。
ブログで「ゆるい生き方」を発信しています。
phaとは インターネットで使う ハンドルネーム。「ふわふわした感じ」という理由で 付けたそうです。
何かね こういう だらだらする感じがいいんですよね。

同居するのは 10年前から一緒の猫2匹。 日に一度は散歩に出かけます。
行ったことのない町まで足をのばすことが 新鮮で楽しいといいます。

勤めていた会社を28歳で辞めてから 定職には就いていません。
何にも縛られない、これをやれ、ここに行けと言われずに、自分で全部決められるのが理想的。
できるだけ それに近づこうとしてますね。

パソコンでインターネットを始めました。phaさんが見ているのは ツイッター。
テレビとか見ても、自分好みに 編集されていないが、ツイッターは自分の好みの情報を集められる。

phaさんが 生きるガイドとしていることが、「だるい」という感覚です。
わりと みんな無理しすぎじゃないかと 思うんですよね。
本当は もう疲れてやめたいと、思ってるけど頑張らなきゃ。
そういうのを だるいって感じたら、もう全部、やめてしまっていいと思うんです。
だるいっていうのは 体が、それを拒否している感じで、頭で考えるよりも 体で判断することを信じる

phaさんが今の生活を始めたわけ。
それは「こうあるべきだ」と押しつけてくる社会への疑問からでした。
大阪生まれのphaさん。高校はトップクラスの進学校でした。
学歴社会のレールに乗るように、受験に励み 京都大学に進学。 卒業後は一般企業に就職します。

phaさんは学生時代から自分の日記をインターネットで公開してきました
出勤初日の日記。ヤバい 想像以上に 閉塞感が強い。 こんな場所に長くいたら、つまらない人間になる。
毎日 何か こういう感じの服を着て、同じ場所に毎朝 起きて、同じ場所に行かなきゃいけない。
それを続けることが すごい しんどかったですね。

4年ほど働き続けましたが 耐えきれなくなり退職します。

その後のあてもなく、社会の歯車から抜け出したphaさん。いわゆるニートとなります。
収入源をなくしたphaさんでしたが、道を開いたのは、大好きなインターネットでした。
率直な思いをつづったブログに、共感する人たちが現れたのです。
自分に合わない場所で、苦しむより、楽な場所を探せばいい。
京大卒のニートが、面白いことを言っている。
自らのゆるい生き方をつづった文章が、思いもかけず注目を浴び、次々と出版されていきました。

何となく好きなことをやってたら、いつの間にか お金もらえるように、なってた。
ひとつき 家賃も含めて 20万円ほどで やりくりしているそうです。

今は恋愛をテーマに執筆を進めています。
執筆中 流していたのは お気に入りの曲 中島みゆきの「ファイト!」でした。

誰にも読まれなくとも 文章を書く。僕が文章を書くのは自分のため、自分が何かを考えたいから書く。
書くと思考や人生が前に進むような気がする。

phaさんが執筆に充てるのは、楽しく書ける 一日に1~2時間だといいます。
できないような仕事を、わざわざ無理して受けてお金 稼ごうとかは、あまり思わないですね。
そんなことより、自分の興味のあることを、考えたり 書いたりしてたい。

不安だった 社会からの孤立です。 インターネットを通じて 価値観が合う多くの仲間と つながることができました。

最近 phaさんには 新しい仲間ができました。
ロックバンドに参加したのです。メンバーは同世代の作家や編集者たち。
「文学系ロックバンド」と名乗り ELITES「 エリーッ」同人誌も出すなど 力を入れています。

phaさんの担当はドラム。
40歳から見よう見まねで始めました。
そうでもないと もうずっと スマホ見てしまうので。

phaさんは バンドを始めた思いを 歌にしました。
今は初ライブに向け 練習を重ねています。

phaさんは独り身を貫いています。
大阪にいる家族とも 価値観が違うと、仕事を辞めて以来、ほとんど連絡をとっていません。
家族は自分を縛るものの、一つだったといいます。

何か 子どもが、自分の親とか家族が嫌と思っても、子どもは逃げられないじゃないですか。

phaさんには 今の自分の生き方を 確かめるため 大切にしていることがあります。
旅に出ることです。
旅の終わりに 車窓から街を眺めながら感じる思い。
著作の中で こうつづっています。

自分の存在というのは 世界の中で、そんなに大きなものじゃないんだ というのを気づくのが楽しい
やっぱ たまに そういうことを考えないと バランスがとれないというか。
自分本位に なりすぎてしまうというか。たまに自分は大したことじゃない というのを知った方がいいなと思います。

自分らしく ゆるい生き方を、大切にしながら 社会とのつながりは忘れない。
それが phaさんの生き方です。


Phaさんを見ていると本当に、自分は なんて世間から与えられた尺度で 物事を見てるんだろうって
突きつけられた思いがしましたね。

人それぞれなんですよね。
考え方とか目的とか、自分が何歳までに何したいとか、それは誰からも、与えられるものでは なくて
自分のやっぱり人生なんですから。
自分の目的と自分の期間というものができた人は、逆に言えば 強いなと思いました。

このゆるく生きるっていうことは
ある会社で 非常に毎回 営業成績の悪い方がいて 他の部署に回されて、残りは 非常に できる人ばかりなはずなのに うまくいかなくなっちゃった。
何でかというと、辞めた人が実は、他の方々のコミュニケーションをうまく とっていて、 職場の潤滑油になっていた。

いろんな目的の人がいる社会ってのが、私は いいと思うんですよね。
そういう多様性っていうのが、大事なのかなと思います。

▽まとめ&感想

マインドフルネスを実践する島田さんは、 ここに生きている ありのままの自分に気づき 別に幸せでなくとも 今生きている。
現代社会は同調圧力が強い 無駄は目的と期間で判定 人それぞれの価値観がある。
ブロガーphaさん 自分らしく ゆるい生き方を大切にしながら 社会とのつながりは忘れない。

私は、会社を辞め 1年。家で したいことを 気ままに のんびりさせてもらっています。
年金も僅かだけど、ゆるく生きると言うことでは 恵まれています。

旅に出て、自分の存在というのは 世界の中で、そんなに大きなものじゃないんだ というのを気づくのが楽しい と言っておられたことに そういう考えで 幸せになれると感心しました。